第3話 その転生先、3歳児
「おお、やった。助かったぞ」
ヒゲ面のむさい男が、俺を抱きしめて喜んでいる。
ヒゲがチクチクする。
異世界初の身体接触が、こんなむさい男なんて。
「まさかあんな薬で助かるなんて……」
隣の女性が驚いている。
俺はどうやら、このひげ面のむさい男の子供として生まれ変わったらしい。
しかも、こいつは、効くかどうかも分からない薬を俺に飲ませたようだ。
どうやらヤバい親の子供として転生したようだ。
悪い夢なら早く醒めてくれ。
俺には宝くじを換金するという大事な仕事があるのだ。
夢から醒めることのできなかった俺は、転生して数日、簡単な調査を終えた。
俺が転生した村は、ミスリル鉱山の採掘で持っている、タルカ村。
ミスリル鉱山と言っても、産出量豊富ないい山ではないらしく、一発当ててやろうという山師が結構集まっている貧乏村らしい。
貧乏と言っても、ミスリルという貴重な鉱石を算出するだけあって、結構賑わってはいるようだ。
ただ残念ながら、異世界における俺の親父もギャンブル好き。
俺の薬も、ギャンブルで得たとのこと。
しかも俺がその薬で元気になったものだから、ギャンブルに余計にのめり込む環境が整って、困ったことになっているとの、新しい母親の弁。
2代続けてカス親を持つとは思わなかった。
家族は、鉱夫をしているギャンブル中毒の親父と、農業の手伝いをしている母親と、俺より2歳離れている兄、2歳離れている妹の5人家族だ。
ここでの俺の名前はラルフ。
姓はない。
カス…もとい、父親はマックス、母親はエメリー、兄はブルーノ、妹はキャリー。
元々農業をしていた家系らしいが、ミスリルで一山上げようとした友達に誘われて、俺の新しい家族は、この村に移住したようだ。
親父の稼ぎは、その日のミスリル採掘量に応じるので、あまり多くはないし、決まった金額ではない。
母親の稼ぎは少ないものの、農業の手伝いで余った食材を貰ってくることでなんとか生活しているようだ。
この村に共働き家庭は多く、その子供は近くの教会に預けられる。
教会は、当然エルメス教。
ほかの村ではどういう神が祭られているのか知りたいところだが、追々調べていけばいいだろう。
とりあえず、この世界では3歳児として生まれ変わった。
まさか3歳から布教をやれというつもりはないのだろう。
大きくなって、布教ができるようになるまでの準備期間はあるのだろう。
貧乏家庭だが、布教するまで時間があるので、それまで体を鍛えて、お金を稼ぎ、少しでも安全に生活をしよう。
しかし、何よりも頭の痛いことは、親父の稼ぎのほとんどが、酒とギャンブルに消えることだ。
多くても少なくても、日払いで貰う給料は、賭場にとっては、丁度いい金づるだ。
幸い、勝っても負けても、母親の給料には手を出さない。
それだけはほっとしている。
母親の給料は、季節ごとに出る。
それを親父の目に触れないところに隠して、ちまちまと使っている。
親父の給料があれば、もう少し美味しいものが食べられて、もう少しいい服を着て、もう少しいい家に住めるのだが。
俺たち子どもは、朝ご飯を食べると、教会に連れて行かれ、教会の仕事を手伝ったり、遊んだりして毎日を過ごす。
この村では、共働き家庭が多いので、そういう家庭では、教会を託児所代わりにしているのだ。
3歳児に転生した俺だが、同じ年代の子供と遊んでも楽しくはない。
教会の仕事を手伝ったり、勉強をした方がまだ楽しい。
そういう事で、同世代の子供と遊ぶより、自然と教会のシスターと一緒に働く機会が多くなり、子供よりもシスター達と仲良くなっていった。
そもそも精神年齢は、シスターよりも年上なのだ。
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