帰還

37話 久しぶりの地上

あれから王都の門を潜り、冒険者ギルドに到着した。


“ギィィィ”


相変わらず木製のドアのため、開くたびに音がなる。


冒険者ギルドはいつも通り賑わっている。皆の視線が俺に集まる。


だが、俺達を見た途端に賑やかだった冒険者ギルドの空気が凍る。


“静寂”


シーンと静まり返る。



俺達は特に気にすることなる受付まで歩く。


「ギルドマスターを呼んでくれるか?」


単刀直入に要件を伝える。


「……! 少しお待ちください」


そう告げると、受付嬢はすぐさま奥の部屋へと駆け込んでいった。





すぐに俺達は奥の部屋へと案内される。


部屋には高級そうな装飾品が置いてある。見たところ、重役専用の応接間って言った感じだ。


すでにギルドマスターはソファーに座っていた。


見た目は20才程で、ウェーブのかかった赤髪に、紅色の目をした美女だ。



「初めましてレイ君。ギルマスを務めているロザリア・ニーデルだ。話を聞かせてもらってもで良いかい?」


「そのつもりで来たんだ」




「……ところでそちらの子は?」


「それに関しては、秘密だ」


ギルマスがセレネを見ながら聞いてくるが、セレネの正体を話すつもりはないので誤魔化した。


「……分かった。まず。ダンジョンで何があったのか聞かせてもらえるかな?」



「あの日、ダンジョンの低層に存在しない魔獣に遭遇し、奴らが逃げるために俺を囮として置き去った」


溢れ出てくる殺意を抑えながら話を進める。


「そいつは、体長は五メートルほどで、銀色の毛に漆黒の双角を生やしていた」



ギルマスは唖然とした様子で、口を開く。


「……待ってくれ。私は、仲間のために君が率先して囮の役を買って出たと報告を受けているのだが」


「それは誰からの報告なんだ?」


大体予想はできているが、一応尋ねてみる。


「私が報告を受けてのは、のパーティーメンバーからだ」


「…… あ?」

 

予想はしていたが、改めて聞かされると殺意が湧いてがくる。


“コンコン”


部屋にノックの乾いた音が響き、何人か入ってくる。


入ってきたのは、あいつら蒼穹と副ギルドマスターだった。




―――――――――――――――――――――――


【タンク】のジャック


【魔剣士】のルキ


支援職バッファー】のリリー


魔導士メイジ】のエルザ


盗賊シーフ】のコレット



――――――――――――――――――――――


「君は何のつもりだと思うかもしれない。彼らが嘘をつけない様に君の前で話してもらおうと思ってね」


「なるほど」


俺は獰猛な笑を浮かべつつ、蒼穹ゴミへと視線を向ける。


「さて。聞かせてもらおうかな? 君たちの言い訳を」


ギルマスが鋭い視線を向ける。


全員顔が真っ青で、ガタガタと震えている。



「や、やあ…! レイ君。 久しぶりだね」


顔面蒼白になりながら、リーダーであるルキがなんとか声を絞り出す。


「……レイ君 君の怒りもよく分かる。け、けど僕達もしかたがなかったんだ。……そ、そうだ! またパーティーを組んでよ! もちろんそのこの子セレネの参加も特別に許すよ」


「め、名案だ。レイの実力なら俺たちのパーティーの主力としてやっていける。そこの女も良かったな!」


タンクであるジャックは頷きながら、ルキの案に賛成の意見を述べる。


「あら〜 良いわねその案! 今なら特別にサービスしてあげるわよ?」


上目遣いで誘惑してくるが、ただの醜悪しゅうあくなババアにしか見えない



「……全員殺す」


セレネの上に、巨大な槍が出現する。


「や、辞めてくれ!」


腰を抜かしながら後ずさる。


「大丈夫だ。セレネ」


僕がそう告げるとセレネは不満げに頷かな、魔法の発動をやめた。



「レイ! お前と俺で勝負だ。そうだそれなら勝てる! 負けたらそこのガキを寄越せ」




ギルマスも何も口を挟んでこないため、多分黙認してくれているようだ。




「属性付加【風雷】」


そう告げると、ルキの魔剣が“バチバチッ”っと発光し始める。


「死ねやぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」


普通の人が触れたら、即死であろう魔剣の一撃が迫る。


だが、


僕は奴の魔剣を掴み、そのまま“砕いた”


「んなっ…… 魔剣を素手で破壊するなんであり得ねぇだろ!」



無言のまま奴へと歩み寄る


「わ…分かった! 俺の負けだ。許してくれ! 暴力は何も生まない!」


腰を抜かしながら、必死に命乞いをする



「人を殺そうとするのは、殺される覚悟のある奴だけだ。そして、お前は俺の大切なセレネに手を出そうとした。死んで詫びろ……カスが」


「ま、待っ……プぎャっ」


奴の顔面を蹴り飛ばす。奴はボールの如く数メートルほど吹き飛んだ。



「……! 手前ぇ よくもルキを!」


ジャックが、突如殴りかかってくるが遅すぎる。


「ぐぎゃあぁッ」


半身でかわし、そのまま右ストレートを顔へと叩き込む。そのまま、壁まで吹き飛び痙攣している



“ゴアッ” “ブオオッ”



そして、その流れで魔法を打ってきたエルザとの距離を詰める。鳩尾へのパンチを打ち込み、ガラ空きの顔面を全力で殴り飛ばす。


「アギィッッ……」


そして、その場で崩れ落ちた。



 


 




あの決闘の後、ルキ・ジャック・エルザは警備兵に連行されて行った。


残りの2人は特に言葉も発さず、大人しくしている。






「君には迷惑をかけてしまい申し訳ない。ギルドマスターとして謝罪しよう」


「俺達も過ぎたことをぐだぐだ言うつもりは無い」

「……ん。私も」


俺としても、しっかりケジメをつけれたのでどうこう言うつもりは無い。



「お詫びとしてはあれだが、特例として君たち2人の冒険者ランクをBにあげよう」


「それはこちらとしても助かる。素材の買取はまた明日頼むつもりだが、問題なさそうか?」


正直、今日は休みたい気持ちが強い。


「それについては問題ない。明日の朝は解体部屋を空けておこう」


「助かる」


収納してある魔物の一部を売ればしばらくは生活に困らないはずだ。


そう思い、ギルドを後にしようとするが呼び止められた。


「これを。宿はまだ決めていないんだろう?」


そう言って渡されたのは、ギルドマスターの名前が書かれた手紙のようなものだった。



「雪原の宿屋という宿に行くといい。宿は決まっていないんだろう?」

 

ギルマスの言う通り、宿はこれから探すつもりであった。


「助かるよ。ありがとう」


感謝を告げ、ギルドを後にする。








しばらく歩くと、石で作られた巨大な建物が見えてきた。


看板には“雪原の宿屋”と書いてある



中に入ると、酒場と定食屋が併合したような感じたった。


二階への階段の近くに受付があり、近くまで行くと受付の女性が声をかけてくる。


「いらっしゃいませ。部屋のランクどれになさいますか?」


そう言って、部屋のランクと値段が書かれたメニューを見せてくる。


僕は、ギルドマスターに貰った手紙を渡した。


「ーーッ! これは失礼しました。すぐに最高ランクをお部屋を用意いたします」


受付の女性はひどく動揺している様子だが、部屋まで案内をしてくれた。


「先程大変失礼いたしました。どうぞごゆっくりお過ごし下さい」


そう告げると、一礼し部屋から出でいった。


ベットに座ると、ふかふかしていて体が包まれるようであり、僕とセレネの意識は闇へと落ちていった。
























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る