第25話

「……って、言われてたけど?」

「うっわ……」

本当に渋々嫌々というのが丸わかりなデラが、弟に慰められつつ教室を後にした後、一緒に畑の収穫をしながらヒロトがルネに話すと、あからさまに嫌な顔と声が返ってきた。

「幼児婚についてはヨーロッパでは捉え方が様々でさ……もちろんヒロトが思うように『あり得ない』っていう声もあったけど、『他国の宗教習慣に関して口を出すべきではない』っていう考え方もあったし、『だから邪神教は撲滅すべき』っていう人もいたし。移民してきても自分たちの考えや男尊女卑な育て方に対して批判を受けて俯瞰的視線を手に入れた人もいれば、『他人に自分たちの生き方、娘という所有財産をどう使おうが意見される覚えはない』って心を閉ざす人もいたし」

「ああ……そう言えば顔を隠す……あの、アラビアン・ナイトの衣装みたいなやつ?」

「ヒジャーブのこと?そうだね……あれに関しては『禁止してよかったのか?』とかも、完全な正解に辿り着くようには見えなかったからね~」

「アレって、目が凄い綺麗だよね」

「うん。すごい神秘的。そんなこと言ったら、十九世紀の女性なんて首元から足先まで全部ドレスで覆ってさ?足首すら見えないよう編み上げブーツを履いてたりさ?できるだけ肌を見せないようにってしてたぐらいだし。ご婦人って言われる人たちはヴェールで顔を隠してたし」

「……すごいよね」

「ニッポンだってすごいでしょ?オハグロ?奥さんマダムになったら皆…でしょ?」

「何?何?ニッポンって何?」

ダラダラとしゃべりながらジャガイモを掘り起こしていたら、チャムシィがヒョコッと参加してきた。

「なっ、何でもない!ちょっとガイコクの話……」

「ガイコク?!ガイコクって何?!」

「あ~……あの……えぇと……お、親父!そう!親父が持ってた本にその『ガイコク』っていうところがあって、そこに『ニッポン』っていうところがあって、すっごい不思議な風習があるとかないとか……えぇと~……忘れた!!」

「へぇ~~……不思議な風習……読みたいなぁ!」

デラやグラなら勉強に繋がる話かと思ってそこで切り上げてくれるのだが、相手が悪かった。

チャムシィはなんとかその『本』のことを聞き出そうと粘り、ヒロトはひたすら「忘れた」を繰り返さなければならなかった。




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