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大川を越えた先にある深川には、五十鈴の呉服店と負けず劣らずの大きな呉服店がある。そこが月夜の目的地である川内屋。ここの若旦那である信彦宛に、五十鈴からの文を預かっている。
「こっちの店も、忙しそうだにゃ」
月夜は向かいの建物の屋根上から店を見下ろしており、人の出入りが多いことに驚いていた。
「行くかにゃ」
月夜はぴょいと屋根から飛び降りて、地面に降り立つと、立ち上がって帽子をしっかりとかぶりなおして、店に入っていく。
「にゃー。『化け猫亭』のひきゃく、月夜ですにゃ。わかだんなの信彦さまに、ふみをあずかっていますにゃー」
「あ! 月夜!」
棚の整理をしていた信彦は、月夜の声に顔をあげて、近寄ってきた。
信彦が手を差し出してきたので、月夜が鞄から文を取り出して渡そうとする。が、素通りされて、そのまま抱き上げられた。
「にゃ?」
「すみません。ちょっと、奥へいってきます」
「にゃにゃ?」
信彦は店にいた従業員に声をかけて、月夜を連れて自室へと向かった。月夜はわけがわからないまま、運ばれる。
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