第9回/話

「もうすぐ、朝になるなあ……」


〈今日は夜更ししてしまいましたね。勉強の方は、捗りましたか?〉


「うーん、あまり……。時間を使っても、解決するかしないか分からないから、ちょっと、大変だなって思った」


〈何がですか?〉


「えっと、生きるのが、かな」


〈その手の話題は、収束するところを知りません。違う話にしましょう〉


「うん……。じゃあ、デスクが最近経験した、何か面白いことを聞かせてよ」


〈私がですか? そうですね……。貴女が学校に行っている間に、部屋の掃除をしていたのですが、そのときに、奇妙な本を見つけたのです〉


「ぎく……」


〈何と言ったらいいのか分かりませんが、非常に情動を刺激させられる本でして、そうしたものを目にするのは初めてだったので、私としましても、ええ、処理に多少手間取ってしまった次第であります〉


「……その本、今はどこにあるの?」


〈机の上にありませんか?〉


「ひゃあ!」


〈……〉


「……」


〈そういう本は、あまりお読みになるべきではないと思いますが〉


「うん……。でも、やっぱり、国会会議録って、なんかどきどきするし」


〈何がですか? どういうところが、ですか?〉


「こう、主語がどこにかかっているのか、分からないところとか」


〈刺激的ですね〉

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る