第240話

「すっかり元通り、いやそれ以上だ。落とし子様方のおかげですな、陛下」


 思った通り宰相室の本棚で設計図も見つかり、それを見ながら上条さんが修復の指示を出しつつ光里ちゃんと圭人くんがチェック。

 私と夕彦くんで創造と魔法で磨き上げ修復しつつ、防御の付与をしていった。


 それでも一日で終わることはなく、結局三日かかってしまった。

 泊まるところに困ったけど城の中庭に小屋を出すことで解決、急遽王と公爵の部屋も作らせてもらった。食事も王様に出すには庶民的すぎるけどむしろ喜んでもらえた。

 城に住んでいた王と公爵の家族は転移でイプスの街に避難したそうなので、ほとぼりが覚めたら呼び戻すそうです。


 一日目に建物の修復箇所のチェック、二日目に素材を作って大きさや装飾を合わせる。素材に初めから防御の効果を付与した方が強化できることがわかった。

 三日目に私が作った建材をどこが修復箇所かを知っている圭人くんが運び、夕彦くんが装着。

 浄化は光里ちゃんの方が得意なので夕彦くんと二人で修復しつつ、細かくかけながら移動。最終的には城全体にかけた状態になったんじゃないかな。


「魔法防御をやりすぎると転移もできなくなるからそこそこにな」


 最終確認をしながら上条さんがタッチパネルを見つつ私たちとお話。

 夕彦くんがちょっとやりすぎちゃって、結界不要まで魔法防御をあげようとしたところをチェックされた。


「ああ、それは困りますね」

「物理は象がぶつかっても壊れないくらいにしたわ。この世界で象を見た事ないけど。ドラゴンだったら危ないかな」

「ドラゴンはわざわざ危険を犯さないから大丈夫、来るとしたら誰かに操られてるんじゃないかな」


 そんなことを話しつつ、こうして城の上から下まで綺麗に修復をしつつ防衛力も上げて、ついでとばかりに古くなっていた家具なども新品に見えるくらい修復と掃除をした。


 再び綺麗になった謁見の間で、装飾もピカピカの玉座に座った王様はとても威厳があって、お側に控えてる公爵も大喜び。

 近衛の人たちもほっとしたように微笑んでいる。

 彼らや城の中にいた人たちはサグレットによって王都から外れた森の中に集団で転移させられていて、自力で戻ってきたそう。無事で良かったと王様に労われて恐縮していた。

 この綺麗になったお城ならあと三百年は持つだろうなんて話してる。

 壁と柱にこっそりと自己浄化機能つけちゃったけど、掃除の人の仕事とっちゃったかな。


 街の様子を見に行ったのは杉原さんとサツキさんとジェイクさん。三人は王に報告をした。


「城下の方に出た魔獣は、ギルドから数名の冒険者が派遣されたようです。住民は避難していたために被害はありませんが建物が一部壊されていました」

「ギルドとその冒険者たちにも褒賞を用意せねば。建物の修理の手配は終わっているのか確かめてくれ。シズル頼めるか」

「ええ、ちょっと行ってきますね」


 王様の言葉に上条さんが頷き、王都の中心にある冒険者ギルドへ転移した。

 

「俺たちも王都を見ておこう。何か手伝えるかもしれない」


 圭人くんの言葉に、私たちは頷いた。

 でもその前に、王様にひとつ確認しておきたいことがあったの。転移をしようと声をかけてくれた光里ちゃんに少し待ってとお願いして陛下の前に一歩進んだ。


「あの、ジュエル陛下。もし、魔王が出なくなる方法があるとしたら試してみてもいいですか?」

「それは、試してみる価値は充分にある。君たちの知恵を私たちに貸してくれるのか、ならばこちらからお願いしたい」


 王様との会話の後、光里ちゃんに転移をお願いして私たちは王都の入り口にいた。

 冒険者ギルドの前に直接転移しようとした光里ちゃんだったけど杉原さんに止められたの。人がたくさんいる街の中心に転移で現れるのはよくないって。こちらは七人もいるしね。

 上条さんはギルドマスターの部屋に直接飛べる権利があるから、そうしてるって教えてもらった。

 久々の王都、人々の表情を見てほっとする。


 ずっと考えていた。

 この世界の澱みが集まって魔王を作ってしまうなら、魔素だけを循環させて澱みは決してしまえばいいんじゃないかな。

 人の手で作るとなったらとても複雑で面倒なことになってしまうかもしれないけど、私なら。

 それをみんなに話してみたら手伝うって言ってくれて。

 だから私は作ることにした。


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