「それで、あの、手伝ってほしいことがあるんですけど、その……どんなことでもしてくださるのでしょうか?」


 お蘭は小春に、店のことを説明することにした。


「うちはそれぞれ得意分野をもつ猫又たちがおります。大工仕事を得意としている子に、速達の飛脚をやっている子。用心棒や剣術指南をしている子。そしてこの子は、接客を得意としている子でございます」

「白菊は、白菊目当てのお客さんがいるほど、実は人気なのですにゃ」


 胸を、えっへんと張る白菊。


「あいにく、今はこの子以外の子は出払っているのですが、お客様はどのようなお仕事を手伝ってほしいのでしょうか?」

「接客! 私が手伝ってほしいのは接客です!!」

「にゃ!?」


 突然、小春は白菊の小さな両手を握った。いきなりのことで驚いた白菊は、しっぽをぶわっとふくらませた。


「接客仕事が得意というのなら、お願いです! どうか力をお貸しくださいませ!」

「お客さん、少し落ち着きなさいな」


 お蘭はやんわりと、小春の手から白菊を解放させた。


「あ、はい。驚かせてすみません……」


 小春は申し訳なさそうに、二人に謝った。


「お客さんの様子からして、失礼だけどお店は繁盛していないのかい?」

「はい。お蘭さんのおっしゃる通り、今、うちの茶屋は人がほとんど、いえ、利用者がいないと言ってもいいくらい、人が来ません」

「どうしてだい? お客さんは美人画が描かれたことがあるだろう? お客さん目当てでくる人が、いるんじゃないのかい?」

「よく、わかりましたね……」


 美人画とは、主に女性の美しさを強調して描いた絵で、浮世絵を中心に発達したものである。美しい女性であれば、一般人でも描かれることがあった。小春はかつて、美人画を描いてもらったことがあり、それをお蘭は知っていた。

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