第9話



「はぁ~あ、退屈だなぁ~」


「そうねぇ~、魔物を狩る必要も旅をする事も必要なくなったからね」


「というか、そもそも生き返ったのですよね? 私達」


「あぁ、そうだ。何せこの魔王直々に生き返らせたのだ、ありがたく思うのだぞ」


「魔王から生き返らせて貰えるなんて思わなかったよ、逆は考えたけど」


「てか、転移の魔法が実在していたなんて驚きだわ」


「そうか、お主ら人間はこの転移の魔法を使えないのか」


 俺の名前はアルバス・フォルン。

 勇者パーティーで戦士をしている男だ。

 俺は一週間程前に同じ人間に殺され、つい先日魔王によってこの世に復活したのだが……。

 復活してからというもの色々な事が起こり、一晩明けた今もまだ少し混乱していた。


「世界征服ねぇ~、俺達って世界征服を目論む魔王を討伐しにここまで来たんだろ? まさか征服する側になるとは……」


「結局人間も魔族も一緒って事よ、知能があって、良い奴と悪い奴が居て……裏切りもある」


「そう……ですね……」


 ここにいる人間、カリーナとエリンも俺と同じく人間に殺され、魔族である魔王に助けられた。

 なんとも皮肉な話しだが、それが真実なのだ。

 それにこの魔王を俺達のリーダーであるラルが信じていて、世界を征服すると宣言したのだ。

 仲間である俺はあいつのその言葉について行くだけだ。


「そう言えば魔王、お前って名前は?」


「む? おぉそうか、本名を名乗って無かった」


「そう言えば魔王って役職名みたいなもんだもんね」


「や、役職とは少し違う気が……」


「まぁ、いつまでも私も魔王と呼ばれるのはいやだからな、教えておこう。私はリーン・クライシア・デモニオン7世だ!」


「七世って事は七代目の魔王なのか?」


「そうだ、魔族では二番目の女性魔王になる」


「女性魔王って……魔王は魔王でしょ……」


「何をいう! 魔族界では女性の魔王は大変珍しいのだぞ!」


「お、大きな話題になりそうですわね……」


「なんか古臭い考えの年寄り連中からは嫌味を言われそうだな」


「うっ! そ、それを言わんでくれ……私が魔王に即位する時も古参の幹部達とは随分色々あってだな……」


 そう言って魔王リーンはうずくまって頭を抱えてしまった。

 よほど即位の時大変だったのだろう、なんかトラウマ見たいになってるな。


「魔王も大変なのね」


「人間も魔族の世界もどちらもそう言った事はあるのですね、勉強になります」


「てか、魔王軍の幹部達はリーンの目的に理解を示してるのか? 絶対に反対の意見を持つ魔族だっているだろ?」


「あぁ、もちろん反魔王派はいる。しかし、この魔王軍にいるのは私に忠誠を誓った信頼出来る者達だ、それにお前たちも知っていると思うが腕が立つ」


 魔王軍は大きく分けて12の軍団に別れている。

 12の軍のトップが魔王軍で幹部と呼ばれ、相当の実力を持っている。

 人間の世界でも幹部クラスともなれば名前が広まる。

 俺も何人かと戦ったことがある。

 その中でも部下と魔族の村の村人を守って一人で戦った、重鋭(じゅうえい)のゼパストとの戦いは印象的だった。


「……なぁ、魔王さんゼパストはまだ幹部の席にいるのか?」


 あの戦いで俺は奴を見逃した。

 その後どうなったかは分からないが、今後一緒に戦えるのであればもう一度会いたいと思っていた。

 あの戦いを切っ掛けに俺は魔族との戦いに疑問を持った。

 だから、俺はもう一度あいつと……。


「魔王様、お話が……ってお前たちは勇者の!!」


 俺がそんな事を考えていると部屋の戸を明けて、魔物が入って来た。

 驚くその赤い見た目に俺は見覚えがあった。


「ゼパスト……」


「貴様は……あの時の……」


 その瞬間俺は思った。

 確かめたい。

 俺の気持ちを……。

 このまま魔族と協力して戦うべきなのかを……。

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