第6話
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藤堂家から出て、宇来と朝樹が並んで歩いてすぐに、ドラッグストアがある、宇来は生活品を購入しようと、帰りに寄る事を決めていたので、朝樹に寄ることを言う。
「朝樹さん、ちょっとココ寄っていいですか?」
「あ、ああ、いいよ、オレは外で待っていればいいのかな?」
「すみません、すぐに買ってくるので...」
そう言って、宇来は店舗に入っていった。
暫く外で待っていると、朝樹のスマホに着信があった。 幼なじみの 吉田 流(よしだ ながれ) である。
「もしもし?」
『もしもし 朝樹?今いいか?』
「ああ いいぞ」
『あのな、近いうちに合コンやりたいんで、集まってくんない?』
「先月やったばっかだろ? それなのにもうやるんだ」
『まあまあ、先月のヤツは、イマイチの女子だったろ? 今回は、美形を揃えたんだ、だから来いよ』
「やっぱ顔かお前は」
『そりゃそうだろ? 第一印象だ』
「先回の女の子たちには。済まないと思ってないのか?」
『まあまあ、そう堅い事言うなよ、先回は先回、今回は良いぞ~、写真送ろうか?』
「イヤ いい」
『なんでだ?』
一呼吸おいてから。
「行く気が無いからだな」
『おいおい!お前が来てくれなくっちゃ~、イケメンキングが...』
「そんなの知らん!」
朝樹の方から電話を切った。
(ったく!何て奴だ。人は良いのに、女の事となると、全く性格が変わるんだから、困ったもんだ)
そう思っていると、店から宇来が出てきて。
「ごめんなさい、遅かったでしょ?」
「い、いや、いいから」
変に焦っているのを、勘づかれてしまった朝樹は、話をすり替えた。
「さ、行こうか」
「はい」
また歩き出す、とは言っても、道のりは、ほんの少しだ。
「何か電話していたみたいですね、レジ待ちしている時に、店内から見えましたよ」
「そ、そうか?... うん、学生時代からの親友からだったんだ」
(まずい! また話が元に...)
「って、着いちゃいましたね」
ホッとする朝樹。
「じゃあ、ゆっくり休んで。また明日迎えに来るから」
「はい、おやすみなさい」
そう言って、宇来は部屋に入って行った。
(ま、どちらにしても、合コン 行かないからいいだけど)
独り言を言って、家路に着く朝樹だった。
△
「は~びっくりした。 朝樹さんったら、女の子なんて言う事、電話で言っていたから、ビックリした~」
朝樹に送ってもらって、アパートのドアを閉めたとたん、ヘナヘナと座り込んで、呟いてしまっていた。
ドラッグストアから出ても、少しだけ話声が聞こえてしまったからだった。
(でも、あんなにカッコいいんだから、女の人なんて、切れた事無いんだろうな~、私の事どう思ってくれているんだろ?)
少し落ち込む 宇来。
「さあ、風呂入って寝よ。ポンコツはポンコツなりに、綺麗にしてやらなきゃね」
自分を励ましつつ、風呂場に向かい、今日一日の疲れを、ゆっくりと湯船に浸かり、癒した。
「はぁ....、結婚したい....」
何となくそんな言葉を口にしている自分がいた。
その時、ふっと…、朝樹の顔が浮かんだ........。
「....?」
◇
「愛美ちゃんって彼氏いるの?」
「あ、あの...」
4月が過ぎ、GWをも過ぎた時期なった。
結構事務作業にも慣れてきた宇来だが、隣にいる同期の愛美には、相変わらずちょくちょく未だに男子が言い寄ってきている。
またまた昼食中の愛美に、若い男子事務員が迫っている。 困った表情をする愛美。 その様子を隣で見ていた宇来が、見ていられずに、男子事務員に意見した。
「あの、愛美さんが困ってるんで、そこそこにしてあげてくれませんか?」
いままで言い寄っていた男子事務員が、宇来をまじまじと見て。
「あれ~、カワイイ女子に嫉妬かな~、普通女子さん。 いいから、隣で大人しくしてなさい」
「でも...」
「いいのいいの、そっちには一切迷惑かけないからさ」
その後も愛美にしつこく言い寄っている男子事務員に、遠くから戒めの言葉が大声で聞こえた。
「こら~!! そこ! 新人を誑(たぶら)かすな!」
その声を聴いた男子事務員が、怯えながら声の方を向く。
「わ~、咲彩さん!」
「こら!カワイイ後輩に手を出すんじゃない!、ほれ、戻りな!」
そう言われて、男子事務員が、すごすごと、自分の事務部屋に戻って行った。
所謂(いわゆる)、鶴の....である。
「怖かったか? 愛美ちゃん。 もう、オオカミは追い払ったからな」
「はい、ありがとうございます。 助かりました」
困り弱った表情で、お礼をする愛美。 それを見ていた、宇来にも礼を言う愛美。
「宇来ちゃんもありがとう。 言いにくいのに、言ってくれて、しかも、罵倒じみたことまで言われて、ごめんなさいね」
「いいって。 私、愛美ちゃんと咲彩さんに比べたら、ロースペックなんで、しかも、学生の時から言われていますから、気にしないんですよ」
「「えっ?!」」(愛美 咲彩)
「ええ??」(宇来)
「ちょっと何言ってるの? 宇来ちゃん」
「なにがですか?」
「そうですよ、宇来ちゃん」
何故か、だんだん呼び方が自然と変わって来た2人。
「ロースペックって、世の中の男子、目が節穴か?」
「???」(宇来)
「な~に不思議がってるんだ、宇来ちゃん、私、何か可笑(おか)しい事でも言ったかな?」
「私は、底辺の何処にでもいる、ロースペックな女子なんですよ」
少し間を置いて、咲彩が言った。
「あはは、自分の事を知ってないんだ、宇来は」
とうとう咲彩は宇来の事を呼び捨てになった。
「お前はもっと、自信を持て、しかも、ちょっと弄れば、愛美と並ぶ程の美人だぞ」
うんうんと頷く愛美。
それに対し、不思議そうに首を傾げる、宇来。
「ホント、分かって無いんだね~、宇来ちゃんは。 ホントは美人さんなんだよ~」
「あはは、二人して、からかわないで、本気にしちゃうから」
「本気にしていいから、宇来ちゃん」
本気にしない宇来に、咲彩が命令する。
「よし!今日、業務終了の5時から、女子ロッカールームに集合!いいかな? お二人さん」
「はい」
「はい?...、あ、はい」
(ニシシシ.....)と、不敵に笑む咲彩。
どうやら、咲彩は作戦があるようだ。
◇
夕方5時になると、咲彩が宇来たちに近寄って来て、集合を掛けた。
「よし!、業務は終わりだな。 じゃ、行こうか二人とも」
そう言って、二人を連れて、ロッカールームに連れて行った。 その途中、咲彩がスマホを取り出し、誰かに連絡をしていた。
部屋に入ると宇来を椅子に座らせて、咲彩が持って来たメイク道具を開け、カチューシャで、髪を止め、ニヤリとして、宇来の顔を弄り出した。
「あの...」
「ん? なんだ? 宇来」
「私5時半くらいに藤堂さんが待ってるんですが...」
「毎日送迎してもらっているんだろ?、それは知っているが、何か?」
咲彩はまた不敵な笑みをして、宇来に訊いた。
「もしかして、朝樹くんと付き合っているのか?」
「宇来ちゃん、いつ藤堂さんとお付き合いし始めたんですか?」
愛美も聞く。
「あ!違います。 そう言うのじゃなくって、私は藤堂家の人達と、親交があるんです、しかも朝樹さんの家と、私のアパートがすごく近くって、女の子一人だから、暫く送ってくれる事に、家族会議で決められたんです」
「うわ~いいな~、藤堂さん、カッコいいでしょ?」
「う~ん、私にはもったいないかな。お互いのスペックの違いが、歴然だから」
宇来のメイクをしながら、咲彩が、不敵な笑みから、また ウシシ という顔になった。
「じきに仕上がるから、今日この後の朝樹くんのリアクションを明日教えるんだよ、分かった?」
「え~.....と、はい」
「いいな~宇来ちゃん、帰りに 逆告したら?」
「それ成功するかも?」
二人が宇来の気持ちを置いたまま、はしゃぐ。
「私は旦那が居るし、愛美も彼氏が居るんだろ? ほれ、そのリング」
咲彩が 愛美の左手の薬指を見て、言った。
「あ、バレてました? はい、大学からの彼氏です。多分、結婚する予定です」
「だったら、昼間のあの男子事務員にハッキリ言ってやれ、私はもう ソールドアウトですって」
「はい!そうします」
ちょっとだけ3人で笑った。
・・・
5時半に近づいた時
「よし!おわった。 さあ、自分を見てみな、宇来」
そう言って、手鏡を渡された。 自分を見て、宇来が
「あの、どちら様ですか?」
と、すっとぼけた声を出した。
咲彩が ニヤリ としながら
「宇来 自分だ。 ど~だ? ふふふ....」
まじまじと見ていた愛美も
「宇来ちゃん、奇麗、メッチャカワイイ、凄い!咲彩さん」
ドヤ顔の咲彩が
「早く帰れ。 朝樹くんに早く見せてやれ。他のヤツらに見られるなよ~、ウシシ」
「はい、ありがとうございました、お先に失礼します」
「頑張ってね 宇来ちゃん、ばいば~い」
「うん、また明日ね、ばいばい」
そう言うと、バッグを持ち、廊下に出る前に、そ~っと人が居ないか良く見て、居ない事を確認してから、そそくさっとエントランスから出て、駐車場に急いで行った。
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