第290話 プリズデータ大国 二日目④





 自分の身体について色々と調べた後、別邸の玄関から出て来たライナと軽く話をしてから俺は二階にある大部屋へと移動しみんなが起き始めるまで寛いでいた。


 そう言えば、ミラ達が全員普通に眠る事を夕食直後に話したら食器を片付けていた使用人の人達が凄い驚いてたな。ユミラスもアーシェが眠る事は本人から聞いていたみたいだけど、全員が普通に眠るとは思ってもみなかったらしい。


 そんなに驚く事なのかと思ったけど、前にフィオラが俺の部屋で居眠りしてしまった時にグラファルトが言ってた言葉を思い出した。


『あのなぁ……そもそも、魔竜王であった我や<神の使徒>である六色の魔女達がわざわざ毎日睡眠をとる様になったのは、お前の影響なのだぞ?』


 それはつまり、俺と関わる前までの”六色の魔女”は全員睡眠をとる事もなく生活していたという事であり、それは”六色の魔女”を知るフィエリティーゼの人達の常識でもある訳だ。まあ、驚くのも無理はないだろう。


 でも、まさかそんなに驚かれるとは思わなくて逆にこっちが困惑したのを覚えている。


 冗談のつもりで『ミラ達が寝ないのが普通だって言うから、てっきりレヴィラやユミラスも寝ないものなのかなと思ってた』と話したら、レヴィラの顔から笑みが消えて『ラン、よく聞きなさい……お師匠様達が特別なの。普通の人は寝ないと生きて行けないの』と真顔で言われたな……目のハイライトが消えててちょっと怖かった。


 そんな事を考えているとリィシアが大部屋へとやって来てその後にミラとアーシェ、ロゼと続きみんなが起き始めた。

 黒椿やトワ、ウルギアも起き始めて最後にフィオラと朝の鍛錬を終えたライナが入って来たところで俺は全員に向かって今朝のユミラスとのやり取りを話す。

 ユミラスがここで暮らすことに反対する人はおらず、丁度タイミングよくレヴィラとユミラスが大部屋へとやって来ると、アーシェは嬉しそうに声を掛けながらユミラスへと抱き着いた。


 アーシェに抱き着かれているユミラスの後方にはミザさんの姿があり、どうやら大人数になってしまった別邸をアリーシャ一人では管理しきれないと判断して来てくれた様だ。部屋はアリーシャと同じ部屋で良いという事なので、俺達としても面識のあるミザさんなら良いかとなり歓迎した。


 ミザさんは一通りの挨拶を終えた後、一階にあるキッチンへと向かいアリーシャさんと朝食の準備を始めるとの事。アーシェはユミラスが宿泊する予定の部屋へ向かい亜空間にしまってある荷物の荷解きを手伝うと言って大部屋を後にした。



 そうして一時間程経過すると、ミザさんが「朝食の準備が出来ました」と声を掛けに来てくれた。みんなが食堂へと移動するのを見送った後、別邸二階の右端の部屋へと入る。

 部屋に入ると右側にダブルベッドが置かれていて、そこには俺が居なくなった事でベッドの真ん中を占領し大の字に寝るグラファルトの姿があった。


「おい、グラファルト」

「ん……んー?」


 俺が左手で肩をゆすると、グラファルトは上半身を起こして全く開いていない目で周囲を見渡し始める。

 来ている俺の黒いTシャツはサイズが全くあっておらず、左側がずり落ちて胸が見えそうになっていた。


「アリーシャとミザさんが朝食を作ってくれたぞ」

「…………うむ」


 ぼけーっとしていたグラファルトは”朝食”という言葉に反応はするが、ベッドから動こうとはしなかった。


「ほら、早く行かないと出来立てのご飯が冷めるぞ?」

「うむ……ふぁ~」


 ようやく動く気になったのか、グラファルトはその灰色の髪を揺らして這うようにしながらベッドから下りた。

 そして、そのままの恰好で外へ――


「――って待て待て待て!」

「んぁ?」


 フラフラとした足取りで部屋の外へ向かうグラファルトを止めてベッドへと腰掛けさせる。


「お前なぁ……ここは家じゃないんだから服を着替えろ」

「……面倒だな。別にお前以外に男は居ないのだから良いではないか」

「そう言う問題じゃないの! よそ様の家の中をだらしない恰好で動いちゃダメだろ」

「……はぁ、わかったわかった」


 俺が強く反論するとグラファルトは嫌そうな顔をしつつも溜息を吐くと諦めた様に着替えが置かれている左側の机へと向かい移動し始めた。


 ……あれ? なんで俺が我が儘を言ったみたいになってるんだ?


 その後は全く着替えが進まないグラファルトを手伝いようやく着替えさせることに成功して、二人で部屋を後にする。

 食堂では長テーブルを二列に並べて伸ばしたテーブル席に、既に全員分の配膳が終わっており俺達を待っている状態だった。待たせた事をみんなに謝罪してから空いているミラの左隣へと座り、グラファルトも俺の左隣に腰掛ける。


 こうして、プリズデータ大国に来て二日目の朝は賑やかな朝食と共に始まったのだった。










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 【作者からの一言】


 昨日と同じく執筆時間が取れず、短めとなっています。すみません!

 別邸での生活はユミラスさんとミザさんも加わり賑やかになりましたね!

 次回は遂に他国からの来訪者が――!?


 【作者からのお願い】


 ここまでお読みくださりありがとうございます!

 作品のフォロー・★★★での評価など、まだの方は是非よろしくお願いします!

 ご感想もお待ちしております!!


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