第210話 ウルギアがやって来た③





「そう言えば……俺も【神装武具】って使えるのかな?」


 ミラ達がウルギアに色々と話を聞いているのを眺めていたのだが、不意にそんな疑問が浮かんだ俺はそう呟いていた。

 【神装武具】はライナが使っているのを一回見ただけだけど、なんか神々しかったしカッコいいなぁって思ってたから使えるのなら使ってみたい……。


「申し訳ありません、藍様。現在の状況では特殊スキル【神装武具】を使う事は出来ません」

「まあ、そんなに都合のいい話はないよなぁ」


 申し訳なさそうに口にするウルギアに気にしない様に言っておく。


 詳しく聞いてみると、どうやら神属性の魔力が不足しているらしい。そもそも人間である俺が神属性の魔力を持っていること自体がおかしいのだが、どうやら邪神と共にグラファルトを取り込んだ際に、グラファルトが【悪食】で奪っていたファンカレアの魔力も取り込んでいたらしい。

 だが、それでは不十分な様で【神装武具】を発動させる事は出来ない様だ。


 うーん、やっぱり駄目かぁ……非情に残念である。


「あの……私が魔力を分け与えれば使う事が出来るのでは?」

「え?」


 その声にがっくりと落としていた肩と顔を上げると、そこには声の主であるファンカレアの姿が。

 そっか、ファンカレアの魔力を使えばもしかしたら……。

 そう思ってウルギアの方へと視線を送ると、ウルギアは口を付けていたカップを離し、小さく首を縦に振った。


「ファンカレアの言う通りです。ファンカレアの保有する神属性の魔力を借りる事が出来れば、藍様が【神装武具】を使う事は可能です」

「「おお!!」」


 喜びのあまり円卓に手をついて立ち上がると、俺の右隣りからも同じような声が上がる。その声に視線を向けると、そこには俺と全く同じ動作をしているグラファルトの姿があった。

 そっか、俺に使えると言う事はグラファルトにも使える可能性があるっていうことなのか。【神装武具】を使うライナの姿をワクワクした様子で眺めていたから、自分が使える事が嬉しいのだろう。


「やったな、グラファルト!」

「うむ!! 閃光の奴が使っていたあの剣、我も使ってみたいと思っていたのだ!!」


 一緒に喜びを分かち合おうと声を掛けると、グラファルトは俺の方へと顔を向けてキラキラと瞳を輝かせながら返事をしてくれた。


 そうして俺とグラファルトが喜んでいると、グラファルトの反対側に座っているウルギアから待ったを掛けられた。


「正直に申し上げますと、私は【神装武具】を使う事に対して賛成する事は出来ません。出来ることなら、使用は控えて頂きたいとも思っています」

「「えー……」」

「その意見には僕も賛成かな」

「魔力について助言をしておきながら言うのもあれですが、私もです……」


 ウルギアの反対に不満の声を上げる俺とグラファルト。すると、ウルギアの声を擁護する様にライナとファンカレアも声を上げた。

 えー……使いたい……。

 俺とグラファルトはその後も駄々をこねて、何とか使う事が出来ないか聞き続けた。しかし、三人は中々納得してくれなくて、反対する理由について述べ始める。


「別に僕達はランとグラファルトを困らせたい訳じゃないんだよ? ただ、二人が【神装武具】を使いたい理由って、僕が生み出したのと同じ剣を使ってみたいからなんだよね? だとしたら、それは不可能だと思うからやめておいた方が良いよ?」

「どういうことだ?」

「まず、【神装武具】というスキルについて説明した方が良いかもね」


 そうして説明してくれたライナの説明によると、どうやら【神装武具】はあの神々しい大剣の事を指すのではなく、使用者の願望を形にするスキルらしい。

 つまり、あの大剣はライナの願いによって作られた武器であり、俺とグラファルトが【神装武具】を使ったとしても、同じ大剣を手にする事が出来る可能性は低いのだとか。


 その話を聞いて、右隣りから盛大な溜息が聞こえた。

 まぁ、気持ちはわかるよ。俺もショックだったし……。


「それに、僕はファンカレアに制限を掛けられてるからある程度平気なんだけど、【神装武具】って結構疲れるんだよね……ファンカレアが反対している理由はそこにあるんじゃないかな?」

「そうなの?」


 俺が視線をファンカレアへと移すと、ファンカレアは申し訳なさそうな顔をして小さく頷いていた。


「【神装武具】に限らず”六色の魔女”である六人に渡したスキルは、言い換えれば神器です。神属性の魔力を必要とするその力は強大なものであり、使用者への負担もその分多いのですよ。だからこそ、ライナに【神装武具】を渡した際に幾つも制限を掛けさせていただきました。ただ、藍くんの保有する【神装武具】に関しては私の管轄外です。元となっているのは私の創造したスキルですが、それを藍くんに創って渡したのは私ではないので制限を掛けられるとすればウルギアだけなのですが……」


 そう言い終えた後、ファンカレアはその視線を俺の左隣り――つまりはウルギアへと向ける。ファンカレアに続くように俺も視線をウルギアへと向けると、ウルギアは小さく溜息をついてその首を左右に振った。


「ファンカレアが何を言いたいのかは理解できます。【改変】等を用いて【神装武具】を創った私であれば、藍様が使用する際にある程度制限を掛けられるのではないか? そう言いたいのですね?」

「は、はい。藍くんのスキルを管理している貴女ならと思ったのですが……」

「ご期待に添えず申し訳ないのですが、それは不可能です」

「な、何故でしょうか?」


 ウルギアから発せられた否定の言葉に動揺した様子のファンカレアがそう聞いていた。

 そして、ファンカレアからの質問に返すウルギアから発せられた言葉に……円卓を囲んで居た俺達は困惑する事になる。


「――私には、特殊スキル【神装武具】の管理者権限がないからです」


 円卓の一席に座るウルギアは、はっきりとした口調でそう言った。


 俺の中にある【神装武具】の創造主である自分にも、【神装武具】を制御する事が出来ないと。




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 短くて申し訳ありません……。


            【作者からのお願い】


 ここまでお読みくださりありがとうございます!


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