第207話
私のスキル創造は、素材があれば作ろうと思ったら怖い兵器だって武器だって、それこそ核兵器も作れるんだろう。
でも、私はそれを作った後の結果を歴史で学んだ。だから、作りたくない。
そして今作ったのは原始的な投擲武器のスリング。ただし百発百中になるようにと想像しながら創造した。私の攻撃は確実に邪竜に当たり、硬い皮膚を貫いて体内で小さな爆発を起こしている。
「ありす、あれはなんだ!」
杉原さんの声、色々な音でよく聞こえなかったけど私が投げている弾のことを聞いてるんだよね。
「水晶を弾にしました!」
「なるほど、邪竜の力で水晶になったなら効くってことね。ありすちゃん、天才! 私も苦無の材料を水晶にしてみるわ」
サツキさんは水晶の苦無を作ろうとしたけれど、手の中で崩れてしまった。
「ダメだわ、私じゃ無理。こっちにしとくっ!」
「戦闘中じゃなければ作って渡せるんですけど、ねっ!」
サツキさんは苦無を投げ、私はスリングを動かす。
二人して邪竜に攻撃を加えるけど、剣や魔法の方が威力は大きい。けれど、私が放った弾の上、苦無の刺さった場所に夕彦くんと上条さんが的確に魔法を当ててくれて威力を数倍にしてくれる。
ギャオオオオ!
「ぐ、わあああっ!」
「圭人くん!」
圭人くんは邪竜の首の下を狙っているから、どうしても顔周りにいることになる。そして、邪竜が暴れて左手の爪が圭人くんの右肩を切り裂いた。
もっと近寄ってたら右腕ごともぎ取られていたかもしれない深い傷。
一番近くにいるのは杉原さんだった。すぐに回復ポーションをかけている。
破かれた装備は戻らないけど、皮膚の方はみるみるうちに元の綺麗な状態になった。
「大丈夫か?」
「ええ、もう痛みもありません、ありがとうございます!」
「圭人、血が足りなくなってると困るから一応ね」
圭人くんの全身に光里ちゃんの回復魔法がかけられて、白い光が包む。
後方でジェイクさんと組んで戦っていた光里ちゃんが、杉原さんと場所を交代する。杉原さんはジェイクさんのいる尾の方へ。
結界の盾は二十回は発動するんだけど、もう効果がなくなってしまったみたい。
「圭人くん! これをつけて!」
新しい結界の腕輪を圭人くんに向かって投げた。少し上に暴投しちゃったけどパシッとキャッチしてくれてすぐ装着したことを見届ける。
二つ装着しても同時に結界が発動しちゃうだけだから、効果がなくなったら新しいの着けるしかないのよね、もどかしい。
ギャ、オオ グォオオ!
邪竜が苦しみ出したのはサツキさんが苦無に塗った毒の影響かもしれない。仰け反り弱点を曝け出した瞬間、杉原さんが叫んだ。
「圭人! 今だ、いけ!」
「おう!」
地面を蹴って飛び上がり、聖剣を邪竜の喉元に叩き込むように切りつける。
研ぎ澄まされた剣は、邪竜の太い首を両断した。
ブシャッと溢れる血飛沫。ゴロリと落ちる、首。見開いたままの目を見てしまった。
そして、首から鍵がポロリとこぼれ落ちたのを見逃さなかった。
悲鳴をあげそうになったのを必死で口を押さえる。うう、怖いけど、我慢。
サツキさんはくるりと後ろを向いてしまった。
鍵は杉原さんが回収してくれた。
「やばい! 飛ばされる、みんな俺のそばにきてくれ!」
邪竜の頭と胴体が光って、私たちもその光に巻き込まれるように包まれる。
全員で上条さんを中心にお互いの体に触れるようにして逸れることだけは回避できたけど、どこかに転移させられた。
ここにいるのは勇者と賢者、神の落とし子。
そんな私たちを転移させることができるなんて、一体何者。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます