第223話
「さて、あまり時間もないことだし、僕からいくつか手助けをさせてもらうね。君もまだ彼らを残して死にたくないだろう?」
白いテーブルの上でわずかに浮かぶ水晶の中で、敵の魔法か味方の魔法かこの状態ではよくわからない光と炎が渦巻いている。
外の時間は動いているのに、なんだかこの場所だけは止まっているよう。エアーは、創造神はこの場所でずっと何を考えているのかしら。
「当たり前です。でも私は戻れるでしょう? 光里ちゃんの蘇生魔法があるんだから」
蘇生魔法を使える聖女の光里ちゃんさえ無事なら、私は死んでも大丈夫って生き返してもらえる思ってた。だから、あの時躊躇なく庇えたんだけど。
「蘇生魔法は時間制限あるし、一部記憶に欠損が起きたり、死んだ時に失ったパーツはそのままなんだよ。同時に完全回復魔法をかけないと失った部位の大きさによってはそのまままた死んでしまう」
私大丈夫かな、ここに来てから結構時間経ってるような気がするんだけど。
それに戦闘中にのんびりと蘇生魔法をかけられる?
かなりリスクの高いことをしてしまったのねと、今更ながらに思うけど、光里ちゃんを庇ったことに後悔はない。
「君が、ちゃんと生き返れるようにするよ。あと、これを」
白いテーブルの上、エアーの見ていた透明な水晶が音も立てずに形を変えた。
「これは、鍵? 邪竜から出てきた鍵に似ている気がする」
透明な美しい細工の鍵。邪竜の鍵はこんなに綺麗な気配は纏っていなかった。見ているだけで心が洗われるような面持ちになるのはどうしてかしら。
「そう、竜の鍵はすべてこのレプリカ。これが本物だよ。これを使うとスキルをすべて消すことができて、違うスキルをつけることができる。竜の鍵だと消すことしかできないんだ」
「これ、くれるんですか?」
「あげない。だからこれに触れて。君ならこれをどうすればいいのかわかるはずだよ。ほら、イメージして。作っていいよ」
作っていいよと言われた瞬間、頭の中に鍵の仕組みが入り込んだ。
これは神様の力、私の手に余りそうだけど魔王の力を削ぐために必要なものだわ。
「どうかな、作れそう?」
「はい」
手の中の鍵が消えて、エアーがにっこりと微笑んだ。元々の造作がこの世の中の美しいを集めたらこうなりましたという綺麗さだから、破壊力がとんでもないです。
それよりも私が気になったのは、感情、あったんですね。
「悪用しようと思ったらできるけど、その辺はお好きにどうぞ。そろそろ時間だ。次に会うときは、君の世界の食事を振る舞ってほしい」
「私ここに来れるんですか?」
「それは、君次第。会いたいと思えば会えるものだよ」
神様ってそんなに会いたいと思うものではないはずですが。
「だって、こうして来れたじゃないか」
ああ、私が願ったから、どうすればいいのかって考えたからここに。
「時間だ。またね、ありすちゃん。あとはよろしく」
よろしくと言われても、困ります。神様ちゃんとお仕事して。
思考は巡る。
でも何かに引っ張られる感覚の方が大きくて、私は。
ふわふわした感覚だったのに、体ごとぎゅんと強く引かれ、押さえつけられる。
やめて、それ以上強く引かれたらバラバラになっちゃう!
叫びたいのに叫べないもどかしさ。
頭痛い、体中痛い。
ポタポタと頬に冷たい雫が落ちる感触。
誰かに手を握られている。細い指、これは光里ちゃんの手だわ。
「ありす、ありす!」
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