第205話 戦闘 邪竜1
エリックも小さな魔獣だから影響があるのかなって聞いたら、従魔になってることで私と繋がりができてるから水晶になる事はないって上条さんに教えてもらった。
私たちの上空、少し先を偵察しながら進んでくれてるんだけど、この先も水晶になったトカゲ、蝙蝠、虫などの小さな魔獣がいっぱいいるって。
『ありす、行き止まり。広ーいところに大きなヤツがいる』
「わかったわ、危険だから私たちと一緒に行こう。戻ってきてくれる?」
『うん、すごく、怖いのがいるよ』
洞窟を降り切った先の行き止まりにあったのは、広間というには広すぎる空間。
壁にはびっしりと発光する白い苔がくっついていて空間自体に暗さはないけれど、そこにいる存在のせいで空気までが澱んでいる気がする。
天井のずっと上はポッカリと穴が空いて、そこから空が見えて光も入っているのに。
「天井の穴から外に出て行くなんてこと、なかったんすかね」
チャキッと鍔鳴りの音。
圭人くんがストレージから聖剣を出して、構えた。
「竜っていうのは基本引きこもりなんだ。身体がでかいからな、外で行動するのも一苦労なんだろうさ。ヨアヒムは人化を若いうちに使えたから人間の土地でひょいひょい遊んでるが、あいつは例外だ」
杉原さんも圭人くんの隣に立ち、鞘に入ったままの剣を腰に携えていつでも抜けるように柄に手を掛ける。私たちもそれぞれの武器を持ち、目の前の巨大な真っ黒い竜に対峙した。
竜は、大きかった。私たちの住んでいた県には大きなお城があったんだけど、その本丸くらいはあるかな。
でもよく考えたら山脈のベースになる程だもん、かなりの大きさだってわかっていなきゃいけなかったよね。体の大きさは自由自在だというけれど、自分の棲家なら一番過ごしやすい大きさになっているだろう。それがこれだというなら、竜の力の大きさがとてつもないということだけはわかる。
竜の姿はボロボロだった。捻くれて長いツノは元々対になった立派なものだったと想像できるのに、一本が根本を残して折れている。
首には刃物でつけられた傷が何本もあるけれど、どれも浅い。
黒く硬い鱗はところどころ抜け落ちて、赤い血が固まってこびりついている。
竜は眠っているのかこうして私たちが近くまで来ているのに体を丸めて目を閉じたまま、こちらを見ようともしない。生きているのは呼吸をしているリズムで身体が動くのでわかる。
「変だな、傷が治り切っていない。俺が斬った刃傷もそのままだ」
「邪竜に変化すると治りが遅くなるとかあるんですか?」
「そんなことはないだろうけど、おかしいね」
「上条でもわからんか」
「倒した後にゆっくり調べよう、こいつが起きる前に行くよ」
杉原さんのつけた傷っていうことは半年以上前のことだよね。
それにしてはつい最近つけられたような新しい刀傷もある。もしかして、杉原さんたちの後から邪竜に戦いを挑んだ人たちもいたのだろうか。
でも、聖剣がないとトドメをさせないなら、その人たちは……。
ううん、今は他のことを考えないようにしよう。目の前の邪竜を倒さないと!
「初撃、行っていいですか?」
短杖を持った夕彦くんが前に進み、前衛の三人に声をかけた。
「危険だ、お前にヘイトが向くぞ」
「すぐ下がりますよ、圭人」
「いや、魔法で行った方がいいだろう。よし頼む、夕彦」
「はい。行きます」
夕彦くんが、氷の魔法を放つ。氷で作られたツルを鞭のようにしならせて敵に絡みつき、ぎゅっと締め付ける魔法。
でもそれは、邪竜の身体に届く前に、目に見えない膜のようなものに邪魔されて消えた。
「効かない、というか、弾かれましたね。ありす、結界が見えますか?」
「ううん、私に見えないからこれは結界じゃない。でも、剥がせるわ。剥がしたら起きるかもしれないからすぐ攻撃を入れてね!」
「了解! じゃあ私がありすちゃんを抱えて下がるわ」
「そうね、サツキさんの方がありすより早い」
こうしたらいいというのが頭に入ってくる。私の持ってる謎スキル。
「じゃあ行くよ!『解除!』」
バリバリとガラスの割れるような音がして、邪竜の体から透明な何かが飛び散った。
グォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
そして咆哮。
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