自販機彼女と逮捕
森川さんと遊園地から戻った、次の日。
目を覚ますと彼女の姿は部屋になかった。
普段ならば朝イチから森川さんがいるのだが、今日はどうしたのだろうか。
気になった俺は、ケータイに登録されている森川さんの連絡先に電話を掛けてみる。
『おかけになった電話番号は現在使われておりません。』
あれ?おかしいな。
森川さんに連絡が全く取れなくなっている。
俺は突然の環境の変化に嫌な予感を感じざるをえなかった。
ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴る。
どきりとしたが、昨夜は森川さんの帰るタイミングがいつもよりも遅かったので、その分朝も来てくれる時間が遅くなったに違いない。
そう思い込んだ俺は何の疑いもなくドアを開けた。
彼女が帰ってきたと心躍らせて対応した自分を待っていたのは、ドラマでよく見かけるような二人組の警察だった。
気がつくと俺はパトカーの後部座席に乗せられていた。
俺に告げられた罪状は、器物損壊罪。
話を聞くとどうやらあの飲み会の日に、高額自動販売機を蹴り飛ばし故意に壊した器物損壊の罪に問われているようだった。
脳が理解しようとぐるぐる回っているが同じ思考が繰り返されるばっかりで、結局のところ正しく理解することなんてできそうにも無かった。
警察署に着いた俺は簡単に事情聴取を受けた後、身体検査をし、勾留という流れになった。
たしかにあの日自分の身勝手な行動で、自販機を壊した事は事実だったし、それで罪に問われると言うのなら償うしか他に方法は無かった。
森川さんはどうなったのだろうか。
今の現状を伝えたいけれど伝えることはできない。
もし俺の家に来たら、彼女はずっと待ち続けるのだろうか。
「…………いや、流石にもう来ないか」
俺は自分の犯したことよりも森川さんのことで頭はいっぱいだった。
水や軽食を口にするようにも勧められたが、何かを口にする気分にもなれず、俺は抜け殻のように呆然とただ座っていた。
どれくらい時間が経ったのか。
ガチャリ、という音がして顔をあげた俺の前には知っている顔があった。
「やあ、遅くなってすまない。上原くん」
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