第3話

 気が付くと、僕は街路樹のある道に来ていた。

 もうすぐ秋なのだろうか、ちらほらと赤い葉を見せる木がある。

 僕は歩いていった。すると街路樹の下に人影を見つける。少女だ。


「僕は何をすればいいですか」

「ああ、来たのね。じゃあわたしと一緒に行きましょう」


 少女がそういうと、足元が浮く感覚がして、僕たちは浮かび上がっていた。少しぎこちないながらも、僕は必死に宙に浮こうと足を動かす。

 少女が街路樹の上で止まった。そしてその葉をぷつんと摘んで、筆のようなもので何かを塗っていく。


「秋を呼ぶお仕事よ」


 塗られた葉は綺麗な紅葉になっている。少女はどんどん葉を秋色に染めていく。染められた葉は、元の場所に戻すとくっついた。

 僕も見よう見まねでやってみた。筆がない。

 とにかく指でその真似をすると、指が触れた部分だけ緑の葉が秋色に染まった。


 そのあとは僕と少女で町の街路樹を染めていた。

 全て染め終わると、僕たちは風のように町を飛び回り紅葉を揺らす。

 町往く人々は僕たちが飛んでいることに気付かない。


 ふと、香りがした。

 風に乗ってやってくる、秋の匂い。季節の移り変わる特有の香り。懐かしい香り。


「秋を呼ぶお仕事よ」


 どこか高いところに座って、少女が言った。


「あなたは風になって、町を駆け抜けるの。誰も気づかないわね。それでも風はふくのよ。あなたに秋を伝えるために」



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