みんなで楽しく遊びましょう①
その後、泥まみれのままカフェテリアに行きました(勿論、レミーエ嬢は馬車で家に帰しましたわ)。やはり両殿下に心配されましたが、わたくしは答えました。
「最近は泥をつかった美容法が流行っているそうですのよ」
えぇ、授業にもそのまま出てやりましたとも。
先生もびっくりして「帰った方がいいんじゃ?」と勧めてきましたわ。でも、わたくしは真摯に答えました。
「先生……わたくし、美肌になりたいんです」
そして放課後も――と言いたかったのですが、両殿下に「帰れ」と怒られてしまい……。
家に帰って、ついでに畑仕事を手伝い(当然、お父様にも泥美容をお話しましたわ!)、剣の素振りを百回ほどしてからお風呂に入り、久々にのんびりお母様の作った夕食を食べて(勿論お母様にも泥の以下略)、追試の勉強は神様と一緒にすればいいかなぁ、と。
『――で、今に至りますの』
『いや『今に至りますの』てドヤ顔で言うことじゃないのよね⁉ きみもひとまず帰ろうよ! せめて替えの服を借りるとかできなかったの?』
『そんなことより、足をお借りして宜しくて?』
『……はあ? なんで――』
わたくしが神様の足元に跪こうとすると、その怪訝そうな顔がとっさに慄く。
『あっ! もしかして昨日の賭けのやつ⁉︎ いいから! あんなの本当にやらないでいいから!』
『……ですが。両殿下は相変わらず良くしてくださいましたし。わたくしは勝負に負けたのですよ? 約束は守りませんと』
『いや! いい、むしろやめて‼︎ 自分の性癖がこれ以上歪むのは困るっ‼︎』
なんですかそれ。神様の性癖とかすごく興味ありますわ。でもお尋ねしたところで、応えてくれる気がしませんけども。
だって神様。すごく退屈なことを仰るんですもの。
『じゃあさ、自分の質問に答えてよ! ね? なんで服を借りずに泥まみれのままでいたの? ほら、自分知りたいなー。ルルーシェちゃんが何でずっと泥まみれのままだったか、すごく理由が気になるなー』
もう。ルルーシェちゃんなんて呼ばれましても……何も出ませんわよ。だってその質問。両殿下から何度も訊かれたんですから。神様もご存知でしょうにね。
『だって、それじゃあつまらないじゃないですか』
『つまるつまらないの問題じゃないよね! 一日中泥まみれでいるって、きみは本当に令嬢なの?』
『お褒めいただき光栄ですわ』
『褒めてないから!』
あーあ。神様が今日もまた興奮されてますわ。そんなに叫ぶと、喉が痛くなってしまいますわよ?
いつも淹れていただいているので、今日はわたくしがお茶を淹れましょう。せめてもの御奉仕です。今日のお茶は特別ですのよ?
『ほら神様。こちらをどうぞ。先日殿下が大量に寄越したお見舞い品の中にございましたの』
『……きみ、このお茶の原料を知っているの?』
『えぇ、勿論! 東洋で栽培されているというゴボウという木の根らしいですわ。泥に塗れた状態で出荷されるらしく――』
『やっぱり泥かよ⁉』
けっこう根に持っているよね、とかなんとか叫ばれますが……当たり前じゃないですか。好き好んで泥まみれになりたい女がいると思って? 勿論、農作業をした後の勲章は別ですわよ。
あと、当然ゴボウに恨みはございません。調べた所、繊維が豊富で本当に美容に良いらしいんですの。少々えぐみといいますか、独特な風味がするんですけどね。それでも身体に良いのなら、喜んで頂戴しますわ。
わたくしがしずしず飲みますと、神様もため息を吐きながら飲み干します。ふふ、いい飲みっぷりですこと。そんな神様はわたくしに半眼を向けてくる。
『それで……きみは本当にあんなおねだりで良かったの?』
『もしや、それはザフィルド殿下に頼んだ追試のご褒美のことですか?』
『他に何があるというのさ?』
きっと神様は、もっとドレスとかアクセサリーとかご馳走をねだれと言いたいのでしょうね。でも、わたくしの答えは決まっております。
『勿論ですわ!』
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