駆逐


はっきり言うと、苦戦する要素がなかった。


敵は数こそ多いが、モンスターの質は強くてオーガレベル。砲撃魔法で前衛を壊滅させつつ、魔剣で切り伏せていく。


セレネも魔法で攻撃を加えている。


(おかしいな……)


敵の数が一向に減らないのだ。

既に、敵が全滅してもおかしくないはずなのだ。


(という事は…)


敵の親玉がいるはずなのだ。そう思っているとついに


ピキィィアアアア゙ア゙ア゙ア゙ア゙


体長は5メートルで、鋼色の甲殻、巨大な鎌のような手をしている。蟷螂かまきりと蜂を合わせたようなモンスターだ。


名前:メンティス・キラークイーン Lv121

称号:迷宮王


HP:73000

MP:26700

力:12300

防御力:45000

俊敏:9780

精神:4700


スキル:・螺旋風刃インビジブル・カッター

・配下召喚


【ユニークスキル】

・虫纏




「セレネ。親玉のお出ましだ」


「…ん 黒炎蒼雷」


“バヂッッ ズガァォァァァァアンンンン”


黒炎と、蒼い雷が敵を穿つ



だか、


「…ん? 効いてない」


ダメージが入っていてもおかしくないのだが、ダメージが通っていない。


「恐らく、近くに居たモンスターを取り込んだんだ」


ユニークスキルを鑑定してみるとそのからくりがわかる。


虫纏→他のモンスターを捕食することでモンスターの特性を一部取り込む。※発動時ステータス大幅補正


配下を召喚し、捕食することで絶えず補正がかかっている状態なのだ。


ふと、奴が腕を振り下ろした。


バシュッッ!


(ッッっ…!? )


ギリギリで、収納が間に合った。


「あっぶねぇ…」


レベルリセットにより、今のLvはやつより下だ。まともにくらってたら危なかった。


ともかく、早めに決着をつけることにする。


奴まで、素早く距離を縮め脚を切り飛ばす。続いて流れるようにやつの胸元へと魔剣を突き刺し、さっきのお返し螺旋風刃をする。


メンティス・キラークイーンの体を真っ二つに切り裂いた。必死にもがいているが、頭へと魔剣を突き刺すと力果てた。


「…これで終わり 」


他の雑魚敵を片付けて、セレネが近づいてくる


「お疲れ。セレネ」


「ん! レベル上がった」


俺のレベルも大幅に上がっていた。


「ギルドへ報告したら、今日は休もう」


セレネも賛成らしく、僕達はギルドへと報告を済ませることにした。



――――――――――――――――――


「やはり君が倒してくれたのか… 助かった。」


ギルドでは,怪我人の救護を行なっていた。


だが、スタンビードが終わったと言う報告が心の余裕を生み出した。


「報酬についてだが,今回は対応が間に合っていなくてな,後ほど君のギルドバンクへと入金しておこう」


「ギルドバンクとは何ですか?」


ギルド長はポカンとした表情を浮かべた。


「あぁ… すまない。まだ説明していなかったな。ギルドバンクとはその冒険者の銀行のようなものだ。ギルドカードさえあれば、どのギルドでもお金の出し入れはできる。商人ギルドでもできるぞ。それに,ギルドとしても報酬の受け渡しが楽なんだ」


(便利な機能があるんだなあ…)


「なるほど… ありがとうございます。それと,サエスタ帝国に行きたいんですか?どうやって行けばいいですかね」


(あの手紙の書き主が,どんな人物だったのか気になるし)


「サエスタ帝国か… なかなか遠いが,行けなくは無い。ここから南に10日程度馬車を走らせれば行けるはずだ。馬車はこちらで手配しよう」


「助かります。では,僕は宿に戻ります。セレネを待たせているので」






しばらく歩いていると,曲がり角から1人の少女が出てきた。


白髪の美少女… 蒼穹にいた盗賊シーフのコレットだ。こちらの姿をチラチラと伺っている。


「… やる?」


セレネが殺意を混ぜた声色で、尋ねてくる。


「いや、あちらに敵意は無いようだ。話ぐらい聞いてみるよ」


セレネの頭を撫でながら、曲がり角へ歩を進める。






「何をコソコソしてるんだ?」


こちらに気づいていないようなので、そう声をかける


「あっ… 久しぶり レイ。あの…、その…、ダンジョンの時はごめん… 。 私だけ途中からあのパーティーに参加してたんだけど、まさか、あんなことになるとは思わなくて…」


明らかに動揺した様子で、ドギマギしながら喋る。


(律儀なやつだな…)


「俺も短い間だったがお世話になった」


最後に和解の握手を交わして、その場を立ち去った。



――――――――――――――――――――――


その後、再びセレネと合流して、買い物をしつつ、宿に向かった。













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