10
翌日、営業が終わり、小春と白菊で店の前を片づけていると、いつも店を見ていて、小春の悪口を言いふらしている女性のほうから近寄ってきた。
「小春」
「みろく? どうしてここに」
「にゃ? 二人は知り合いなのかにゃ?」
「あ、はい。幼馴染みで……」
みろくと呼ばれた女性は、小春を鋭い目で睨みつけた。
「小春。あんたは卑怯ね」
「え?」
みろくは小春の足元にいる白菊を見下ろす。冷たい視線に、白菊は無意識の内に耳を垂らす。
「そんな猫を使って、人に媚びをを売るなんて、やり方が卑怯なのよ。そこまでして、人にきゃーきゃー言われたいわけ?」
「にゃ! 白菊はただの猫じゃなくて、立派な化け猫族の猫又ですにゃ!」
ただの猫と言われ、白菊は地団太を踏んで怒る。小春も渋い顔をして、みろくに文句を言う。
「白菊さんを悪く言わないで! 白菊さんは、私がお願いしてお店を手伝ってもらってるのよ」
「ふん。どうでもいいわよ。猫だろうが、化け猫だろうが」
みろくは小春に指を突き付ける。
「小春、あんたちょっと人気があるからって、ずいぶん調子にのっているようね。でも、あんたなんかよりあたしのほうが人気なんだから!」
「と、突然なんなの? 私、自分が人気だなんて思ってないわ。ただお店が好きで、お父さんとお母さんの手伝いをしたくて、やっているだけだもの」
「そういうところが、嫌いなのよ!」
みろくは叫んだ。小春はただただ困惑する。白菊も何も言えず、そばで様子を見守ることしかできない。
「あんたはいつもそう! いつだってあたしより優秀なくせに、自分は下だと思い込んでる。本当に気にくわない! あたしの店に来る客みんな『小春ちゃんのほうがいい』って言うのよ! あたしのなにが悪いのよ! あたしだって、一生懸命やってるわよ!」
「みろく……」
小春は戸惑いと悲しさで、なにも言えなくなる。
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