第393話 選んだスキルは――
――神殺し。
それは、人類が崇めるべき存在である神を、その座から引きずり下ろすことの出来る者。
神々に与えられし絶対なる権能をものともせず、その身を以て神を仇なすことの出来る超越者である。
”神殺し”と言う単語が気になった俺がフィストレアに聞いてみると、そんな返事が返って来た。
「――とはいえ、儂もファンカレアから聞いただけで、直接見たことがある訳では無い。まさか、この目で見る日が来ようとはのぅ……」
フィストレアは驚いた様子でそう言うが、神殺しと呼ばれた当人である俺はいまいちピンと来ていない。
そもそも、俺が本当に神殺しであるかどうかもまだわからない状態なのだ。
そこで、俺は事の発端である発言をしたファンカレアの方へと顔を向けて、説明を求めることにした。
「ファンカレア。本当に俺は神の権能を奪えたりするのか?」
「間違いありません」
即答か……。いや、それが出来るスキルには心当たりがあるけどさ。
「それに藍くんだけではなく、共命者であるグラファルトもです」
「やっぱりそうか」
「まあ、藍が神殺しと呼ばれるのなら、藍と繋がっている我もそうなるか」
「ん? 共命者とはなんのことじゃ?」
あ、そうだった。フィストレアにはまだ俺の事を詳しく説明してないんだったな。
その事に気づいた俺は、一応ファンカレアとグラファルトの二人に許可を取ってから、俺とグラファルトの現状についてフィストレアに話した。ついでにフィストレアには俺とグラファルトに対して【神眼】を使うように言って、俺たちが繋がってることを示す証拠でもある全く同じステータス画面を見てもらう。
話を聞き終えてから俺とグラファルトのステータスを見比べたフィストレアは、若干ではあるが疲れた顔をしていた。
「大丈夫か?」
「……そこの竜である娘が元邪神? そんな邪神を、神格を取り除いて消し去り、自身の魂に取り憑いた呪いを打ち払った? そしてその結果として、二つの魂が重なりあったじゃと? そんな事が起こっていたとは……もしや儂は、別世界に目覚めてしまったのかのぅ」
どうやら一気に詰め込み過ぎたらしい。俺の説明を聞き終えたフィストレアはうわ言の様に呟き続けていた。
「おい、ファンカレア。お主は何故この様な規格外の力を許しておるのじゃ?」
「え? そ、それは、その……えへへ」
「えへへ……じゃないわ、阿呆!!」
「うぎゃっ!?」
頬を赤く染めてモジモジとし始めたファンカレアに腹が立ったのか、フィストレアは素早い動作でその体を跳ねさせると、ファンカレアの頭上目掛けて手刀をお見舞いした。
「な、なにするんですか!?」
「頭の悪いお主には、口で説明するよりも体に教えた方が早い!! 自身を殺す事の出来る力を何故見逃しておったのじゃ!?」
「ら、藍くんはそんなことしません!! 私は、その……ら、藍くんのお、お嫁さんですから……えへへ」
「…………ふんっ!!」
「~~~~ッ!!」
それからしばらくの間、ファンカレアはフィストレアからお説教を受ける事となり、時間が掛かりそうだったので俺とグラファルトはフィストレアから貰う予定であるスキルを選んで待つことにした。
というか、本当にスキルは貰えるのだろうか? なんか、これ以上強くなられては困る! とか言って無しになりそうな気がする……まあ、元々お礼を貰うつもりは無かったから別にいいんだけどね。
そうしてグラファルトとスキルを見ながら意見を出し合っていると、前方に居るフィストレアから声が掛かった。
「すまぬのぅ、少し時間が掛かった」
「うぅ……酷い目にあいました……」
申し訳なさそうにするフィストレアの隣で、ファンカレアが両手で頭を押さえて蹲っている。
俺はフィストレアに「大丈夫」と告げた後で、スキルを貰う件について聞いてみる事にした。
「あの、フィストレア」
「ん? なんじゃ?」
「スキルを貰えるって話、別に無しにしてもいいからな? なんか、フィストレアの話を聞く限りだと、俺が強くなるのはあまり良い事ではなさそうな気がして……」
正直、フィストレアとギクシャクしてまでスキルを貰うつもりは無かった。元々はフィストレアが「何かお礼をしたい」と言った事で決まった事だし、俺にとっては棚から牡丹餅なのである。ここでスキルを貰えなかったとしても、俺にとって損になる事は無いのだ。
そう思って言ったのだが、俺の言葉を聞いたフィストレアは苦笑を浮かべてその首を左右に振りだした。
「いいや、もう気にする事は無い。約束通りスキルは渡す」
「それは有難いけど、その……いいのか?」
俺としては嬉しい事だし、素直にスキルを貰おうと思っていた。
ただ……フィストレアの隣で頭を押さえているファンカレアが、「え、嘘でしょ?」みたいな顔をしていたので、最後に聞き返してしまう。
俺の不自然さに気づいたフィストレアが首を傾げながら隣に居るファンカレアへと視線を向けて、その表情を苦々しいものへと変えていった。
「あー……まあ、ファンカレアは気にするな。儂がこやつを叱った理由は、無自覚に脅威となるスキルを与えていたからじゃ。今更与えてしまった物を戻せとも言わぬし、それに……ランの人となりはしっておるからのぅ。そこの竜の娘もどうやら世界を守護する立場にあったようじゃし、まあ今回は仕方がないじゃろう」
「そっか」
「じゃから、お主たちは気にせずにスキルを選ぶと言い。あ、当然ではあるが権能は駄目じゃぞ? それ以外であれば特に問題はない。好きなものを選ぶと良いのじゃ」
フィストレアの言葉に頷いてから、俺とグラファルトは再び相談を始める。
そうして二人であれこれと話し合った結果……一つのスキルを選んだ。
「ほぅ――【消去】か。確かにこのスキルは中々に使えるからのぅ。本当にこれで良いのか?」
「ああ、俺のスキルの性質上、どうしても色々と取り込むことが多いからな。【改変】って言うスキルもあるけど、不要なものを一々作り変えるより消し去った方が早いかなって」
「ふむ、確かに【消去】は魔力消費も少ないからのぅ……竜の娘はそれで良いのか?」
「うむ、元々は藍に与えられた褒美だからな。我に異論はない」
グラファルトがそう言うと、フィストレアは納得した様子で頷いて「そうか」と答えた。
「よし、ならば早速スキルの譲渡へ移るとしよう。ファンカレア」
「はい」
フィストレアの視線を受けて、既に元の調子に戻っていたファンカレアが黄金色の魔力を解放する。やがて魔力はファンカレアの身体からフィストレアの身体へと移動して行き、少しするとフィストレアの胸元辺りからテニスボールくらいの黄金色の球体が現れた。
球体はそのまま俺の方へと浮遊して来て、止まることなく俺の体内へと侵入する。
そして、球体が俺の身体の中に取り込まれたのと同じくらいのタイミングで、頭の中に特殊スキルである【消去】の存在が浮かび上がった。
「どうじゃ? 無事、渡す事は出来たかのぅ?」
「ちょっと待って……”ステータス”」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
名前 制空藍
種族 共命者(人種・竜種)
レベル ―――
状態:”共命(グラファルト・ヴァヴィラ・ドラグニル)”、”???”
妻 グラファルト・ヴァヴィラ・ドラグニル
妻 黒椿
妻 ファンカレア
妻 ミラスティア・イル・アルヴィス
妻 アーシエル・レ・プリズデータ
スキル:~非表示(――)~
固有スキル:【竜の息吹】【竜の咆哮】【人化】【竜化】【眷属創造】【地脈操作】【水流操作】【火炎操作】
特殊スキル:【改変】【漆黒の略奪者】【白銀の暴食者】【魔法属性:全能】【叡智の瞳】【スキル合成】【スキル復元】【創造魔法】【神性魔法】【神眼】【千里眼】【隠密S】【不老不死】【精霊召喚(黒椿)】【女神召喚(黒椿・ファンカレア・ウルギア)】【状態異常無効S】【精神汚染耐性EX】【物理耐性EX】【神速】【神装武具(共命剣ファルート・双黒の封剣)】【全域転移】【万物鑑定EX】【武術の心得EX】【家事の心得EX】【浮遊】【空歩】【錬金の心得S】【鍛冶の心得S】【魔導の心得EX】【審判の瞳EX】【スキル封印】【詠唱破棄】【並列思考】【封印耐性EX】【威圧EX】【冷静沈着】【スキル複製】【気配察知EX】【ステータス隠蔽EX】【魔力察知EX】【スキル譲渡】【遮音】【偽装】【スキル成長値増加】【修練の賜物】【消去】
称号 【精霊に愛されし者】【黒椿の加護】【異世界からの転生者】【女神の寵愛を受けし者】【魔法を極めし者】【魔竜王の主】【略奪の主】【厄災を打ち砕く者】【超越者】【料理の達人】【カミールの加護】【魔竜王の伴侶】【女神の伴侶】【精霊の伴侶】【共命者】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……うん、ちゃんと受け取れたみたいだ。ありがとう」
「カカッ、礼を言うのは儂の方じゃ、それは感謝の印なのじゃからのぅ」
ちゃんとスキルを受け取れた事を確認した後で、俺とフィストレアは互いに右手を伸ばしてその手を握り合う。
こうして、俺はフィストレアから無事にスキルを受け取る事が出来たのだった。
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
【作者からの一言】
近況・活動報告の方でもお知らせしましたが、投稿頻度が少しだけ下がります。
詳しくは作者のプロフィールから近況・活動報告の方へ飛んでいただけると際儂です。
【作者からのお願い】
ここまでお読みくださりありがとうございます!
作品のフォロー・★★★での評価など、まだの方は是非よろしくお願いします!
ご感想もお待ちしております!!
作品の投稿に関してはTwitterでお知らせしていますのでプロフィール欄からTwitterに飛んでいただけるとご確認できると思います!!
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます