第142話 二年目:学園創設とお弁当作り②




 唐突に始まったフィオラの愚痴が終わり、俺に対して謝罪を続けていたフィオラを宥め終えた後、ラヴァール大国とヴィリアティリア大国が”五大国連盟”から脱退したと言う話を詳しく聞くことが出来た。


 どうやら創世の月5日目に各大国の国王が集う”五大国連盟会議”と言う集まりがあったらしく、二大国の脱退はそこで宣言された様だ。五大国の内、エルヴィス大国、ヴォルトレーテ王、プリズデータ大国の三大国は魔女との関りが比較的強い傾向にあり、逆にラヴァール大国、ヴィリアティリア大国はフィオラが説明してくれたようにロゼとリィシアが国に対してそこまでの執着を見せなかった為に魔女との関りが比較的に薄い傾向にあったらしい。


「いつかはこうなるだろうと予測していました。ほら、ランくんには先程お伝えしましたが、ローゼとリアが居ましたので……。むしろ、これまでよく続いたなぁと感心したくらいです」

「フィオラとしては同盟が無くなる事自体に問題はないと思っているわけか」

「そうですね。流石に私達が王位についていた時代に起こっていたら危機感を覚えていたかもしれません。それは、姉妹である私達の関係が崩壊したのと同義ですからね。ですが、幸いな事に私達は王位を退きその関係性も良好です。本音を言わせてもらえば、いま同盟が解消されたとしても私達にはなんら関係のない事なので」


 現代の事は現代の王に一任される、私達はそれを見守るだけです。

 そう言い終えたフィオラは苦笑を浮かべていた。

 フィオラの言葉に耳を傾けていた俺は、一つだけ気になる事があったのでそれについて聞いてみる事にした。


「見守るっていう割に、フィオラが忙しそうにしている気がするのは俺の気のせいかな? 学園の創設に関してもそうだけど、頻繁にエルヴィスへ出かけてるだろう?」

「うっ……痛いところをついてきましたね……」


 俺の言葉に思い当たる節があるのか、フィオラは気まずそうに俺から視線を逸らした。その後も俺がジーと見つめていると、フィオラは観念したようにポツリポツリと話だす。


「実は、私にはハイエルフの弟子が一人居まして……今回の学園創設の件もその子に頼まれたんです」

「……もしかして、ディルク王に会いに行った時に後ろで控えていた人?」


 シーラネルを救出するに当たって、親であるディルク王へ会いに行った闇夜の謁見。その場にはディルク王以外にも二人の人物が居たのを覚えている。そのうちの一人が、確かエルフだった気がする。

 記憶の片隅にあった人物を思い出しながらフィオラに言うと、フィオラは驚いた様に目を見開いた。


「よく覚えていましたね? でも、あの時の姿は【偽装】と言う特殊スキルで作り出したもので、実際はもっと若い女の子の見た目をしているんですよ?」

「そうなんだ。ハイエルフっていう種族はやっぱり長命種なの?」

「ええ、エルフが500年生きれば大往生と言われるのに対して、ハイエルフはそもそも年齢という概念が存在するのかも怪しいと考えられています。見た目の成長も限りなく遅く、その人生に終わりがあるのかすらわからない、と」


 なんだかハイエルフの説明は曖昧なものばかりだなぁと思い、その事についてフィオラに尋ねてみると、フィオラは申し訳なさそうに苦笑を浮かべてその理由について話してくれた。


「実は……フィエリティーゼに存在するハイエルフは、突然変異で生まれた私の弟子のレヴィラ・ノーゼラート一人だけなんです。ですので、ハイエルフに関する細かな資料はほとんどないんですよ。まあ、本人は然程気にする事もなく大好きな魔法の研究に没頭できると喜んでいました」


 そうしてフィオラからハイエルフについて教えてもらっていると、フィオラの正面にある扉がゆっくりと開き始める。

 そこは工房部屋に備え付けられたシャワールームとなっていて、仕事で汚れた時のために設置してあるとロゼから聞いた事があった。

 視界の端に映るシャワールームの扉の向こうから一人の少女が現れる。

 それは、茜色の髪をした工房部屋の主であるロゼだった。


「お待たせー、あれー、ランがいるーっ」

「っ!?」


 嬉しそうに俺の名前を呼ぶロゼの声に反応して、自然と視線をシャワールームの方へと向ける。そして、さっきまではぼやっとしか見えていなかったその光景を見て、俺は直ぐに視線を逸らすのだった。


「ロゼ! 服、服!!」

「ローゼ……シャワールームに行った時には私しか居ませんでしたけど、ランくんが来る事も一応考慮して服を着て置きなさい! そもそも、貴女はいつも暑いからと行って裸同然で部屋の中を彷徨いたり、恥ずかしくないと言ってランくんとお風呂に入ろうとしたり、もうちょっと女性としての自覚を――」

「またフィーのお説教ー?」


 物凄い早い口調で捲し立てるフィオラの声とロゼの気の抜けた声が交互に聞こえる。さて、お説教をするのは良いんだけど俺はいつまで後ろを向いていればいいのだろうか……。いまフィオラに声を掛けても反応が返って来ることはないんだろうなぁ。


 結局、俺が二人の顔を見れるのに30分は掛かったと思う。

 その間にもロゼが急に抱き着いて来たり、フィオラがそれを引き剥がす為に何故か俺の体を自分の方へと引き寄せたりと、不意打ちをくらった俺は色んな意味でドキドキさせられた……。





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 今回は短くなってしまって申し訳ありません。

 体調を崩してしまい執筆できる状態に回復しては書いて回復しては書いてを繰り返していたのですが、一向に良くなる気配が無いので今日はこの文章量でお許しください……。



 【作者からのお願い】

 ここまでお読みくださりありがとうございます!

 作品のフォロー・★★★での評価など、まだの方は是非よろしくお願いします!!


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