第99話
王城から続く長い階段を降りる。
「エスカレーターはないんですか?」
「ないなぁ、ありす作ってくれ」
杉原さんに文句を言ってもしょうがないんですけど、ついつい言いたくなるような長いなだらかな階段。
展望台が崖の上にあるから少し嫌な予感はしていたのよね。それと高さの変わらない王城も高台にあるんじゃないかなって。
「下が見えるなら転移使ったのに、微妙なカーブで見えないなんてひどいわ」
光里ちゃんも文句を言っている。
確かに、王城の前から王都まで一瞬で行けたら便利だったのに。階段からは街を一望できるけど、さっき展望台から見たし。
体力が上がっているおかげで、移動するときに全く疲れないことは助かっている。
階段を降りて広い通りに出る。
右手に見える大きな門は北門。
そちらの方には行かないで右手の方向に進むと大きな建物が立ち並んでいる。
イプスの街もそうだったけど、中央に主要な建物が並ぶというのがこの国の基本の街づくりなのかな。
赤いレンガの建物で杉原さんが止まった。なんだか綺麗なホテルのような外観。少しメルヘンチックで可愛い。
「ここが商業ギルド。そうだな、魔道具、職人、魔法を使わないちょっとした便利道具、新しいレシピなどを登録したりそれを使う手続きをする役所みたいなものだ」
ギルドの中に入りながら杉原さんが説明してくれる。中は広いホール。
銀行のロビーのように区切られたカウンターが十くらいあって、そこに一人ずつ職員らしき人がいる。
一つのカウンターに数人ずつ並んでいる。
ホールにも窓口にも人がわらわらといっぱい。老若男女入り混じり、いい機会だから服をじっくり見てみよう。
すれ違う人の服を見ながら、杉原さんに着いて奥の方へ進んでいく。
「そういえば、魔道具って作ったら絶対に登録しないといけないんですか?」
もういくつか作って使っているから、登録しないといけないなら困るわ。
奥のカウンターは前に三人並んでいる。
何かの道具を出しているのが見えたから、ここが登録をするところなのね。
「いや、それを売りたかったら登録をしないといけないが、個人的に使う分には別に構わん。ありすが作ったものの構造がわかる人間がそんなにいるとは思えないしな」
炭酸が出る水筒は、個人で楽しむだけにしよう。必要な人にはプレゼントすることにして。
目的の結界を作る魔道具と、カムロ村のセロさんのために作った送風機は登録して、なんて色々考えてたらいつの間にか順番が来たらしくカウンターの前に立たされていた。
「ありす、魔道具を出すぞ」
ストレージは珍しいスキルなので、あらかじめ圭人くんのリュックに入れておいた結界の魔道具を出してもらう。
「これですね、お預かりします。鑑定の間こちらの書類に記入をお願いします。お兄さんの代筆でも大丈夫ですからね」
「お兄さん?」
杉原さんのことかな、多分。
書類を見ると作成者、機能、使用魔法、材料などの記入欄。
わからないところは書かなければいいそうで、それでもなんとか埋めた。
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