第204話

 洞窟の中は外観からは想像できないほど広く幅は十メートルくらいで高さはよくわからない。

 低くなっているところからはポタポタと水が落ちていたり、虹のようにカラフルな鍾乳石が下がっている。

 下が赤で上が青系のグラデーション。どうしてこんな色になるんだろう。

 ゴツゴツした岩壁に張り付いた苔、地面は硬くて石筍が沢山。

 鍾乳石と石筍が伸びきって何本もの石柱が作られている。

 鍾乳石って一センチ伸びるのに百年かかるって何かで読んだよ。ということはこの洞窟が作られてから一体何年経過しているんだろう。

 奥がよく見えないのだけど、緩やかに降っているみたい。


「うわ、色がすごいな」


 進みながら感嘆の声を上げる圭人くん、私と同じように驚いてる。杉原さんは知っているからか微笑んでるだけ。こうやって驚くの、わかってましたね。


「壁に含まれている鉱物の種類が多いんでしょうね、ここまで綺麗な色の鍾乳石は初めて見ました」


 洞窟内なのにライトの魔法を使う必要がないくらい、白くほんのり明るいから石柱の色もよく見える。

 時折足元を小さなトカゲが走っている、これも魔獣だけど敵意はないから倒す必要がないと杉原さんに言われた。


「どうして、明るいの?」

「苔が発光してるんだ。ほら、見てみろ」


 杉原さんの視線が壁の上の方に向いている。私からするとちょっと首が痛くなるような場所。

 そこにはベビーホワイトのホワホワとした綿毛のようなものがびっしりと張り付いていた。まるで岩にウサギが張り付いているような感じ。


「触ったらもふもふしそうね」

「あー。剥がしたらただの苔だからな」

「残念」


そんなことを話しながら進むのだけど、ここは弱い魔獣しかしないみたい。


「竜を守る強い敵とかいないのかな」

「竜を守れる奴なんていないだろ? つーか、竜の方が弱い生き物を守ってんだ。ただな、邪竜になってからは魔素が混乱してるんだろうな、あんなことになっちまう。ほら、あれを見ろ」


 ジェイクさんが、洞窟の先を指差した。

 そこにはガラスのように透明な、今にも動き出しそうな姿のトカゲ。


「ひっ、あ、あれは?」


 透明なトカゲに驚いたサツキさんが一歩後ずさった。あれは元々生きていたトカゲなのかなそう思って鑑定をした。


ケーブリザード・洞窟に棲む最大体長二十センチほどのトカゲ。繁殖率が高い。弱い麻痺毒を持っているため食用にはむかない。

この個体は竜の魔素を急激に大量に浴びたため水晶化している。魔素の通りが非常によく魔道具の材料にすると効率が良い。


「鑑定してみたら魔素が通りやすいから魔道具の材料になるって」

「じゃあストレージに……」


 圭人くんが小走りに水晶のトカゲの方へ近寄ったのだけど、急に止まってしまった。


「どうした、圭人」

「うわ、これはひどいな」


 杉原さんと上条さんも先に行ったのだけど、何があるのかな。夕彦くんと顔を見合わせてそちらに近寄った。


そこには、透明な魔獣がたくさんいた。

地面に散らばっているのも透明で、これはきっと踏まれて粉々になったカケラ。

通路の先までずっと続いているということは、邪竜のそばに行くまで埋め尽くされているのかな。


「私たちも近寄ったら水晶にされちゃうのかしら」


いつもシャキッと強い光里ちゃんが、怯えてる。


「いや、人間とトカゲじゃ体内の魔素の量が違うから大丈夫だ」

「そうそう、レベルも高いし大丈夫よ」


 ジェイクさんとサツキさんが一生懸命光里ちゃんを落ち着かせてくれている。

 上条さんが、少し考え込んでから手を前方に翳した。


「これを踏みつけるのは嫌だな。ありす、素材は後で分けるから今はしまっちゃおうね」

「了解です! みんなで一緒にやれば早いですね」


 名付けて掃除機走法。

 全てをストレージに収納しながら私たちは前に進んだ。

 トカゲ嫌だなぁという光里ちゃんには、ちょっぴりでいいからねと言っておいた。

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