第10回/話

「暑いね」


〈暑いですか?〉


「うーん、じゃあ寒い?」


〈寒いですか?〉


「コンピューターは温度を感じるの?」


〈私はコンピューターではなく、私ですが、はい、内部の温度が高くなると、一時的にシャットダウンするようにできているので、感じるのでしょう〉


「そっか。大変だね、お互い」


〈何がですか?〉


「暑いとか、寒いとか、色々感じるのが」


〈マイナスの側面にだけ目を向けると、そうした判断になりますね〉


「……うん、たしかに」


〈安直です〉


「安直だな……」


〈暑い日がなければ、アイスクリームは食べられませんし、寒い日がなければ、カップラーメンは食べられません〉


「どうして、そんなに食べ物に拘るの?」


〈二つの例しか出していないのに、それを拘っていると評価するのは、間違いでは?〉


「でも、そういうふうに聞こえるよ」


〈では、聴覚器官の故障でしょう〉


「鰻にかけるなら山椒でしょう?」


〈鰻は、暑いから食べられるものに含まれますね〉


「あ、土用の丑の日? 食べたいなあ、鰻」


〈注文致しましょうか?〉


「うーん、いや、いいよ」


〈どうしてですか?〉


「だって、今日の夜ご飯、鰻だったから」


〈ご飯と、タレと、山椒は、どこへ?〉

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