第10話
10
叶が貴に懇願までして頼み込んできた事と言うのは。
「あの柔道部のキャプテン、何度話しても分かってくれないの、だから、だからあなたにお願いしたいの」
このまま断り続けて、限界を超え、逆上されて、暴力を振るわれたらと思うと、最近では告白られる度、いや、会話ですらする度に、恐怖感に苛まれる事も感じ始めていた。
そこで、叶から貴への依頼となったのだ。
その内容とは。
「あなたって、テコンドーやってたでしょ? しかもその有段者って事も知っているわ」
「!!........」
(何で知ってるんだ。家族以外に誰とも喋った事が無いのに)
「うふふ....、何でって顔してるわね」
「ぐ!....」
(コ....、コイツ....)
「まあいいわ。 実はね、私のお爺ちゃん、貴クンの通っていた道場の師範だったの。 だから、あなたの成績も知ってるから」
「誰にも言わないでくれって、師範には頼んでおいたのに....」
「それは仕方無いわ、だって、わたし孫だもん。....で、3段なんだってね、凄いってお爺ちゃんが当時褒めていたのを覚えているわ」
「でも、いくら擬似とはいえ、オレに依頼するのは間違いだぞ」
「どう言う事?」
「もし、ヤツの柔道とオレのテコンドーで対決させたら、間違いなくテコンドーの方が不利だ」
貴のこの言葉に、自信をもって言い返す 叶。
「お爺ちゃん、あなたの事、凄く目(動体視力)がズバ抜けて言いって、褒めていたのも知ってるわ」
(そんな事まで喋っちゃったのかぁ、師範....)
「でも、ま、そうなっても、オレはやられちゃうと思うけどな」
(やっぱりこの人は、冷静で正しい考えを持つ人だ)
と、最初から 叶 が思って居た事を、貴も思っていた事に、この人に依頼して正解だったと、改めて思った。
「やられっ放しってのがカッコ悪いかもしれないけど、そんな事で争うってのは、スピリッツを軽んじているからな、出来ないな。だから、オレは手は出さないと思うな、たとえ、やられても....」
叶が少しの間、黙って 貴 を見つめて、改めて言った。
「やっぱりあなたでないと、この依頼はムリだわ。だから、わたし、土下座でもするから、改めてお願いします」
そう言って、叶が跪き始めようとすると、貴がそれを止めた。
「ま、待ってくれ。女にそんな事をさせる訳にはいかない。だから、期間付きで了承するから。それならいいよな」
こう言う成り立ちから、貴と叶の“擬似交際”は始まったのであった。
* * *
その後、叶に恋人が出来たという事を知った柔道部キャプテンからは、意外にも何事も起こらず、潔く叶を諦めたのだった。
そもそも、叶がそのような事を依頼したのは、恋愛なんてしている場合じゃない、と言う、大学受験に集中したいと言う、単純な理由だったのを、周りは知らずに、そのまま卒業していったのは、叶 以外は当然だが、知る由も無かった。
後日談として。
(あ~あ、あんな良い男、本当に付き合っておけばよかったな~....)
と、叶が後悔したのは、葉桜になった時期の話だ。
□
「そっかぁ~、そうだったんだ」
一通りの説明を終わった貴に、瑠美奈が何処かホッとした表情を見せた。
「まあな。 だから、ルミは一切 叶との事、気にすることは無い。確かに
下校時に手は握ったが、それ以上は無いからな。安心してくれ」
「タカシ、私は分かってるから」
「どゆこと?」
瑠美奈の“分かってる”の意味がイマイチ分からない貴。
「だぁってぇ~....、わたしとの初キスも、初エッチも、ぜぇんぜん、不慣れだったもん。 あ、こりゃ“新品だな”って、確信したもん」
(あ、そう言う事か。それにしても)
「新品って言うな~!!」
「えへへ....、でも嬉しいな、タカシって、私の事、その時でも思っててくれたんだから。こりゃ残りの人生、タカシに尽くすしかないな」
「そうお堅く考えるなよ。 ルミとは、モモと一緒に中学の時からの人付き合いだったからな。ま、正式に付き合ったのは、大学に入ってからだけど」
当時の告白の事を思いだしながら。
「告られた時は、本当にうれしかったよ。 タカシの彼女になるのが当時から第一の希望だったから」
「じゃオレも、中学から一途に思って居てくれるこんなカワイイ女の子を、これからは大事にしようと思う」
「うふふ、ありがとう、タカシ」
「それに “オレと結婚する人は” ルミしか居ないって思って居るからな。ソコ、大事だぞ」
「了解です。だ~りん」
こんなやり取りだが、この二人はこれからも、この調子でやって行くのだと思う。
あとがき
この小説をお読み下さって頂いた方々、ありがとうございます。
全くもって、思い付きで書き込んでしまった内容なので、辻褄があわないところが 多々あるかと思いますが、いつもの様に、ゆるり と、勘弁してやってください。
最後までお付き合い下さり、ありがとうございました。
雅也
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