第52話 顔合わせ
転生先である森の中、ミラの後方に集まる五人の人影。
その中の一人、瑠璃色の髪を一つ結びにした少女が俺の前へと一歩踏み出し自己紹介を始める。
ちなみに、グラファルトとミラは我関せずと言わんばかりに泉の近くへ移動してお茶を飲んでいた。
いや、せめて傍には居てくれよ……。
当然ながらそんな心の声は届くことなく、結った瑠璃色の髪を揺らして少女は元気に声を上げる。
「初めましてっ! わたしは氷結の魔女、名前はアーシエルって言うんだ〜! よろしくねっ」
空色の瞳をキラキラと輝かせて、アーシエルと名乗る少女はパチリとウインクをしてそう言った。
おお……アイドルだ。
俺のアーシエルさんに対しての第一印象はまさにそれだった。
キラキラと輝いて見える雰囲気にその瑠璃色の髪を揺らして笑顔を見せる。
透明なフリルの付けたドレス風の上着にショートパンツを合わせていて、ショートパンツの下には黒いタイツを履いてその足は丈夫そうな膝丈まであるブーツで隠れていた。
その雰囲気と服装から、活発的な少女なのだろうと予想することが出来る。
「えーっと、アーシエルさん? ご丁寧にありがとうございます。俺の名前は――「ちょ~っと待った!!」――はい?」
挨拶に返事を返そうと思い慣れない敬語を使って話していると、アーシエルさんは右の掌を俺の前に出し話を止める。
そして、ニッと笑みを浮かべてアーシエルさんはその口を開いた。
「敬語なんて使わなくていいんだよっ! わたしの名前もアーシエルかアーシェでいいからねっ! みんなもそれでいいよねー?」
アーシエルさんの声を聞いた後ろに控えている四人はその声に頷き返事をしていた。
「……そう言う事なら有難くそうさせてもらうよ。これからよろしく、アーシェ」
「えへへっよろしくね!!」
俺がアーシェと呼ぶとアーシエルはその頬を赤らめてニコっと笑顔で元気よく返事をしてくれた。
そうしてアーシェと見つめ合っていると、腰の辺りに誰かが抱き着いているような感触が伝わってくる。下に顔を向けると、そこには背丈の低い女の子がいつの間にかしがみついていた。
「……え?」
「……」
いやいつからそこに居たの!? さっきアーシェの後ろで頷いてた一人だよね!?
女の子は青とも緑とも見える……碧色だったかな?
碧色の瞳をこちらに向けて何も話すことなく俺を見続けている。
お人形みたいな子だな……。
女の子はアーシェよりも多い沢山のフリルを付けた白と浅緑を基調にしたドレスを身に纏い、その長い若緑色の髪を二つ結びにして下ろしている。
そして、女の子は何故か靴を履かずに素足で立っていた。いや、よく見ると浮いているのか? だから足音とか聞こえなかったのか……。
俺が今も尚しがみついている女の子の対応に困っていると、前方から凛とした綺麗な声が発せられた。
「――その子の事は許してあげて? きっとミラスティア姉さんと同じ気配がするから落ち着くんだろうねぇ」
「えっと……?」
「ああ、ごめんよ? 僕としたことが名乗りもせずに……。僕の名前はライナ、ライナ・ティル・ヴォルトレーテ。そして君の腰に巻き付いているのがリィシア、リィシア・ラグラ・ヴィリアティリアだよ。一応フィエリティーゼでは僕が”閃光の魔女”で、リィシアが”新緑の魔女”と呼ばれているね。よろしくね」
ライナと名乗った俺と背丈の近いスラっとしたスタイルの女性は、右手を差し出し爽やかな笑顔で二人分の自己紹介をする。
王子様だ……アーシェとは違う輝きを放っている……。
明るめのミディアムショートの金髪で、琥珀色の瞳はキリっとこちらを見つめている。
金色の刺繍の入った白いジャケットを肩に羽織り、ノースリーブの白シャツに裾幅にゆとりがある白いズボンという何とも目立つ服装。
しかし、その服装がとても似合っていて彼女の存在感を強める良いアクセントとなっているように感じた。
「えっと、それじゃあライナでいいかな? これからよろしく」
俺はそう言ってライナから差し出された手を取り軽く握る。そして、再び下へと視線を落とし、さっきよりも力強く抱き着いているリィシアと言う名の女の子と目を合わせる。
「えっと……リィシアでいいのかな?」
「……うん」
「それじゃあリィシア、これからよろしく」
「……うん」
……本当に人形ってオチじゃないよな?
俺が声を掛けると、リィシアはその小さな頭をコクコクと縦に動かし、ぼそりと同じ文言を呟いていた。
凄い目を合わせてくれるのに全然話してくれない……。
「――リーアはねー、恥ずかしがり屋さんなんだー」
俺がリィシアの反応に困惑していると、ライナが立っている場所からライナとは違う特徴的な口調の声が聞こえて来る。
その声の方へと顔を向けると、ライナの足元から顔を覗かせるブカブカの白衣を着た少女の姿があった。
「えっと……君は?」
「ロゼはねー、ロゼだよー? 皆からは爆炎の魔女様ーって呼ばれるんだー。よろしくねー?」
「お、おお……よろしく? ロゼ」
俺が名前を呼ぶと白衣の袖で見えない両手を顔へと持って行き、「むふふ」と嬉しそうに口にしながらロゼはライナの隣へと移動する。
背丈はアーシェよりも少し低いくらいか?
所々はねている腰まである茜色の髪、その頭頂部にはダストゴーグルみたいな物を装着している。
ブカブカの白衣の中はショート丈の黒いタンクトップと、クリーム色のハーフパンツという何とも白衣とは不釣り合いなファッションだった。
撫子の花に似た、淡いピンク色の瞳は瞼が降りていて半分ほどしか開いていない。
ロゼはあれなのかな、常に眠いみたいな……いまもライナの隣に移動したかと思えばフラフラと左右に揺れてライナに寄りかかってるし。
これで四人目の自己紹介が終わったけど、それぞれに個性があってその見た目も含めて色とりどりって感じだな。
というか、全体的に若いのはあれか? 不老不死的な存在だからっていうことなのかな?
ミラも何百年も生きているって話だし、神の使徒なんて呼ばれる存在なんだからそれくらいは当然……ということで納得するしかないよな。
予想とは裏腹に、若々しい個性の塊である魔女達。
そんな魔女達の個性の強さに気圧されていると、最後の一人である聖職者の法衣に似た服を纏う、灰色の瞳を持つ少女が前に立つ。
「初めまして。私は栄光の魔女と呼ばれる存在で、名はフィオラ、フィオラ・ウル・エルヴィスと言います。貴方の話は姉であるミラスティアから聞いていました。皆を代表して、貴方の来訪を歓迎します」
「姉? みんなは姉妹ってこと?」
「血の繋がりはありません。ですが、私たち六人は創世の女神様から”神の使徒”の称号を授かり、現在に至るまでの長い年月を共に過ごしてきました。そうして共に居る内にミラスティアを先頭に、私・ロゼ・アーシェ・ラーナ・リアと、誰が決めるでもなく自然と姉妹の様に序列が出来たのです」
血の繋がりはなくても大切な家族。
フィオラはその灰色の瞳を細めて優しく微笑みそう言った。
「……教えてくれてありがとう。よろしく、フィオラ」
「ええ、こちらこそ」
俺が差し出した右手をフィオラは両手で優しく握る。
こうして、ミラを除いた五人の魔女との顔合わせは終わりを迎えたのだった。
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簡略化していますが、魔女達の容姿についてまとめました↓
=六人の魔女=
~常闇の魔女~
ミラスティア・イル・アルヴィス
163cm
バストE
長女
髪型 少しだけ癖のあるハイロング(踵までの長さ)
髪色 黒
瞳 紫黒
服装 黒を基調として所々に暗めの紫が入っているドレス、黒いレースの手袋、黒ストッキング。日本では黒を基調とした着物を着ていた。
人の呼び方 フィオラ・ロゼ・アーシエル・ライナ・リィシア・藍・グラファルト
~栄光の魔女~
フィオラ・ウル・エルヴィス
バストF
160cm
次女
髪型 ハイロングのサラサラ
髪色 月白色
瞳 灰色
服装 法衣に近い白い服、黒いニーハイソックス、膝元まであるブーツ。
人の呼び方 ミラスティア・ローゼ・アーシェ・ラーナ・リア・ランくん・グラファルト
~爆炎の魔女~
・ロゼ・ル・ラヴァール
152cm
バスト B
三女
髪型 寝ぐせのかかったロング
髪色 茜色
瞳 撫子色
服装 ゴーグル、袖長白衣、ノースリーブのショート丈タンクトップ、クリーム色のハーフパンツ、踝まである分厚いブーツ。
人の呼び方 ミーア・フィー・アーシェ・ラーナ・リーア・ラン・グラ
~氷結の魔女~
アーシエル・レ・プリズデータ 氷、水
バスト C
158cm
青
四女
髪型 ふわりと柔らかい髪を一つ結び
髪色 瑠璃色
瞳 空色
服装 透明なフリルの付いたドレス風の上着、ショートパンツ、黒タイツ、膝元まである丈夫そうなブーツ。
人の呼び方 ミラ姉・フィオ姉・ロゼ姉・ラナちゃん・リアちゃん・ランくん・グラちゃん
~閃光の魔女~
・ライナ・ティル・ヴォルトレーテ
170cm
バスト D
五女
髪型 まばらなミディアムショート
髪色 金糸雀色
瞳 琥珀色
服装 サラシ、襟に金の刺繍が入った白いジャケットを肩に掛けてる、ノースリーブの白シャツ、裾幅にゆとりがある白パンツ、ブーツ。
人の呼び方 ミラスティア姉さん・フィオラ姉さん・ロゼ姉さん・アーシエル姉さん・リィシア・ラン・グラファルト
~新緑の魔女~
リィシア・ラグラ・ヴィリアティリア
バストA
138cm
末っ子
髪型 ハイロングを二つ結び
髪色 若緑
瞳 碧色
服装 沢山フリルが付いた白と浅緑を基調としたドレス、素足(状態保存魔法)
人の呼び方 ミラお姉ちゃん・フィオラお姉ちゃん・ロゼお姉ちゃん・アーシェお姉ちゃん・ラナお姉ちゃん・お兄ちゃん・グラお姉ちゃん
もしかしたら度々変更するかもしれませんが、基本的はこんな感じです。
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