13話 宴会


村に帰る頃には日が完全に落ち 辺りは真っ暗であった。村へ帰ると大人達が駆け寄ってきた。こんな暗い時間まで子供が帰って来なかったのだから、心配するのは当然だろう。


皆口々に「無事で良かった!」 「怪我はねーか?」などと聞いてくる。


「心配かけてごめん。」僕は頭を深々と下げ 謝罪する。


すると人混みを割るようにして父が近づいてくる。


そして、開口一番


「......こんなに時間まで何をしてたんだ? 初めての狩りで夢中になっていたとでも言うのか?」


その言葉には明確な怒気が含まれている。


「ごめん。父さん」僕は素直に謝罪した。


「待って!レイは悪くないの! レイは私を助けてくれたの......だからレイを責めないで.....」


ウィリアは目に涙を溜めながら、そう父に訴えた。


「......? どういう事だ」先程とは違い今度は訝しむ様子で僕達を見ている。


しばしの沈黙の後、ウィリアは渋々話し始めた。


「森でレイと狩りをしていて、そろそろ日が落ちるからレイは帰ろうって..... そしたらオーガに遭遇しちゃったの.....」


「何!? それは本当か!」


「本当だよ」 そう告げると僕はオーガの死体を取り出した。


“ズシンッ” という音とともに全長5mはありそうな巨体が現れた。


「……ッ!今すぐ村長を呼んでこい!」












「.......本当に君達二人で倒したのかい?」

村長は唖然とした様子であった。


「はい。」


「……そうか。聞いた所村に危害が加えられる事を危惧して倒したと聞いた。村の長としてお礼を言わせてもらう。ありがとう」


村長は深々と頭を下げた。



「オーガについてなんですが肉は村のみんなで食べようと思っています。


「.....重ね重ねありがとう。村のみんなも喜ぶだろう」





その後は大騒ぎであった。


村の子供達二人がオーガを倒したのだ。

オーガは訓練された騎士でも苦戦するモンスターでそれを倒したのだから騒ぎになるのも必然と言えた。


その後、オーガの肉を使い村では宴会が開かれた。


普段食べられないような料理やオーガの肉を使った料理を皆、夢中になって食べている。




ふと足音が聞こえたので振り向くと騎士団長のガルシュさんがいた。


「やあ少年 いや、村の英雄の方がいいかな?」


ガルシュは戯けた様子で言う。


「やめてくださいよ.....恥ずかしい....」僕は照れ隠しにそう告げた。


「だが、君はあのオーガを倒したんだ。良く頑張ったな。本来ならこの地域にはオーガは生息していないはずなんだ。おそらく“はぐれ物”だと推測している」


「はぐれ者 とは何ですか?」


「はぐれ物とは、何らかの原因で群れから逸れてしまった個体の事だ。本来ありえない地域に出現するモンスターを総称してはぐれ者と呼んでいる」


レイははぐれ者について知ることができて満足そうだ。



ふとガルシュは不敵な笑みを浮かべた。


「ところでオーガの死体だが……売るなら俺が買い取るぞ。オーガの素材はかなり需要が高いからな、色をつけて高く買い取るぞ。」


「すみません。ガルシュさん オーガの素材で僕とウィリアの武器と防具を作ろうと思ってます。ですので、すみません。売る事は出来ないです。」



「そうか..... なら王都に行ったら、おすすめの鍛冶屋を紹介してやる。」


「ありがとうございます!」


「少年もそろそろ宴会に参加したらどうだい?ウィリアも君がいた方が楽しくなるはずだ。」


「そうですね。そうさせて貰います。色々とありがとうございます!」


僕は短く礼をすると、そそくさと宴会が開かれている広場に向かうのであった。











会場に着くと


「おっ お前らッ主役の登場だぞ!」


誰かがそう叫ぶと皆の視線が僕に集まる。かなり気まずい。


「レイが倒したオーガ、めちゃくちゃ美味いぞ」


「あ、ありがとうございます。」


近くの大人が、酒臭い息を吐きながら僕に料理を持ってきてくれた。僕はウィリアの分も貰った。


会場を探したが、ウィリアが見つからない


『さて、ウィリアはどこにいるんだろう?』






しばらくムラを歩き回っていると、村の公園に彼女は居た。ベンチに腰掛けて ただぼうっと景色を眺めている。



「ウィリア 探したよ。」


「あっ レイ……」 


彼女は何処か儚げな雰囲気を醸し出している。


「ウィリアがどこにも居ないから探したよ。どうかしたの?」


「ううん 大した事じゃないの。ただ.....明日この村を離れると思うとなんだか寂しくなっちゃって」


『彼女が何処か寂しそうにしている理由はそれか』


僕は昔から冒険者になるのが夢なので、あまり村を出るのに抵抗はなかった。

だが、ウィリアは違う むしろこの村にいたいはずだ。


「確かに村を出るのは僕も寂しい。だけど、2度と返ってこれないわけじゃないよ。今はこの村での楽しい思い出を作るのがいいと思うな。」


ウィリアを元気づけるようにそう告げた。


「そうだね.....そうだよね!」


彼女は胸のつっかえが取れたのか、さっきまでの暗い表情は消えていた。


「ちょうど料理を持ってきたから一緒に食べない?」


「うん!食べる食べる!」


はしゃいでいる彼女は何処か楽しそうだ。



そんなウィリアを眺めながら、収納していた料理を次々に取り出す。



「この肉美味しいッ!」


「その肉は僕達が倒したオーガの肉だよ。」


ウィリアは幸せそうな表情を浮かべながら、肉に齧り付いている。






そして、大量の料理を平らげた後 僕達はステータスを開いた。


『色々あって、ステータスを確認する機会がなかったからなぁ』


「ウィリア どうだった?」


「わぁー! レベルがたくさん上がってるよ!見て見て!」


とても嬉しそうだ。




名前:ウィリア LV23 種族:人間 

職業:【聖騎士】(A)


HP:1080

MP:790

力:840

防御力:970

俊敏:710

精神:770

装備:

スキル:聖剣技レベル2、約束の栄華グローリーロードレベル2、状態異常耐性レベル3、破邪の加護、絶対聖域レベル2、痛覚耐性レベル3


【ユニークスキル】奥義 「桜花鬼神斬」


『これは、なんともえげつないステータスだな』


内心驚愕しているが、表情には出さない。


「すごいじゃないか!ウィリア スキルのレベルも上がってる」


ウィリアを褒めてあげると、ウィリアは「えへへぇ」と嬉しそうにしていた。


「次は、僕だな」


「レイのステータス 私も見たい!」


「じゃあ、一緒に見ようか」




名前:レイ LV20 種族:人間 

職業:収納士(F)

HP:350

MP:125

力:180

防御力:130

俊敏:175

精神:100

装備:

スキル:治癒魔法【小】レベル4、鑑定眼【低】レベル3、痛覚耐性レベル1 、剣術【低】レベル5

【ユニークスキル】無限収納収納


「攻撃力と俊敏のステータスの伸びがいいね」


『スピード型アタッカーって感じかな?』


「ステータスの確認も終えたし戻ろうか まだ宴会はやってるしね」


ステータスの確認を終えたので、僕達は宴会に戻る事にした。









会場に戻った僕達は、ウィリアと美味しいそうな匂いのする料理を次々に食べている。




「レイ!あれ食べましょう!」


『まだ食べるのか.....』


そう思いつつ、宴会が終わるまでウィリアには付き合うのであった。



「すっごく 楽しかった! ありがとうレイ!」


「楽しんでくれて良かったよ。僕も楽しかった。」



その後、僕はウィリアを家に送り届けた。



その後、家に帰るとすぐ眠りについた。















レイが寝た後、しばらくして扉が開かれた。



水色の髪と紫色の目を持つ彼女ウィリアはレイを起こさないように そろり そろり と部屋に入り


そして、レイと同じ布団に潜った。



当然、レイは寝ている為 気づかない




ウィリアはこそばゆい気持ちでいっぱいになりそうなのをなんとか堪えて、レイに“抱きついた”


「あの時 逃げずに助けに来てくれて、私嬉しかったなぁ ありがとう」


彼女は寝ているレイにそう小声で告げると





そのまま寝息を立てて眠るのであった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る