第96話
テーブルの上に置かれた青い宝石に私たち四人は興味津々。
「そう、俺たちの言うスターサファイアがこの世界での星鉱石だ。ありす、ちょっと持って鑑定してみろ」
ポンと手に乗せられてその見た目と違う軽さに驚く。青が綺麗すぎて、まるでゼリーみたいなのに柔らかさはない。
石だからか少しだけひんやり。
「え、はい」
星鉱石・酸化アルミニウム・酸化クロムから成る結晶。コランダム。青いものはサファイアと呼ばれる。
「普通にサファイアだわ」
鑑定結果をみんなに伝える。
確か、この酸化クロムの割合で色が変化してサファイアかルビーになるのよね。
「そうなんだよ。これはまずボーキサイトっていう石を見つけて、上条が魔法でぎゅぎゅっと圧縮したり磨いたりと加工したらできたやつ。あいつは売り物になる宝石を作ろうとしたんだが、どこの商店でも買取拒否されてな。いくら払えばいいのかわからないと言われて」
上条さん、どこまで万能なの。
そんなことを思いながら、私は石を杉原さんの前に戻した。
青い石は五百円玉程度の大きさ。
丸い楕円形に磨かれていて、中央から走る星の紋様がとてもはっきりとしていて綺麗。
ここが地球だったら天然物だからきっと高価だわ。作り方は限りなく人口っぽいところがアレなんだけど。
「で、それを貰って聖剣の材料にしたのは俺。なんとなく使ったらいいものができそうって思って他の材料と一緒に加工したら、それまでより強く、付与のついた剣ができた」
「その付与とはなんだったんですか?」
邪な魔素に染まった魔物を倒すことができる聖剣を、圭人くんもそのうち作ることになるんだろう。
「邪気切断。この効果が無い剣は魔王や邪神を倒すことができない。まあ他の材料でも付与はできるんだが、俺の剣と相性が良かったのはこれだ」
「聖剣は今どこに?」
光里ちゃんが尋ねる。
聖剣、見てみたいな。
「キリ殿の聖剣は、魔王を倒すと同時に折れたということになっている」
「ということは、違うんですか?」
含みを持たせた陛下の言葉に夕彦くんがいち早く反応する。
杉原さんがニヤリと笑った。
「聖剣があると知られたら国同士や神殿でうちに納めろと取り合いになるからな。各国に一本づつ送ってやろうかとも考えたが、それだと本物争いが面倒臭そうだし」
「だから折れたってことにしたんですね」
「それが一番、後腐れなかったんだ。本当なら旅の途中で原料を見つけて加工って考えたんだがな。ありすなら、創れるんじゃないか? 星鉱石」
えっ、私?
一斉に見られてびっくり。
「うーん、本物を見たし、イメージが固まったからできると思いますよ」
必要な材料もちゃんと浮かぶし、これはできそう。
私がそんなことを考えていたら、コツコツとドアをノックする音。
部屋の主である陛下が返答する前に、かちゃりと音を立てて開いた。
「それは後にしよう、叔父上がいらした」
陛下が自分の隣の椅子に、入室してきた人物を促した。
この執務室に入ってきたのは、先ほど謁見の間で会ったかっこいいおじいさん。
「改めましてお見知り置きを、落とし子の皆さま。私はオランジェ・アードラー。公爵位を賜っております」
「私の大叔父にあたるお方でな。お目付役のようなものだ。叔父上、グルブはどうでした」
「ダメだな。あやつは西に取り込まれている。わしの部下によるとやつの領地の作物半分が西に流れてるそうじゃ」
その言葉を聞いて眉を顰める杉原さん。
「王都の中にもかなりの人数が入り込んでいると思った方がいい。用事がすんだらさっさと出発だな」
王都に長居をするつもりはないみたい。ここは杉原さんの顔を知ってる人がとても多いみたいだし。
「魔道具職人の登録と道具の販売承認ですね。ファルとシオンも気になります。宿はどこなのでしょう?」
夕彦くんがこれからやることの確認。
「こちらも西の動きを見て、不穏なことがあればキリ殿に連絡をしよう」
「わしは引き続きグルブ一派の監視じゃな。あやつは最近やたらと金回りが良くなっているらしいぞ。はてさて、何を企んでいるやら」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます