夢の外

今日の夢の舞台は牢獄。

無実で捕まった主人公が恋人と会うために脱獄する物語。

看守から逃げるスリル。

疾走する高揚感。

自由を手に入れようとする野心。

「タッタッタッ」

出口も目前、そして、戸を開く。

すると、そこに待って居たのは、

一面に広がる森と…袴を装った木島さん?!


「え、木島さん?」


私は夢の中でも木島さんの優しさに浸ろうとしてるのか。


「木島さん、どうしてここに?」


すると、


「あ?」


予想の真反対、いつもの優しさを1mmも感じないこの返しと表情に戸惑う。


「お前誰だよ。新人か?」


「え?」


まぁ、新人作家という意味では新人だけど、そういう意味ではないだろう。


「仕事サボんなよ。」


「なんで夢の中でまで仕事の話するんですか。夢に浸らせて下さいよ。」


木島さんが何やら驚いている。


「夢…お前、人間か?!」


「人間以外のなんだって言うんですか?」


「マジか…面倒臭いことになったな…」


こんなの事は初めてだ。

自分の夢なのにまるで事態を把握できない。


「かぁかぁ」


カラスの鳴き声だ。


「また悪夢かよ。おいお前、着いてこい。」


と言って走り出す。


「え、えぇ?」


分からない。けど、とりあえずついて行く。

現実では絶対に追いつけない木島さんのダッシュについて行く。

木々を避け、走っていくと、1本の枯れた木が。


「こりゃ末期だな。お前はここで待ってろ。」


そう言うと木島さんは気の中にスっと入っていく。

待ってろ、と言われたけどこれはついて行く以外の選択肢はない。

私も気の中に入る。

この勇気も、夢の中だけで持てるものなのだろう。


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