インペラトール級
インペラトール級はボロディノ級に続いて計画されたロシアの戦艦だ。
鯉之助によって史実より三年も早くドレッドノートが建造されたため対抗上するべく慌ててロシアが建造を計画した新型戦艦だ。
ゲオルギーの指導もあり、わずか三年で就役に至った。
勿論、ロシア単独で建造したわけではなかった。
国民生産力は日本の倍もあるが工業技術力、特に艦艇建造技術に関して日本よりも劣っているロシアで全て国内で製造して短期間で完成させることなど不可能だった。
そこでゲオルギーはロシアの伝統に則り外国に、この新型艦の建造を依頼した。
ロシアの要望にフランスとドイツが手を上げ各国二隻ずつ、そして技術の向上のためにロシア国内で一隻が建造された。
フランスとドイツが新型戦艦建造を受け入れたのは彼らもイギリスが開発したドレッドノート級に対抗するためだ。
建造中からイギリスの新型戦艦ドレッドノートに関しては各国が注目しており、予想されるその攻撃力に各国海軍は危機感を抱いていた。
イギリスに対抗するためにも、ドレッドノート級に匹敵する新型戦艦の建造は各国ともに喫緊の課題だった。
特に英国のライバルであり、何かと対抗する事が多い、フランスとドイツの危機感は大きかった。
そこへロシアが建造を申し入れてきたことは独仏両国にとって渡りに船だった。
自国海軍用、弩級戦艦を建造する前に習作として建造できるのは技術の集積として非常に好ましい。
両国はロシアの提案を受け入れ建造を開始した。
勿論、早急に契約がまとまったのは、ゲオルギーの水面下での交渉もあり計画実行への大きな助力となった。
建造は順調に進んでいたがどうしても新型機関、蒸気タービンを手に入れることが出来なかった。
開発されたばかりの蒸気タービン特に大型船舶用の大型蒸気タービンがイギリス以外で製造されたことがなかったためだ。
試作型はあったがさすがに国の主戦力となる戦艦にいつ故障するかわからない代物を、交換が不可能に近い機関に採用することは、いくら新しい物好きで杜撰さで定評のあるロシアでもできなかった。
そのため従来のレシプロ蒸気機関を搭載して代用することになった。
代わりに従来の標準戦艦の倍、四軸を採用し速力は二〇ノットに迫った。
装甲もドイツのクルップ社製の装甲板――皮肉にも三笠と同じ装甲板を使うことで軽量化に成功。
船体の大型化にも成功し砲塔を従来の倍、連装四基に倍増させドレッドノート級、皇海級に匹敵する攻撃力も与えられた。
インペラトール級の詳細が日本に伝わったのは開戦前であり事実を知ったのは開戦後だった。
真実を知った日本海軍は慌てた。
だがもはや戦争は始まっており戦うしかなかった。
また建造されていたのがフランスドイツだったため戦争中に完成したとしても中立国の義務としてロシアに武器を引き渡すことができない。
国内建造中の一隻はロシア特有の事情、技術の未熟さ、労務管理の杜撰さにより遅延。
重量管理も出来ておらず、技術不足により各部品の重量が増大。
排水量が増えており、改修のために、非常に時間がかかることは明らかだった。
そのため、インペラトール級全艦の日露戦争中にロシア海軍が戦力化することは不可能と考えていた。
だがロシアは裏の手を使った。
「まさか通常の船舶として独仏両国が売却するとは思わなかった」
「非武装の状態でロシアに引き渡すとは考えたな」
開戦によりインペラトーレル級の人が難しくなったロシアは裏技として未完成状態でロシア国内に輸入することを思いついた。
非武装の状態つまり通常の船舶としてなら輸入しても問題ないと強弁して輸入を強行した。
ロシア国内に着くとあらかじめ用意されていた武装を搭載し戦力化した。
完成したインペラトール級はロシアで建造され工事が長引いている一隻を除いてバルチック艦隊に編入され日本に向かっていた。
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