35話 強敵


討伐した玄武を収納し、休憩を取ろうと腰を下ろす。 


だか、直後異変が起こる。


突如巨大な魔法陣が出現したのだ。僕達は警戒を高める。


「……セレネ どうする?」


「ん…… 、 行く」


セレネは特別普段と変わらない様子で、そう告げる。


「了解」


短く返答し、魔法陣へと足を踏み入れる。


すると、身体が光に包まれ視界が暗転する。







転移した先は、図書館ぐらい広い部屋であった。

ほこりの様子からして、長いこと使われていないようだ。


「…… 何処だ?」


「……ん とりあえず魔物はいなさそう」


思わずつぶやく。魔物はいないようだが警戒はゆるめない。



少し歩いていると、手紙が置いてある机を見つける。


ただ、近くに骸骨がいこつが横たわっている


手紙を手に取り封を切り、中身を読む。



――――――――――――――――――――――


未来ある若人わこうど


【名前】サエスタ・シャザール


この手紙を見ているという事は、かの“玄武”を倒したのだろう。本当におめでとう。


余は生前、魔帝まていと呼ばれておった。

調子に乗り、このダンジョンに挑んだのだ。


だが、甘かった。余はかの玄武に完封かんぷなきまでに叩きのめされてしまった。


そして、死ぬ間際にこの空間へと転移した。


余はもう長くは持たないが、一つ頼み事がある。


余が死んでから何百年が立っているかわからない。


だが、サエスタ帝国に置いてきた娘が心配なのだ。机の中にある手紙を娘に渡してはくれないだろうか?


この空間にあるものはすべて其方そなたが使ってくれて構わない。


世の頼みをどうか聞いてはくれないだろうか?



頼ん……――――――――


――――――――――――――――――――――


そこで手紙話終わっていた。


 

「なるほど……」


とりあえずここにあるものを有り難くありがたく活用させてもらおう。



僕は本棚から本を見繕みつくろう。


鑑定してみた結果、どうやらこれらの本はスクロールと言うスキルが得られるアイテムらしい。


僕は役に立ちそうな、【天駆てんく、【体術(極)、【千里眼】、【思考加速】、【加速アクセラレーション】、【並列思考】、【念力テレパシーを習得する。


そして、面白そうなので【高位召喚ハイ・サモンも取得しておいた。


セレナはと言うと……


「……ん どれが良いか迷う。」


と、いまいち決められていない様子だ。


「これとか良いんじゃないか?」


そう言って、魔眼系スキルのスクロールを手渡す。


「……ん これ気に入った。そう言って魔眼系スキル【威圧】を習得する。


加えて、【空間操作魔法】、【念力テレパシー】、【魔力高速回復】、【体術】、【並列思考】、【魔剣】を習得した」


そして、頼まれた手紙をしまう。


一通り、有用なスキルを習得した僕達は、近くの骸骨へとお礼を言い、簡易的な墓に埋葬まいそうする。


そうして、再び魔法陣へと入る。





先程の玄武を倒した場所とは違い、今度は薄暗い巨大な空間に出る。目の前には巨大な漆黒の扉がある。



所謂いわゆる階層ボスの部屋だろう。


僕とセレネは一旦休む事にした。










30分ほどの仮眠と休憩をとり、僕達はついに扉に触れる。


“ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ”


っという音とともに扉が開いた。




中に入ると、そこには巨大な黒龍が存在していた。


真ん中まで歩くと、黒龍は“ギョロリ”と目を開いた。



“ゴアァァァアァアアアアアアッ!”


奴は大声量の咆哮を上げ、すかさずブレスの体制に入る。


「行くぞッ! セレネ」


「んっ!」


セレネもやる気満々のようだ。



――――――――――――――――――――――



名前:【滅びの祖先龍】クリザリオン Lv927


種族:  幻晶竜クリスタル・ガーディアン


HP:1208000

MP:489500

力:147000

防御力:174600

俊敏:267000

精神:120000


[スキル]

結晶化クリスタルゼーション【極】Lv89

結晶操作クリスタル・レイン【極】Lv84

波状結晶撃クリスタリー・レイ【極】Lv82

・錬成【極】Lv75


【ユニークスキル】


結晶神撃クリスタル・アステール


―――――――――――――――――――――――


ステータスの高さには今更驚きはしない。ただ、気になるのはスキルの方だ。見たこともないスキルだ。


「…… レイ!」


セレネの声でふと我に帰り、回避の行動をとる。


“バキバキバキバキ”


地面から水晶が突き出し、先程までいた場所を貫いていた。


「ありがとう。助かった」


「……ん 気をつけて」


短くお礼を告げ、奴を見据える。


おそらく今のが、奴のスキルの一つ結晶操作クリスタル・レインだろう。


とても厄介なスキルだ。


火炎槍撃フレイム・ランス雷撃テンペスト地獄の業火インフェルノ!」


様子見がてら魔法を打ち込む。


“ゴアァァッ!” “ズドォオォンッ!” “ゴウゥッッ!”



吸い込まれるように、奴の体へと直撃する……



「はぁっ!? マジかよ」


クリザリオンの体には傷一付いていないのだ。よく見ると、奴の体が白く変色している。


『まさか、結晶で身体を覆っているのか!?』


おそらく、二つ目のスキル、結晶化クリスタルゼーションか。


このままやり合っても分が悪いので、接近戦を仕掛けてみる事にした。



“ガギギギギギギギィィィイイン”


猛攻を仕掛けるが効果はイマイチだ。攻撃を浸透させようとしているのだが、どうも上手くいかない。

おそらくあの水晶の影響だ。


「セレネッ! コイツの結晶をなんとかできないか!?」


「……ん 任せて」


セレナは頷くと、詠唱を開始する


「破壊を司りし神ヴィシュヌに乞い願う。汝の力我に貸し与え、敵を破壊し穿うがつ槍となれ!


破壊の神穿槍セイクリッド・ティアスピール!」


巨大な漆黒の槍が出現する。そして、音を置き去りにした槍が奴へとクリザリオンへと直撃した。


“ビギィッ!” “バガバギバギバギバギ”


水晶に大きな亀裂きれつが入る。


『ナイスッ!』


心の中でそう叫び、僕は奴を斬りつける。


亀裂が入ったおかげで、先ほどまでとは違い簡単に刃が通る。



“ガギギギギギギギギィィィイイン”


僕は攻撃の手を緩めない。全力で極限まで早く。


【加速】スキルでさらに攻撃の速度を上げる。


“速く” 極限まで“速く” 加速する。




【527900/1208000】


体力は半分だを切っている。


奴の体から水晶が“パキパキ”と剥がれ落ち、胸の核があらわになる。



自分に身体強化をほどこし、攻撃の箇所を核へと変える。



“ガギギギギギギギギィィィイイン”




セレネもデバフに加え、攻撃を加える。



「氷を司りし女神ヘルに乞い願う。汝の力我に貸し与え、敵を凍て尽くし、光なき牢獄となれ!

静滅零獄アルティメット・ゼロフィールド



クリザリオンの体が凍り始める。


そして、玄武戦で手に入れた新スキル【天撃】を奴の脳天へと繰り出す。


“バギバギバギバギバギバギッ!”



結晶をついに打ち砕き、深々と刺ささる。



そうしていると、クリザリオンの口が大きく開かれる。狙いはセレネだろう。




「させるかよッ!」


そのまま、奴の頭部を切り裂き、クリザリオンの体を真っ二つに両断する。


“グルルゥゥ”………――――――――――



力なく鳴き声をあげ、崩れ落ちた。水晶が“パキパキ”と音を立てながら奴の体から剥がれ落いている。




そのままセレネの所へ歩み寄り、頭を撫でる。


「俺たちの勝利だ」


「……ん 私達の勝利」


頭を撫でられているセレネは照れつつも、Vサインをしている。


「色々助かったよ。 ありがとうセレネ」


感謝しても仕切れないほど、セレネには感謝の気持ちしかない。自分1人では、玄武もクリザリオンも絶対に倒さなかった。


「……ん レイも私を助けてくれた。ありがとう」


セレネは頬を朱色に染めてそう呟く。



「……レイ」


セレネは何かを決心した様子で、僕の名前を呼ぶ。


「……?」


「話があるの……」





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