第11話
*
「久しぶりだなぁ! ゼパスト!」
「貴様こそ、ここで何をしている? ここは魔王様の城だぞ!」
警戒するゼパスト。
しかし、そんな警戒も一瞬だった。
俺が武器の類を何も持っていない事に気が付くと、ゼパストはとたんに警戒を緩めた。
「どうやら、戦いに来たわけではなさそうだな」
「まぁな……実は色々あって、俺は魔王の側に付いたんだよ」
「なに!? そ、それでは魔王様、上手くいったのですね!」
「あぁ、勇者達が私の元にたどり着いた時には、魔族への不信感よりも自分達が生活してきた世界への不信感の方が大きかったみたいでな」
「そうか……」
ゼパストはそう言うと俺に手を差し出し握手を求めてきた。
「一度は争ったが、今は仲間だ。正直、お前のような屈強な戦士が味方になることを嬉しく思う」
「そらどうも、俺もお前が元気そうで安心したよ」
「侮るな、私は重鋭のゼパストだぞ! 貴様には不覚を取って負けたが、他の人間になど負けるはずがない!」
「へへ、そうかよ」
俺はそう言ってゼパストの手を取る。
「お前が味方ってのはかなり心強いな」
「共に戦場を駆ける日が待ち遠しいぞ、アルバス」
「あのさぁ~、あほくさい青春ごっこ桜花てないでさっさとこれからの事相談しましょうよ」
「うるせぇな! わかってるよ!」
「む、魔女に聖女……貴様らもか、勇者はどこに? お前らがいて勇者が居ないことはあるまい?」
「それは私が説明しよう、勇者は今フォールミリア王国に戻っている」
「勇者だけがですか? それはなぜ?」
「もちろん、最初に征服する国がフォールミリアだからだ。ここに居る勇者達と協力してな」
「あの大国を!?」
一瞬驚いいたゼパストだったが、直ぐに笑みをこぼした。
恐らく今の状況を冷静に判断したのだろう。
こういうときこいつは必ず笑みを浮かべる。
「魔王軍と勇者の共闘……そして既にスパイを王国内に潜入させている。こんなにも負ける気がしない戦はいつぶりでしょうか?」
「あぁ、征服が終わったら盛大に祝杯を上げようではないか」
「それでが本日我々幹部を招集したのは勇者と手を組んだ事の報告ですか?」
「まぁそうだ、勇者達が加わったことで魔王軍の体制も変えなくてはいけない、そのことの相談があってな」
「それではもう皆集まっております」
「そうか、直ぐにいく。しばし待て」
「ははっ!」
そう言ってゼパストは部屋を出っていった。
「さて、それでは用意していくか」
「私達もですか?」
「あぁ、皆に紹介しなくてはいけないだろ?」
「肝心の勇者が不在なんだが?」
「まぁ、奴は別件で動いているからな、それに今頃貴族の令嬢とお楽しみちゅうだろうな」
「あ、あの! そ、それってどういうことですか!?」
魔王の意味深な言葉カリーナが真っ赤な顔で反応する。
「あぁ、平和的な解決策を探るためにあやつには権力者からの信頼を得ろと言ってきたからな、勇者とお近づきになりたい貴族の娘は多いだろう。まずは貴族の娘を落とすところから始めると思ってな」
「そ、そんなの困ります!」
「なんだ? 心配せんでも帰ってきたらいくらでも相手をしてもらえば良かろう? それに英雄色を好むと言ってな、浮気も甲斐だと思ってやらぬと良い妻と言えぬぞ?」
「ち、違うんです! ま……まだ私達はキスもしてないんです! それなのに……それなのに!!」
「え? 嘘……マジ?」
「マジだな」
「マジね」
驚く魔王の顔を身ながら俺とエリンがそう答える。
まぁ、カリーナは協会では聖女と呼ばれていたし、簡単に純潔を捨てるなんて出来ないよな?
ラルも旅が終わるまでは何とかとか言ってたし。
「私はてっきりもうガンガンヤッてるものかと」
「やってるとか言わないで下さい!」
「どっちも奥手なのよね、うちのバカップルは」
「普通はキスくらいはするけどな」
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