第7話 ボランティア活動[2]
日曜日、ボランティア活動に向かうために学校へ向かう車になぜか貝谷も乗りこんでいた。
「貝谷、どうして付いてきているんだ?これ、学校の活動なんだけど。」
「ふっ、灯火様、愚問ですね。私はあなたのメイドなのですから、いつ、いかなる時でもお仕えしているのが当たり前なのです。その程度のことも分からないのですか?」
灯火の疑問を貝谷は鼻で笑い飛ばし、再び辛らつな言葉をぶつける。
「ねぇ、今、鼻で笑ったよね。それに、この間は僕から給料はもらっていないから主人じゃないって言っていたよね?変わり身早すぎじゃない?」
しかし、彼女はそれに答えない。
「ねぇ、無視?ついに無視?もう泣いちゃうよ!」
貝谷は都合の悪いことは答えない主義の女であった。
灯火が高校に着き、待ち合わせ場所に向かうと、どこかで聞いたことあるセリフが聞こえてきた。
「あの、お二人とも、どうしてここにいるんですか?今日は先輩と二人きりのはずなのに。」
「あら、目黒さん。私たちは地域の住人の方たちが少しでも気持ちよく過ごせるようにボランティアをやろうと思っただけよ。何も問題はないわ。」
「そうだよ、ゆりちゃん。別に私たちは二人だけでボランティアに行くことを聞いたわけじゃないから。」
優里亜はてっきり今日こそ灯火と二人だけで過ごせると思っていたが、華怜と椎名の二人も来ていたのだ。優里亜の指摘に対して華怜はうまくごまかすものの、椎名は自らの発言で墓穴を掘ったことに気づいていない。
「やっぱり、私と先輩の時間を邪魔しに来たんじゃないですか!せっかく勇気を出して先輩を誘ったのに、ぐすっ、ふぇーん。」
「ちょっと、木武さん!彼女泣き出しちゃったじゃないの、どうしてあなたは嘘の一つもまともに付けないの、この脳なし!」
「ちょっと、あたしのせいにしないでよ!それよりもどうしよう、ゆりちゃん泣き止んでよ。」
優里亜が泣き出してしまい、それに動揺する華怜と椎名。現場はカオス以外の何物でもなかった。その現場を遠目に見ている灯火は現実逃避をしてしまい、変な言葉しか出てこなかった。
「なんというカオス、そしてデジャブ。」
「灯火様、アホな現実逃避をしていないで、さっさと事態を収拾してください。」
「あっ、はい。」
貝谷に強制的に現実に戻された灯火は目の前の現状を何とかするのであった。
「ちょっとみんな、ストップ、ストーップ!とにかく、優里亜は泣き止んで、それから二人は言い争いをやめて。」
「先輩?」
「灯火君?」
「灯火?」
三人は灯火の出現により、一斉に目を向ける。今まで言い争っていたり、泣いていたりだったカオスな状況も、灯火がやってきたため何とか収まった。いや、収まったというよりは別のことに興味が移ったのだろう。三人の目線が灯火の後ろにいる貝谷に集まる。
「せ、先輩、その人は誰なんですか?今日は私と一緒にボランティアに行ってくれるんじゃなかったんですか?」
「ああ、僕一人で行く予定だったんだけど、彼女がどうしても一緒に来たいって聞かなくて。」
灯火がそんな説明を彼女たちにすると三人に分からないくらいの速さで一瞬、灯火をにらみつける。しかし、ここが彼女の優秀なところで、外面だけは完璧なのだ。貝谷は峰鷹家に仕えるメイドとしてふさわしい、挨拶を行う。
「申し遅れました。私、灯火様に仕えている峰鷹家のメイドである貝谷 林檎と申します。いつも灯火様がお世話になっております。私のことは貝谷とお呼びください。それと、私はメイドとして灯火様に仕えているため、常に付き従うのは当然のことです。」
貝谷は最後の部分を特に強調しながら自らの自己紹介を行う。すると、椎名は灯火にジト目を向け始める。
「へーっ、灯火君こんなかわいいメイドさんに毎日ご奉仕してもらっているのね。きっと鼻の下を伸ばしながらメイドさんの着替えでも覗いているんでしょう?覗きをするなら男子更衣室がおすすめよ、あなたの好みでしょ?」
「だから僕をBL展開に持っていこうとするなー!」
周りの四人から灯火はジト目にさらされるのであった。
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