獏と神
森の奥へ入っていくと、ただの森から急変し、湿地へ入った。そこらじゅうに蓮の花が咲いており、道だけが綺麗に整備されている。
「綺麗…」
「ここは、阿弥陀様が創った極楽浄土だからな。」
「えっ?極楽浄土ってもしかして…」
「俗に言う天国だ。」
天国って本当にあったんだ…
夢の中だし、偽物の可能性もあるけど、本物かと思うくらい綺麗な場所だ。
少し歩くと、大きな社が目に入る。
「ここで、釈迦様と会えるの?」
「あぁ、屏風の裏からだがな。くれぐれも失礼のないようにしろよ。」
「うん。」
社の大きな戸を押して入ると、正面に釈迦様の絵が描かれた金屏風が。
多分、この奥にいるんだ。
「本日は大社にお呼び頂き、この上なく嬉しゅうございます。釈迦様。」
急に堅苦しい挨拶を始めた嘉舎。まぁ、神が相手なら当たり前なのか。
「は、はじめまして。私は三浦 美伽と申します。」
「うん。はじめまして。八咫烏通して見てたよ。君の想像力本当凄かったね。てか嘉舎堅っwwwいつも通りでいいって。」
え、釈迦様ってこんな感じなの?
「そだよ。300年前くらいにイメチェンして以来ね。」
心読めるんだ…凄。
「そうそう、確か獏について聞きに来たんだよね。」
「そうなんです。出来れば、木の中の世界や大きな蛇についても。」
「ちょっと話は長くなるんだけどね。順をおって話していくよ。
僕を含めた、日本の神々は、太古より、悪魔と戦っているんだ。そしてそれは、今も続いている。昔は人間のやる戦争と同じようにやってた。神は人の善心や、信仰しを、悪魔は悪心を糧に動く。だから人間の景気に、その戦争の優劣は大きく影響される。でもね、人間が思ったより繁栄しちゃって地上に、人間に見つからずに戦争できる場所が無くなっちゃったんだよ。」
「神は、人に見つかってはいけないんですか?」
「神話の時代は、一緒にいたんだけど、人間は、神を利用しようとするからね。だから世界を分けたんだ。だから、今、現時点では直接的な戦争はできない。だから、両者共に勢力を大きくすることにしたんだ。神は、信仰を広げる事で、そして悪魔は、人間に『悪夢』を見せることでね。」
悪夢…つまり、木の中で見た場所は、あの男の子の悪夢…?
「その通りさ。悪夢によって生まれる負の感情を吸って、勢力を大きくしようとしたんだ。 そして、それを防ぐために生まれたのが、『獏』さ。」
つまり、獏は、悪魔が人に悪夢を見せて強くなることを防ぐために、夢の中で悪魔を倒す、ということか。
「まぁ、正確には悪魔の手下だけどね。」
神と悪魔での戦争か…。でも、人間は誰も気づかない、ということはそこで均衡は保たれているってことか。
「これまではね。でも、最近は信仰の衰退や、人々への過重なストレスで、結構劣勢でね、そこで君を呼んだんだ。君の想像の力は、悪夢を断つには十分すぎるくらい強い。だから、悪夢を祓うのを、手伝って欲しいんだ。」
あの時、実はすごく楽しかった。
一瞬、漫画の主人公になったみたいな高揚。
私の力で役に立てるなら、
「もちろん。やらせて下さい。」
「ありがとう。これからよろしく、美伽チャン♡」
「俺からも、よろしく頼む。」
これから、嘉舎と私の悪夢との戦いが始まった。
獏戦記 藁観 @simerikeno-rougoku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。獏戦記の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます