第3話
「はぁ……やっと着いたか」
俺は肩で息をしていた。お金もなかった為、移動は基本的に徒歩だ。休みなく歩き続けたのでそれなり以上に疲れた。
だが、その甲斐あってやっとの事目的地である『ギアナ平原』に到達したのだ。
俺はここでレベリングをする事にした。レベリングをし、スキルポイント(SP)を獲得する。そして、そのSPで魔法スキルを獲得するつもりなのだ。
やはり賢者の華は魔法だ。魔法を覚えていなければ賢者たりえない。今の俺では賢者失格だった。今の俺は賢者とは言えない。賢者もどきだ。
俺は物陰に隠れ、ターゲットを探す。目的のモンスターは一つだけだ。それ以外のモンスターだったら、今の俺では倒せない事だろう。
俺は必死に耐えた。待つより他にない。俺は機会を伺った。
「いた……あれだ」
ぴょん、ぴょん、ぴょん。
俺の目の前を一匹の兎が通過する。兎の名は『ラッキーラビッド』。このギアナ平原に生息している兎型のモンスターだ。
出現率こそ低いが、HPが低く倒しやすい。LV1の俺でも倒せるモンスターだ。その上に、取得できる金(ゴールド)と経験値(EXP)の割が良い。
ただ、注意しなければならない。HPや防御力こそ低いものの、敏捷性自体は高いのだ。LV1の俺の敏捷性では、逃げられたらアウトだ。決して追いつく事はできない事だろう。
チャンスは一度しかない。所持金もない、着のみ着のままで追い出されたんだ。当然のように装備を整えているような余裕などない。
俺は近くにあった手ごろな石を両手で持ちあげた。
ラッキーラビッドが向こう側を向いた瞬間を俺は狙った。完全に、俺の事が死角になっているのだ。
「はあああああああああああああああああああああ!」
俺は物陰から跳んだ。まだ気づいていない。勝った! 俺は歓喜する。
ゴン!
キュウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!
俺の一撃はラッキーラビッドに炸裂した。ラッキーラビッドは絶命する。
「やった! 倒したぞっ!」
俺は歓喜した。このゲーム世界。〈アルティメット・オンライン〉の世界に転移してから。賢者として二度目のプレイとしては初めて倒したモンスターだからだ。
幾度となくモンスターを倒してきたはずなのに、妙な新鮮味を俺は感じていた。
『経験値(EXP)を100取得しました。LVがUPしました』『取得ゴールドを100G入手しました』
機械的な音声が聞こえてくる。システムの音声だ。
「よし……レベルがあがったな。おまけにG(ゴールド)も手に入れたみたいだ」
俺はステータスウィンドウを開き、ステータスを確認する。
【アーサー】
職業:賢者
Lv :10
HP :100/100
MP :100/100
攻撃力:30
防御力:30
魔法力:50
素早さ:30
【魔法】
【スキル】
成長性鈍化※取得経験値に対するレベルアップ効率が低下する
ドロップ率減少※モンスターを倒した場合のアイテムドロップ率が減少する
取得金(ゴールド)減少※モンスターを倒した場合に取得できる資金が減少する
【所持金】
100G
ラッキーラビッドの経験値効率も資金稼ぎ効率は破格だった。それは俺のネガティブスキルを補って余りある程のものだ。
恐らくは本来だったら経験値(EXP)は150。G(ゴールド)も150程稼げていた事だろう。
だが、十分だ。これだけの経験値とGが稼げたら、大分戦略の幅は広がる。
『レベルアップに従い、スキルポイント(SP)を100獲得しました』
またもや、機械的な音声が聞こえてくる。
よし。これで俺は魔法スキルを習得する事ができる。やはり、賢者は魔法を覚えてこそだ。
俺はスキルウィンドウを開いた。SPを支払う事で習得できる、様々なスキルが並んでいる。俺はそこから、魔法スキルを選んで習得するつもりだ。
初級魔法がSP20か……ちょうど、5個の魔法を覚える事ができるな。
俺はそう思考した。悩んだ末に、5個の初級魔法を習得する。
『ファイアボール』※炎系の初級魔法。炎の弾を飛ばす攻撃。消費MP10。
『フロストアロー』※氷系の初級魔法。氷の矢を放つ攻撃。消費MP10。
『ライトニング』※雷系の初級魔法。雷を放つ。消費MP10。
『オフェンスバフ』※自己強化魔法。攻撃力が上がる。効果単体。消費MP10。
『ヒーリング』※初級回復魔法。回復魔法。HPを小回復する。効果単体。消費MP10。
以上の5つの魔法を俺は習得した。その為、残存SPは『0』になった。
すっからんだ。だがいい。SPはLVがあがるごとに習得できる、ポイントだ。今まではLVに上限があったから、習得しきれない魔法やスキルもあった。だが、今の俺にはLVの上限がない。LVを極限まで上げて、全ての魔法やスキルを覚える事すら可能だ。
「……さて、どうするか。魔法の試し打ちでもしてみたいところだけど」
俺は頭を悩ませていた。
――と、その時であった。
甲高い、剣の音が聞こえてきたのである。
「なんだ? ……この音は」
目に入ったのは、獰猛そうな一匹の巨大な狼と、そのモンスターと対峙している、一人の女の子の姿であった。
「……何をやってるんだ、あんなモンスターと一人で闘うなんて」
放っておけるわけもない。俺は急いで駆け付けるのであった。
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