第243話 最終回

「光里ちゃん! これに最上級の浄化を付与したいの」

「え、ああ。はいはい」


 いきなりのお願いにも快く応じてくれる光里ちゃん、好き。

 転移してきた光里ちゃんが、テーブルに並べた二つの緑色の大きな魔石に魔法を付与してくれる。

 この石は杉原さんにもらったもので、竜の魔素が溜まった水の中にできる特殊なものなんだけど、ヨアヒムさんがたくさん持っているし作れるそうなので気にしないでガンガン使う。

 それをひとつ組み込んで装置を起動させた。

 ちゃんと動いて王都の方角からくるもやもやを吸い込んでいるのがわかる。

 もうひとつは結界の魔道具に組みこむ用。


「ふふ、完成!」

「素晴らしい装置だよ、すごいぞありす。でも、これは、俺たちの手に負えない。一気に設置してしまった方がいいものだが、街の数は王城でしか把握してないし、それもこの国の分だけだ」


 光里ちゃんと一緒にギルドから戻ってきた上条さんにそう言われて、私は淀み浄化装置の設置方法を国とギルドに任せることにした。


「さて、俺がギルドでしてきた話なんだけど」


 上条さんと光里ちゃんにもお茶を出して寛いでもらう。そういえば杉原さんはどうしたのかな?


 冒険者ギルドでは今回の出来事を詳しく伝えたそう。

 魔王サグレットの出現と、王と公爵が巻き込まれていたことでギルドの偉い人たちが大慌て。

 けれど、もう収束したことだし、謁見の間に魔王が出現してそこで勇者に倒されたなんて大騒ぎになるのもよくないと、適当に誤魔化してしまうことになったらしい。

 この辺は上条さんの思惑通りなんだろうな。

 ああ、だからお城の修復をあんなに急いだのかと腑に落ちた。


「あの、杉原さんはどうしたんですか?」


 光里ちゃんと一緒に上条さんのところに行ったはずなんだけど、戻ってきてないよ。


「あいつは冒険者ギルドでは英雄扱いっていうか、勇者だからな。大人気なんで一回入ったら簡単に出ていけないの」


 上条さんってばなんだか悪い顔をしてるんだけど、杉原さん大丈夫かしら。


「お酒飲もうとか、食事奢りますとか、大人気だったわよ。私は知らんぷりして上条さんのとこ行っちゃった」

「うわぁ、大人気って冒険者さんたちにだよね、もしかしてまずい感じですか?」

「いや、今回も魔王を倒したのあいつってことにしたんでこれでいい。圭人も外歩けなくなるの困るだろ。手柄を横取りしたようで申し訳ないんだが」

「いや、俺は助かります。っていうか、俺たち全員で倒したんですから横取りも何もないですよ」


 この後、圭人くんが、私たちが王都で動きにくくならないように考えてくれたんだね。上条さん曰く、杉原さんはもう顔を知られてるし騒がれるのも慣れてるからいいんだそうだ。


 そして夕方になり、ジェイクさんとサツキさんは一旦小屋に来たけどしばらく王都に宿を取ることになったと私たちに伝えてからまた親戚のお家に。

 サツキさんが落とし子だっていうのは見たらわかるから、知らない親戚が大勢集まっちゃって大変な騒ぎらしい。大宴会が行われているみたい。


 その後お酒くさい杉原さんが小屋に戻ってきて、私たちは夕飯。


 久々にゆっくり食べれるということで、光里ちゃんと一緒に好きなものを作る。

 ポトフと白身魚のフライとチーズを効かせたクリームパスタ、フレンチドレッシングをかけた野菜たっぷりサラダ。足りない人は白パンもどうぞ。


「明日から、どうしよう」


 クルクルとフォークにパスタを巻きつけて喋るお行儀の悪い私。

 魔王は倒しちゃって魔素もなんとかなりそうだし。この先はどうすればいいのかな。


「自由に、好きなように生きればいいんだよ」


上条さんがにっこり微笑む。


「まあ、この世界をゆっくり回るのもいいんじゃないか?」


圭人くんが、豪快にパンを齧ってる。


「楽しみましょう」


光里ちゃんが、


「飽きるまでなんて贅沢ですよね」


夕彦くんが、みんな一緒にいるから。大丈夫ねなんて楽観的になっちゃう。


「いざとなったら神の鍵を使ってスキルを解除することができるんだし。楽しめ、そしてこの世界をもう少し人間に優しくしよう。それに俺たちも付き合わせてくれ」

「そうそう、なんでもできる力をもらったんだから、人に優しく、世界に優しくね」


 そして、装置は国の計らいでしっかり設置されて、街と村は守られた。

 これ以降魔王が出現したという話は聞かない。

 魔獣は魔素が多い獣だから、淀みは関係なくどうしても生まれるものなんだって。


 人々を守る浄化装置と結界を作れる私は、世界最高の錬金術師と呼ばれるようになって、ちょっとした有名人になってしまった。

 圭人くんも大きな魔獣を倒してから剣士として名前が売れちゃって、王都では歩いているだけで声がかかるほど。

 あ、勇者の称号はいつの間にか消えてた。サグレットを倒したからかな。

 光里ちゃんは聖女とはバレてないけど、すごい治癒士として時々病院や孤児院で無料奉仕している。

 夕彦くんは子供相手に魔法教室を開いて、適正魔法を教えたり危険なことをしないように教えたりしているうちに学校を開くことになってしまって、王都に魔法学園を作った。

 転移でいつでも戻れるしね。


 色々な土地を旅したりしばらく住んだり。

 それでもセントリオの王都のそばに王様から土地を貰って家を建てたので、そこが私たちの帰る場所。

 この世界で幼馴染から恋人になって、パートナーになった圭人くんと、光里ちゃん、夕彦くん。それに上条さん、杉原さんと暮らした。

 上条さんたちってば湖の家をそのまま私たちの家の隣に持ってきちゃったのよね。一緒にいる理由の大半が食事なのはとっくにわかってる。


 ジェイクさんとサツキさんは結婚してすぐ不老不死のスキルを解除して、王都で武器屋さんを開業したの。

 たまに遊びに行って、二人の子供を抱っこして。

 

 この世界に来て、色々あったけどのんびり幸せな日々を過ごして。

 時々ハプニングは思いもよらぬところからやって来るけど、幼馴染とずっといられて。

 白い人にはもっとずっと後になったら文句言いまくろうと思いつつ、今は召喚されたことを感謝してる。

 今も好き勝手に色々と創造してるし。


 幼馴染と召喚されたら異世界最高の錬金術師になっていた。

              

                          終わり




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【完結】幼馴染と召喚されたら異世界最高の錬金術師になっていた Totto/相模かずさ @nemunyo

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