WB LIE Ⅱ-Ⅶ

 黒川さんが祝賀パーティーに向かった後、僕は持っていた文庫本を見てみた。しかし、文庫本は何処にも見当たらなかった。黒川さんが過去を変えた為、小説家にはならなかったからだろう。


 翌日黒川さんが訪ねて来た。綾さんと合作で連載マンガがスタートする事や多くの人たちに囲まれて現在は過ごしているなど嬉しそうに話していた。


「嬉しそうな黒川さんの顔が見る事が出来て我々も嬉しいです。お力になれて何よりです」

「所長さん、お世話になりました」

「それでは最後に黒川さんに質問があります」


 この質問が終われば今回の依頼は終了になる。初めての実地業務でオタオタしてばかりだったが、1人の人生が生まれ変わる瞬間に立ち会う事が出来て感動している。人の嬉しそうな顔を見るのは楽しい。


「では、黒川美鈴さん。あなたはウソによる後悔を解消する事は出来ましたか?」

「……はい。後悔を解消するばかりか私は自分自身の変化を感じる事が出来ました。綾ちゃんを救う事はもとより、とても有意義な時間を過ごす事が出来たと思います。ありがとうございました」

「良かったです。ではこれにて依頼完了となります。我々は元の場所に戻る事になります」


 これで黒川さんとはお別れだ。もう会う事はないかもしれない。ただマンガを通して2人の存在を感じる事は出来るだろうと思った。


「黒川さん、マンガ楽しみにしています。お元気で!」

「じゃ、またね! 綾さんとケンカしちゃダメだぞー」

「ありがとう。さようなら!」


 黒川さんは事務所を後にする。扉を開けるその姿はとても輝いて見えた。自信を持っている人の姿だった。今回の件に関われて本当に良かったと思った。

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