束の間の休息…?

38話 スタンピード

「うっ…… ん?」

目を覚ました僕は、眠い目を擦りながら腕の違和感に気づく。


恐る恐る毛布を捲ると、そこには一糸纏わぬセレネの姿があった。銀髪の美少女… いや、天使と言っても過言ではない。


『綺麗だ…』


僕はしばらく見とれていたが、ふと我に帰りセレネを起こす。


「おーい。 セレネ朝だぞ」


「んんっ… あと5分」


肩を揺すってみるが、一向に起きる気配がない。


よし、あれを試してみよう。ニヤリといたずらっ子の如く笑みを浮かべセレネに近づく。


“ふぅーっ”


「ぴやぁッ!」


耳に息を“ふぅー”っと吹き込むと、思いのほか効果的なようだった。


「むーっ! いじわる…」


セレネはぷくりと頬を膨らませ、ジト目でこちらを見てくる


「セレネが起きないからだろ? 下にある食堂で食べよう」


「…ん わかった」


そう言ってセレネも着替え始める。





僕もセレネも数分で着替えを終えた。


「…レイ」


そして、下へ降りようとした時セレネに呼び止められ、振り返る


「ん? どうかし……」





“ぷにっ” っと唇に柔らかい感触……



それは、セレネの唇であった。


「……ッ!?!? 」


突然のキスに、僕は頭が真っ白になる。


「ふふっ さっきのお返し」


ニヤリと悪い笑みを浮かべながら、やってやったぞ!と言いたげな顔をしている。


悔しいが、それ以上にセレネの笑顔が可愛くて怒る気にもなえなかった。




――――――――――――――――――――――



食事を済ませた僕達は、ギルドへと足を運んでいた。


だが、何処か緊迫した様子だ。


ふと,ギルマスと目が合う。


「ああ。ちょうどいい。君たち二人も少しいいかい?」


特別断る理由もないため,近くの席に腰をかける。



「さて,諸君たちに集まってもらったのには訳がある。先日ダンジョンに派遣した部隊からの報告によると,スタンピードの兆候が確認された」


“ざわざわ”と冒険者が響めき始める。


「君たちが驚くのも無理はない。本来ならAランク以上の高ランク冒険者が担当する案件だ。しかし,今回はそうも言っていられないので,君たちにも参加してもらう予定だ」


「ふざけんなよ! 俺たちに死にに行けっていうのか!」


そうだそうだと ヤジが飛ぶ。


「別に強制はしない。ただ,参加者には高額の報酬と,活躍に応じてランクアップを約束しよう。ランクアップは本来であれば,簡単にできるものではないのだが,今回は特例だ」




俺の今の目標は世界中のダンジョンを攻略する事だ。そのために,高ランクであることに損はない。


これは俺達にとって良い“チャンス”だ。



「活躍に応じてランクアップを斡旋あっせんしてくれるんだな?」




「ああ。それに関しては,私のギルマスの威信にかけて約束しよう」

 

ギルマスが真剣な面持ちで頷く。


「なるほど…。なら、俺達は最前線で戦わせて欲しい」


“シーン”と騒がしかったギルドが静まり返る


「ああっ? 実力を弁えねーとすぐに死ぬぞ?」


「ガキがしゃしゃんなよ!」


ヤジが飛んでくるが,有象無象の言葉など気に止めず,ギルマスを見据える


「……良いだろう。君たちなら良い戦力になるだろう」


「他に最前線で戦いたい奴はいるか?」


ギルマスが問いかけるが,誰も手をあげるものはいない。


皆,最前線がどれだけ過酷か理解しているのだ。


「俺はやるぜぇ」


巨大な大剣を背に担いだ、スキンヘッドの大男が手を上げた。


「へへっ。報酬を弾むんなら俺もやるっす」


今度は,赤色のローブに身を包んだ男が名乗り出た。



そして,ギルマスが募集を切り上げようとしたところで,手が上がる。


最後の一人のようだが,フードを被っていて顔が見えないのだが佇まいから、相当の実力者だと分かる。



「スタンピードまで時間がない。各自,準備を済ませるように」


ギルマスの言葉を聞き終えた冒険者達は,各自の準備のためにそれぞれの場所へと散っていった。



「セレネ。俺たちも準備を済まそう」


「…ん!」


そうして俺達も準備をするべく,ギルドを出た。



『誰か見ているな』 


ギルドからずっと視線を感じていたのだ。だが,敵意はないので泳がせておくことにした。






「…………」 


フードを被った人物がギルドから出る二人を見ていた。



―――――――――――――――――――――――



翌朝,俺達は準備を済ませ集合場所の広場に集まっていた。


最前線で戦う人だけが集まっている。



広場にはすでに大勢の人が集まっていて,団長らしき人物が挨拶をし始めた。


「今日はよくぞ集まってくれた。我は王国軍団長:ガーフィール・アゼルハインだ。諸君の勇気ある行動に感謝する」


近くでは,近衛部隊,王国軍の騎兵隊や歩兵隊,重装部隊が列をなして並んでいる


「いよいよスタンピードだ。獣どもに我々の力を見せつけるぞ!」


「「「おおおおおおおおおおおおおおおお!」」」


団長の言葉に続いて,その場の全員が頷いた。



そして,ダンジョンへと歩を進め始めた。









数分後。



「来たぞ!」


ダンジョンの入り口から,ゾロゾロと魔物が出てくる。


「セレネ。でかいのぶちかますぞ!」


「…もちろん」


俺とセレネはニヤリと笑うと,詠唱は開始した。


「デカイのぶちかますぞ! 道を開けろ!!」


俺の言葉に反応し,皆が,素早く道を開ける



「詠唱省略【古代魔法】 【滅却の炎撃カオス・フレア


刹那,赤い閃光が光る同時に,魔物の大群



だが、再び溢れるように魔物が出現してくる



「【砲撃魔法】滅魔の蓮丸!!」


複数の魔法陣を同時起動し,砲撃魔法を起動する。


弾丸に魔力を込めておいたので,魔物を薙ぎ払い最後に大爆発する。


しばらく処理していると,魔物の流れが収まった。


「俺はダンジョンの中の魔物を処理してくる。お前達は出てきたやつを頼む!」


そう言い残し、俺とセレネはダンジョンへと駆け出す。


「私もついていく」


突如,フードを被った人物が近くで呟いた。


『あの時のフードの奴か』


戦力が増えるに越したことはないので,そのまま奥へと進んでいく。









――――――――――激戦が始まる。









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