第12話



「これからどうするの? 魔王を倒して国の英雄になった後は?」


 どうしよう、リアには魔王と俺が手を組んだ事を話すか?

 仲間も実際は生きているし、あまりリアに嘘を付き続けるのはなぁ……。

 それにリアこそ仲間に引き込めれば、この国を征服するのはかなり楽になる。

 この国第一姫であり、国民からの人気もある。

 それにこの子がどれだけいい子なのかは俺は良く知っている。

 

「そうですね……旅にでも出ようと思います」


「旅?」


「えぇ……」


 しかし、今ここで本当の事を言うのも心配だ。

 どこで誰が聞いて居るかも分からない。

 今は適当にまた旅に出て世界を見て回るとか言っておこう。


「この国には留まらないの?」


「えっと……うん、それにもう勇者は必要ないだろ?」


「……それじゃぁレイスの言った事は断るの?」


「え……」


 レイスの名前が出てきて俺は一瞬驚いた。

 なぜあの会話をリアが知っているんだ?

 あの部屋には俺とレイスだけだったはずだ。


「な、何の話し?」


 別な話しかもしれない。

 俺は取りあえず何の話しなのかをリアに尋ねた。


「お父様の話しよ、あの王じゃこの国は滅びるわ」


「……聞いてたのか?」


「いいえ、性格には私がレイスに提案したのよ」


「なるほど、元凶はリアだったのか」


 どうやらレイスとリアは今の王に不満を抱いているらしい。

 まぁ、この二人以外にも王国内に現国王に不満を持つ輩は多いだろう。

 しかし、俺が魔王を討伐したことで国王の支持率も多少は上がる。

 そしてこの国には今、魔王を討伐した英雄が帰還している。

 当然俺も王国の未来を左右する重要な人間になってくる。

 だからこの二人はそんな俺を使って現国王を引き釣り下ろし、この国を改革しようとしているのだろう。


「私も貴方が国王になるべきだと思うわ」


「悪いけど、俺は政治の事はさっぱりだから」


「私やレイスがサポートするわ! それに他の臣下だって貴方に付いて行くと言う人は大勢いるわ!」


「そうだとしても僕は王家の人間じゃない。国王にはなれないよ」


「そんな小さな問題はどうにでもなるわ」


「いや、大きな問題だろ? この国の王は代々王家の人間が王の座に着いてきたじゃないか」


「そんなのわ……私と貴方が結婚すれば良いだけの事だわ!」


「……はい?」


 いきなりそんな事を言われ俺は三秒ほど考えてしまった。

 え?

 結婚?

 ま、まぁ確かにそうすれば俺も王家の人間だし、問題は無いのかもしれないが……って問題大ありだよ!

 俺にはカリーナがいるし!


「い、いやいや、そんな政略結婚みたいなのは嫌だって前にリア言ってたじゃないか?」


「そ、それは変な貴族のおじさんとか、ナルシスとの公爵の息子と結婚したくないって意味よ!」


「同じじゃないか……」


 しかし、魔王が言う国の征服をするのにこの話は正直美味しい。

 リアにレイスという国でもかなりの権力を持つ二人を仲間に出来る上に、その二人について来るであろう優秀な臣下達も居る。

 戦わずにこの国を征服する事が叶うかもしれない。

 だが、流石に結婚はなぁ……。

 カリーナ絶対怒るだろうしなぁ……。

 いや、する気は無いけど。


「お願いよ! 貴方が帰ってきて国民は貴方を英雄扱いしてる! 国王を引き釣り下ろすのは今しか無いのよ!」


「………そう言われても」


 流石に結婚はダメだろう。

 カリーナ絶対怒るよ!

 いや、怒るだけですまないかも……もしかしたら刺されるんじゃ……。


「失礼します、バエラル様こちらに居ましたか」


「あ、はいどうかしましたか?」


「みなさまが旅の話を聞きたいそうです、国王様をはじめ貴族の方々もお集まりですので是非お話を……」


「あぁ、はい分かりました。リア、この話はまた今度」


「あ、ちょっとラル!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る