第14話

「して、ゴブリンは討伐したのか?」


「もちろんしたに決まっているではありませんか、勇者様ですぞ? 我々人間の味方ではありませんか!」


 そう話す貴族の会話を聞きながら俺はあの日の出来事を思い出す。

 懇願するゴブリンたちの前に、突如真っ赤な姿をした魔物が飛来し俺達に戦いを挑んできたのだ。

 その魔物の名前は魔王軍幹部重鋭のゼパストだった。

 ゼパストは俺達四人にたった一人で立ち向かい、ゴブリンたちを逃がそうとした。

 しかし、俺達も勇者だ。

 実力をつけた上でこの度に望んでいたため、ゼパストを追い詰めた。

 しかし、ゼパストは一人にも関わらずゴブリンを逃がすために戦い、俺やカリーナ、っそいてエリンを戦闘不能にまで追いやった。

 そして、最後にゼパストはアルと笑みを浮かべながらまるで楽しむように戦っていた。


「はい、その村は制圧しました」


「おぉ流石は勇者!」


「幸先良くスタートしたのだな!」


 貴族を楽しませる為にそう言ったが、実際はそうではない。

 アルがゼパストを見逃し、ゴブリンと共にこの場を去れと言ったのだ。

 ゴブリンとゼパストはその言葉を聞き逃げていった。

 俺たちが制圧したのは誰もいなくなってゴブリンの村だ。

 そこからだった、俺達パーティーがこの戦いに疑問を持つようになったのは……。


「して、村を制圧したあとはどうした? ゴブリンは皆殺しか?」


「待て待て、それだけの知能なら奴隷にした方がいいではないか?」


「ゴブリンの奴隷なんていやですわ。汚らしいしです。皆殺しで十分です」


 あぁ、やっぱり汚い。

 人間は汚い。

 こういう力を持った奴らだけが果たしてそうなのかは分からない。

 だが、俺は話をしながらそんな反応を示す貴族達にイライラしていた。

 ゴブリンも俺達と変わらない生命であるのに……。


「残念ながらゴブリンは逃げてしまいましたが、先を急ぐ必要があり我々は先を急ぎました」


「なるほど、確かにそんな所でいつまでも油を売るわけにもいかんな」


「それで次はどこに?」


 俺はそれから旅の思い出話を貴族の前で語った。

 食料が無い時は森で食べられそうな物を探して食べた事。

 深手を負った仲間を担いで旅をしたこと。

 しかし、魔物との交流については一切話をしなかった。

 理由は貴族達がその話を聞いて良い気がしないと思ったからだ。

 だから俺は魔物との交流の話を省き、これまでの話をした。


「ここで魔法使いエリンは毒を盛られて息絶えます」


「あぁ……なんと酷い……」


「きっとその人間が魔物に操られていたんだ」


「なんて卑怯な魔物たちだ!」


 また魔物のせい……エリンが死んだのは魔物のせいなんかではない。

 俺のパーティーに嫌われ者だったエリンが選ばれ、それを面白くないと思った同じ魔法使いに殺されたのだ。

 この人たちは本当に魔物が嫌いなようだ。

 こんな人達も納得させて俺と魔王は世界を征服しなくてはいけない。

 出来るのだろうか?

 俺は話をしながら若干不安になってきていた。

 すると国王がこんな事をい始めた。


「しかし、勇者殿のおかげでこれからは忙しくなる」


「は? 一体何がでしょうか?」


「もちろん……魔物狩りです」


「え……そ、それはどういう?」


「その名の通り、魔物どもを狩るお遊びです。狩った魔物は捕らえて奴隷にするもよし、殺すもよし、奴隷が増えれば国も豊になる。魔王の力もなくなっているので魔物も弱体化していますからなぁ」


 その話を聞いた瞬間、俺は国王を含めたその場の貴族達の顔が醜く思えた。

 なんて酷い遊びを考えるんだ。

 俺は怒鳴りたい衝動を抑えて陛下に尋ねる。


「お待ちください。魔物はこちらが攻撃をしなければ襲ってきません。そっとしておくのが一番では?」


「何を言っている? 魔王が倒れた今、魔物は奴隷にするか殺すべきだ。そして魔物が住んでいた土地を開拓し、人間の領土を広め、国を大きくするのだ!」


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る