第6話


                  6


「おにいちゃ....、何で知ってるの?」


 やはりと思う貴だった。

「瑠美奈も知ってたんだろ?」

「........」

「そうか、知っていたんだな。ま、当然か、友達だからな」

 俯いたまま、返事が出来ない桃菜。 それでも貴は続けてくる。


「別に彼氏が出来ても良い。 だが、本末転倒では、父さん母さんに申し訳ないだろう? 学費も全額出してもらっているんだし、そこの所だけ分かってくれて、普段のお前に戻ってくれれば、その....なんだ、 彼氏との事は認めてやる」


「お兄ちゃんに、彼の事をとやかく言われる事はないから」

「その彼氏の事で、学業が疎かになって居るのは、明白じゃないか。それを言ってるんだ」

「分かってる。分かってるから、そんな風に 彼の事を言わないで」

「オレは別に、お前とその彼氏の事を反対している訳では無いんだぞ。そこを間違えるな」

 兄に彼氏の事を否定されて無い事に、安堵する桃菜。


「そうなんだ。ごめんね、勘違いしてた。お兄ちゃん」

「おう」

 分かってくれたと思い、兄も安堵した。


 暫く兄妹のやり取りを見ていて、自分にも当てハマる事案があったため、この二人の言動を真剣に見入っていた。

 それを見逃さなかった貴は、瑠美奈の所作にわずかに違和感を感じ、質問をしてみた。


「瑠美奈。何か心当たりでもあるのか?」

 さすがに数年、この家に通っている事とあって、貴の目は誤魔化せない。その事を知ってか、更に貴が話かけてきた。


「もしかして、瑠美奈にも彼氏が出来たのか?」


 この貴の言葉に、瑠美奈の何かが、“ピーン”となった。

まさか自分に振っては来ないだろと思っていた瑠美奈は、若干の挙動に不自然があった。


「そんな、まさか、私に彼氏なんて居るわけないよ....」

 言葉の後半は、小声になってしまった。


「なにキョドっているんだ?....、はっは~ん、居るのか....、もしくは好きな男でも出来たか?」

 追及してくる貴の言動に、瑠美奈はただ黙っていた。 だが、そこへ隣から助言があった。

「お兄ちゃん、瑠美奈には彼氏は居ないのは事実だよ、でも....」

 でも、という事はそれ以外に男と言う関係が自分以外に出来たと言う事なのかと、貴は勘繰った。


「ただね、最近って言うか、瑠美奈に言い寄ってきている同年の男子が居るの」

「ももなぁ~....」

「瑠美奈はちょっと黙ってて」


 少々立腹気味の桃菜が、何に腹を立てているのか全く分からない貴だった。


「あのねお兄ちゃん。いい加減に瑠美奈の事、分かってやってよ!!」

「ちょ、ちょっと、モモってば....」

 桃菜の言動を制御しようと手で抑制しようとする瑠美奈。だが、それを軽く払いのけ、更に桃菜は続けた。


「いい加減分かってやれ! バカお兄ぃ!!」


 この桃菜の言葉に、貴と瑠美奈は、お互いが違う感情で、一驚した。 その反動で、瑠美奈の頬がピンクに染まった。

「この瑠美奈の表情から、何か感じないの? 鈍お兄!」


(そんなん、とっくに知ってるわ! 随分と前から、オレを好いてくれている事くらい)

 そう思った貴だが、それを口には出さなかった。


「瑠美奈。こうなったらもうココで、コクっちゃいな」

(おいおい! オレの気持ちは置いてけぼりかよ)

と、心の中で、桃菜にツッコミを入れた。

 瑠美奈の方を見ると、普段からは見た事も無い表情で、俯いたままだ。


(コイツ、こんなに可愛かったのか?)

と、今までなかった表情に、貴は瑠美奈に対して、初めての“女”と言う感情を抱いてしまった瞬間だった。





            □





 この小説をお読み下さっている方々、ありがとうございます。



 時々、辻褄が合わない内容になってしまっている事を、お詫び申し上げます。


 結構見直してはいるんですが、誤字などと共に、おかしい事に気が付くのが遅れて申し訳ありません。


 早速、その個所を修正させていただきました。

 

 まだ気が付かないところがあるとは思いますが、許してやってください。





 なお、この小説は “おまけの話”を入れて、全11話ですので、寛大な心でお読み続けてくださると、嬉しいです。



 本当に来ていただいて、ありがとうございます。





    雅也





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