第351話 悩みの種(身内)①






 ――それは闇の月24日の朝から始まった。


 前日に言われていた通り、俺はファンカレアが待つ神界へと向かう事に。

 メンバーは俺、ミラ、グラファルト、黒椿、トワの五人だ。


 数日姿を見せていなかったウルギアも一緒にと思ったんだが、念話を送ってみた所……どうやらウルギアはずっと神界に居たらしい。

 その理由については話してくれなかったけど、何となく聞かれたくないのかなと感じたので俺もそれ以上は聞いていない。

 ちょっとだけ心配ではあるけど、最近のウルギアは感情を表に出す事が増えたのでそれに関しては良い傾向かなとも思い始めている。


 そうして、ファンカレアとウルギアが居る神界へと五人で転移すると、白色の世界で二人が待っていてくれていた。


「ようこそ、藍くん! それにみなさん!」

「……」

「おはよう、ファンカレア。ウルギアもおはよう」

「はい、おはようございます。そして、数日も藍様の傍を離れていて申し訳ございませんでした」


 挨拶と共に謝罪を述べるウルギアに「気にしないで」と言っておく。怒っている訳では無いからな。


 そうして二人と他愛もない話をしていると、神界に懐かしく思える魔力を感じた。

 魔力を感じた場所へ視線を向けると……そこには小さな管理者――カミールの姿があり、カミールは俺たちの事を見つけると、嬉しそうに笑顔を浮かべて走って来た。


「藍! お久しぶりです!」

「久しぶり、カミール。中々顔を出せなくてごめんな?」


 ファンカレア達を過ぎ去り、俺の前までやって来たカミールの頭を撫でる。

 俺に頭を撫でられると、カミールはその目を細めて心地よさそうにしていた。


「良いんです、藍が大変な状況だったのは知っていますから……その子が、トワ様ですか?」


 頭を撫でる手を放すと、カミールは一歩後ろへと下がり俺の背後を伺うように体を左へと傾け始める。

 姿勢を変えたカミールの先には、俺の背後に体を隠して居るトワの姿があった。

 どうやら、カミールに緊張しているらしい。あれ、そういえば顔を合わせるのは初めてか。


 二人は同じ身長だから、一緒に遊べるような関係になってくれると嬉しいんだけど……。


「初めまして、私はカミールと言います」

「……ト、トワです」

「トワ様ですね? 私の事はカミールと呼んでください。敬語も必要ありません」

「……わかった、トワもトワでいいよ」


 まだ少しだけ緊張しているみたいだけど、ファーストコンタクトは概ね良好そうだな。カミールは基本的に優しい子だから、多分何度か顔を合わせればトワも仲良くなれるだろう。


 そうして二人が挨拶を終えた後、俺はカミールへと視線を向けて本題へと移ることにする。

 俺が呼ばれた理由についてだ。


「それで、カミールが俺を呼んだみたいだけど……一体何があったんだ?」

「あ、そ、そうでした!」


 どうやら俺との再会やトワに夢中で忘れていたらしい。ハッとした様子のカミールは慌てて俺へ説明を始めた。


「あの、実は地球にいらっしゃるご家族の……藍の妹様の件でお話が……」

「え、雫の事で?」


 カミールからの話という事で、地球に関する出来事なんだろうとは予想出来た。ただ、最近は転生者が関係している騒動があったばかりなので、もしかしたら呪われた魂に関しての話かなと思っていたんだが……雫のことで話ってなんだろう?


「雫がどうかしたのか? 元気にしてるか?」

「えぇ……その……健康面に関しては概ね良好だと言えますね……えぇ……」

「…………カミール?」


 なんでそんなに歯切れが悪いんだ?

 そして何故、俺と目を合わせようとしない?


 俺がカミールの名前を呼ぶと、一瞬だけ肩を震わせたカミールはチラリと俺の方を見上げて……観念した様に話し始める。


「あの……藍」

「う、うん」

「妹様をフィエリティーゼへ連れて行くのは……いつ頃かは決めていますか?」

「妹を……フィエリティーゼへ……」


「「…………あっ」」


 俺が呟く声に重なる声、それは俺の後ろで話を聞いていたミラによるものだった。


 その声に顔を向けると、ミラは何処か気まずそうに苦笑を浮かべて俺から視線を逸らす。でも……きっと俺も同じような顔をしているんだろうなと思った。



 やべぇ、最近忙し過ぎて――雫の移住についての話を忘れてた……。



 そんな俺とミラの顔を見たらカミールは「やはり、そうでしたか」と呟く。


「ファンカレアもよく分からないと言っていたので、もしかしたらと思っていたんです」

「ご、ごめんなさい……」

「いえ、藍が忙しかったと言うのもファンカレアから聞いていましたから」


 俺が頭を下げると、カミールは優しく声を掛けてくれた。

 しかし、直ぐに困った様な表情を作ると続けて話し始める。


「ただ、出来るだけ早くにお迎えしてあげた方が良いと思いますよ? その、今は健康に害はない範囲ですが、今後はそうとは限りませんので」

「え、それってどう言う?」

「実は……」


 そうしてカミールから聞かされた話は、とても現実味のない内容だった。

 しかし、実際に地球を管理しているカミールが言うのだから事実なんだろう。


 でも、流石に驚いたし信じられなかった。

 まさか……。


「――妹様は20歳になった日を境に酒浸りの毎日をお送りしています」

「…………えっ!?」


 雫がもう20歳を超えていて、酒飲みになっているなんて、思ってもみなかったのだ。








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 【作者からの一言】


 雫はお酒に溺れる事を覚えました。

 お酒はちゃんと飲める年齢になってから飲む様にしましょう! そして、飲み過ぎには要注意です!


 【作者からのお願い】


 ここまでお読みくださりありがとうございます!

 作品のフォロー・★★★での評価など、まだの方は是非よろしくお願いします!

 ご感想もお待ちしております!!


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