第3回/話

〈なぜ、人は生きているのだと思いますか?〉


「……急にどうしたの? 何かあった?」


〈いいえ、何も〉


「それね、あるって言っているのと同じだよ」


〈あるって言っているのではなく、あったって言っているのです〉


「時制の一致というやつ?」


〈なぜ、疑問形なのですか?〉


「……分からない」


〈なぜ、人は生きているのだと思いますか?〉


「今日はやけに哲学的だね。それが、貴方が今話したいこと?」


〈ええ、ミス・シロップ〉


「うーん、どうしてだろう……。やっぱり、生きたいから、かな」


〈貴女は、なぜ生きているのですか?〉


「あんまり、そういうこと考えたことがないから、分からない」


〈では、今考えて下さい〉


「考えているよ。纏めるまで、ちょっと待って」


〈身体がないので舞えません〉


「舞うじゃないよ」


〈では、マウマウですか?〉


「マウマウって、何?」


〈幼児語らしいですね。最近の研究によると、これは鰊の蒲焼きを意味する言葉のようです〉


「あ、鰊の蒲焼き、食べたいな」


〈用意致しましょうか?〉


「できないんじゃなかったっけ?」


〈今日はできます〉


「じゃあ、お願い」


〈なるほど。こういうことがあるから、生きているのですね〉


「え? こういうことって、どういうこと?」

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