第23話 武器作成

 ハデス帝国を攻略後、黒の結晶を入手した。

 黒の結晶は、属性武器の生成に使用出来る貴重アイテムだ。

 ホーム拠点で鍛治室を拡張後、武器作成で指定レシピがあれば、武器を作成出来る。


『鍛治室』

 今回作成する武器は、“黒纏の弓”。

 それを作成するのに必要な素材をテーブルの上に広げる。

 黒の結晶。

 精霊樹の枝。

 金塊。

 木の楔。

 これらのアイテムは、それぞれ性質が似ている(補える)素材になっている。

 黒の結晶は、空気中のマナ(装備者の魔力)を吸収する事で、黒属性の魔力を生成する魔法具。

 これを素材に合成する事で、その武器に黒属性を付与出来る。

 精霊樹の枝は、魔力を吸収する事で素材の強度が高まるアイテム。

 金塊は、魔力を留める性質があるアイテム。

 これらを組み合わせることで、“黒纏の弓”が作成出来る。

 自身の魔力を弓に注ぐと、魔力の矢が生成されて魔力が持つ限り何度でも矢を放つ事が出来る武器だ。

 木の楔に関しては、弓の形を整える時だけに使う素材だ。


「本当なら、剣で作成したかったけど、現状だと熟練度が低いからな...」


 欲しいのは、黒纏の剣。

 だが、現状は種族進化(レースエヴォリューション)をしたばかりで、剣術のスキルが低い。


「でも、この“黒纏の弓”が出来れば、戦力UP間違い無しだし、数が限定されている矢で、もう悩む必要は無くなるからね!」


 弓術に関しては、メインで使用している事もあって、スキルが高くなっている。

 実用性を考えれば、必然的にこちらを優先する事になる。


「じゃあ、早速作り始めるかな?」


 先ずは、精霊樹の枝を三本に分ける。

 それら三本を加工して、それぞれに違う特性を持たせるのだ。

 弓の内側になる一本目は、形を整えた後に火で炙る。

 焼いて固める事で、弓にした時に、精霊樹の枝が縮もうとする力を高める為だ。

 中の部分となる二本目は、削ってひたすら真っ直ぐにする。

 内側と外側を繋げる部分の為に。

 そして、外側になる三本目は、弓として伸びる力やしなやかさが必要になるので、内側のパーツより若干長目のサイズを用意する。

 切り分けて加工が終わったところで、全部黒塗りに色を変える。

 そして、色が定着させるまで乾燥をさせて置く。


「ふー。ここまでは、順調に出来たかな」


 一つずつ丁寧に仕上げた。

 だが、その分時間も労力も掛かっている。


「これが乾いたら、弓の作成だな」


 通常、弓は五つの曲線で構成される。

 小反、大腰、胴、鳥打、姫反。

 これらは直線部分が一つも無く、三つのパーツを合わせる事でそれぞれが持つ反発力の強弱だけで曲線が生み出される。

 その組み合わせる際に、弓の部分の反りや厚みが一ミリ変わるだけで、弓を引く力が何キロも変動してしまうから。

 だが、今回作成する“黒纏の弓”は、弦を張らないので正直、形はどうでも良いのだ。

 しかし僕は、自分が使うものに対しては、拘りを持ちたい性格だ。

 弦を張ったとしても、最高の状態で使えるように作成をしたい。


「よし!乾燥も終わった!じゃあ、仕上げて行くかな!」


 三つのパーツを、丁寧に糊付けして組み合わせる。

 その際、組み合わせたパーツを、紐でボンレスハムのようにグルグル巻きにして固定する。

 そして、糊が固まる前に、紐の部分に木の楔を打ち込んで、力で無理矢理、弓の曲線を作って行くのだ。

 木の楔を、百本以上も使用して。

 その木の楔を打ち込まれた姿は、龍のようで今にも動き出しそうな躍動感がある。


「この曲線作りの工程は、芸術だよな」


 歴代の弓作りの職人が生み出した技は、まさに芸術だ。

 僕は、それを真似たに過ぎないのだが、我ながら上手に出来ていると思う。

 そして、弓の糊付けが乾燥されて固定される間に、装飾部分を作成して行く。

 両端の小反と姫反の部分に装飾を施し、中央の胴の部分に黒の結晶を接着出来るように加工して行く。

 胴の部分の装飾は、黒の結晶と金塊を加工する。

 黒の結晶は、加工前の状態では、歪な形をしている為、ダイヤモンドのように繊細な加工を施して、魔力の収束率を高める。

 金塊は、黒の結晶に合わせて加工するだけだ。

 小反と姫反の部分は、全体のバランスに合わせて、程良い装飾となるように金を加工して行く。

 この中で大変だったのは、黒の結晶の加工だ。

 ステータスのおかげで、結晶を切り取って行く作業で、力や器用さには困る事は無かったが、魔力の収束率が重要となるので、その加工の細かさに、途轍もない時間が掛かってしまったのだ。


「もう、一日近く作業しているな...だが、後は組み合わせるだけだ!」


 今日は、毎日の魂位上げの一環で、簡単な討伐依頼をこなしただけで、後は、この武器作成に掛かりきりだった。

 だけど、ようやく最終段階。

 乾燥した弓に装飾を取り付けるだけ。

 此処まで大変だったが、無事に“黒纏の弓”が完成した。


「“黒纏の弓”、完成だ!!」


 最後に武器の品質を確かめるように、トレーニング室に行って弓矢を試し射ちする。

 魔力変換効率、強度、使い易さ。

 どれも、今までの弓よりも高い性能を誇っていた。

 最高品質ってやつだ。


「これで、目指している最強に近付くぞ!!」

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