アップルパイは上手く焼けない
あきかん
第1話
りんごは6等分のくし切りにして、芯と種を取り除き、皮をむく。
鍋に砂糖、レモン汁、1を入れて中火で炒め、りんごがしんなりしたら火から下ろし、粗熱を取り、ボウルに入れてラップをし冷蔵庫で冷やす。
今日はアップルパイを作る事にした。彼女が食べたいと言っていたのを思い出したからだ。まあ、手作りでなくても良さそうだけど、そこは趣味なので。
打ち粉した台に冷凍パイシートを1枚置き、麺棒で2mmの厚さに伸ばして、フォークで数ヶ所穴をあけ、パイ皿に敷き詰めます。余分な生地を切り落とし、冷蔵庫で10分冷やす。
残りの冷凍パイシートは1.5cm幅に切り、これも冷蔵庫で10分冷やす。
作業中の写真をラインで送った。
〜〜〜
〉仕事中にごめんm(_ _)m。アップルパイ作って待ってるよ(≧▽≦)
(写真)
〉美味しいのよろしく(^3^♪
〜〜〜
客観的に見ると古臭いやり取りだ。
生地を詰めたパイ皿と具を入れたボウルを冷蔵庫から取り出して、具を詰める。
それに細長く切ったパイ生地を格子状におき、表面に卵黄を刷毛で塗り、余分な生地を切り落とす。残りのは縁につけ、フォークで下の生地くっつけるように押さえつける。終わったら刷毛で卵黄を全体に塗る。
あいつの作ったアップルパイはリンゴに歯ごたえがあって美味しかったな、そんな事を思い出していた。僕は彼女に料理を教わった。煮物にパスタ。イタリアンの魚や肉料理。中華の点心。見よう見まねでやっていた料理も今はひとりでできる。
だからだろうか。リンゴとレモンの香りは、何処かくすぐられる。
200℃のオーブンで20分焼き、180°Cにしてさらに20分焼く。焼き色がついたらオーブンから取り出す。
型から取り出し、粉糖、ミントを飾り完成だ。
ピンポ~ン、と呼び鈴がなる。
「ただいま〜」
「おかえり。アップルパイできてるよ。」
僕は彼女を出迎えた。
アップルパイを切り分ける。リンゴのグチャっとした感触が手に伝わった。
「あぁ、美味しそう。やっぱり疲れた時は甘いモノだよね。」
「わかる。」
「それじゃあ、いただきます。」
「先ずは手を洗おうよ。」
と、僕は言う。彼女はテーブルを離れて手を洗いにいった。一人になって、アップルパイの断面を見つめる。
「良し。今度こそいただきます!」
「いただきます。」
僕達はアップルパイを食べ始めた。
「美味しいね!さすがだよ。わたしは幸せ者だよ。」
「相変わらず大袈裟だな。ありがとう。」
僕もアップルパイを口に運んだ。
「美味しいよね!」
「ん……」
よく火の通ったリンゴは、舌の上で溶けて消えるかのようだった。
「我ながら、美味いな。これ。」
「そうでしょ。どんどんお食べ。」
ババ臭いな、と思ったが口には出さなかった。
アップルパイは上手く焼けない あきかん @Gomibako
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