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「ちょっといいかにゃ?」


 二人の足元で、白菊が声をかける。


「な、なによ。猫には関係なんだから、黙ってなさいよ」

「白菊は猫又ですにゃ!」


 白菊は強く自分が猫又であることを主張する。


「そんなことより、みろくさんは、小春さんに嫉妬しているのかにゃ?」

「っ。そ、そうよ。悪い?」

「悪いですにゃ」


 白菊は間髪いれずにこたえた。


「みろくさんも、さっきの話ぶりからして接客業をしてますにゃ?」

「そうよ。こことは別のとこの茶屋で働いてるわ」

「働いてるなら、なんでいつも小春さんを見に来てたにゃ。自分の仕事を放ってすることじゃないにゃ」


 白菊の正論に、みろくは言葉につまる。


「うるさいわね! あたしがなにしようと、あたしの勝手でしょ!」

「そうにゃ。でも、他人に嫉妬しているひまがあるにゃら、自分の仕事の仕事の腕を磨くべきにゃ」

「磨くって言ったって、どうすればいいか、わからないんだもん、あたし、いつもお客さんに怒られてばっかりで……」

「なら白菊が、接客業のいろはを教えてあげるにゃ」

「え?」


 みろくはぽかんっと口を開ける。


「白菊は『化け猫亭』の接客担当にゃ。接客の仕事は、白菊にお任せなのにゃ」

「みろく。私も、白菊さんにお願いしたほうがいいと思うわ。白菊さん、いろんな人と顔見知りで、おかげてお店は大繁盛。接客の仕方もとても参考になるわ」

「にゃあ」


 小春に誉められ、白菊は満更でもなさそうな顔をする。


「……あたしもお願いすれば、接客の仕事について教えてくれるの?」

「もちろんですにゃ。『化け猫亭』に来て、ちゃんと依頼をしてくれれば、引き受けますにゃ。忙しい人や困っている人に、化け猫の手を貸すのが、うちの店の売りですにゃ」


 白菊は二本のしっぽを揺らしながら、目を細めて笑った。

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