悪夢祓い

木の中には、なんの手応えもなく入れた。

入るとそこは真っ暗で、なのに、5、6歳くらいの男の子が泣いているのははっきり見えた。

そして、その後ろに、日本刀のようなものを持った木島さんと巨大な蛇が対面し、お互いに威嚇している。

怖い。でも、楽しい。


「木島さん?何してるんですか?」


こっちに気づく。


「なんでここに…待ってろって言っただろ。」


あれ、そうだっけ。

聞いてなかった。


「早く逃げろ。」


強い口調に、私も少しビビる。

すると、蛇が木島さんに噛み付いた。

彼は右へ飛び込み避け、持っている日本刀を、蛇に向けて、両手で思い切り振り下ろす。そして、見事に尾を切り落とした。


「ギャァァァァァ」


蛇は奇声を上げながらこちらへ逃げてくる。


「危ない!!」


木島さんが叫ぶ。

でも、大丈夫。

夢の中なら、私は強くなれる。

私は目を瞑り、想像する。

蛇を狩る、勇猛な鷲を。

巨大な爪を立て、その名の通り蛇の頭を鷲掴みにする。

爪を首に食い込ませ、引きちぎる。

目を開くと、そこには首と体が分かれた蛇と驚愕している木島さん。

でも、次の瞬間には木島さんは蛇の頭にいて、日本刀を頭に突き刺した。

すると、暗闇が晴れ、光が刺した。


「核を壊さないと再生されるだろ。にしても、助かった。お前も獏だったとはな。」


獏ってなんなんだろう…。


「私は正真正銘の人間です。獏なんて知りません。」


「獏じゃない…じゃあ、あの能力は?」


能力?想像のことだろうか。


「想像するんですよ。物語を。それだけです。」


木島さんは納得してないみたいだ。


「木島さんはこんなところで何してるんですか?」


「悪夢祓い、と言っても分からんだろうが。というか俺は木島なんて名前じゃない。俺の名前は嘉舎(かしゃ)だ。」


木島さんじゃない…?

そう考えるとこれまでの行動が少し恥ずかしくなってきた。


「あ、私は美伽っていいます。その、獏ってなんですか…?」


「人間に話して良いのか…とりあえず釈迦様の所まで着いてきて欲しい。」


「あ、はい。」


釈迦様ってあの神様の…?

疑問は色々残るけど、そこで聞けということだろう。

私は嘉舎の後ろをついて行く。この空間の端まで行くと、さっきいた森に出た。

そして、私と嘉舎さんは、森のもっと深い方へと進んで行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る