第94話
扉から一直線に玉座まで赤い絨毯が敷かれた、縦に長い広いホールにすら思える、セントリオ国の謁見の場。
私たち四人と杉原さんは横に並んで王様の前で跪いて頭を下げている。一緒にここまで来たイプスの街のギルドマスター、トーマス・パーカーさんは一歩下がったところで同じ格好をしている。
周囲には、数えてみたら十四人。
華美だけど気品がある人、そうでない人。体型や年齢も様々なそれでもひと目で貴族だとわかる人たちが、私たちを品定めしているように見ていた。
この国の重鎮が集まっているのだろうなという予想はついた。
私たちがこの国に着いて、展望台に飛んでからここに来るまでの間に急遽集められたのかしら?
新しい勇者のお披露目なのかな、これは。
王様から立ち上がるように言われ、杉原さんからも視線の合図があったので私たちはその通りにした。
「次代の勇者ケイト、聖女ヒカリ、賢者ユーヒコ、錬金術師アリス。王都までの道中はどうであった? キリ殿、この者たちの資質は計れたか?」
王様の声は、ギルドで聞いた時よりずっと重く低く、威厳を感じた。あの時よりもゆっくり話しているからかもしれない。
「資質は充分。彼らは期待に応えてくれるでしょう。性格もいい、彼らの団結力も素晴らしいものがあります」
杉原さんの声も違う!
いつもの飄々とした雰囲気じゃなくて、もっとこう、なんだろう?
大人って感じ。
「それは頼もしいな。そうだ、勇者ケイトよ、剣作成のスキルはあるな。どうだ、聖剣を作って見せてもらえないだろうか」
「それは無茶というものです、ジュエル陛下! 聖剣には星鉱石が必要なはずですぞ!」
王に近い位置にいる、まともそうな貴族の人が声を上げる。
あ、言ってることも当たり前のことだけだわ。なんとなくホッとできる優しげな雰囲気のおじいさん。
仕立ての良さそうな服を着こなしている姿を見ると、かなり高位の方なんだろうというのが想像できる。
「王の頼みを聞けないはずがないだろう。早く作らせねば!」
派手な衣装の扉に近い方にいる人。年齢は五十歳くらいかな、ちょっとというか、だいぶ太めで、顎髭を蓄えた脂ギッシュなおじさん。ゴテゴテと飾りばっかり多い服で、そのわりに色やデザインに統一性がないからまるでコメディ映画で見た偽貴族のようなテイストになっている。
二人の発言を皮切りに、二つの陣営に分かれて口論しあっているように見えるのはなんだろう?
まだ圭人くんは一言も話していないのに。
カツン。
王様が手にした錫杖で床を突いた。
それだけで、騒がしくなったこの場が一瞬でシーンとなる。
「オランジェ、グルブ、周りを静かにさせろ。そしてお前たちも黙れ。私はケイトに話しかけたのだ」
「は、はっ」
グルブと呼ばれた派手な貴族が、ハンカチで汗を拭きながら返事をした。
オランジェと呼ばれたおじいさんの方は黙ったまま、右手をスッとお腹に当てて王に向かって深くお辞儀をした。
そして自分に賛同した貴族たちを見て、にっこりと微笑んだ。それだけで、貴族たちはピシッと背筋がまっすぐになって姿勢を正す。
このおじいさん、何者なんだろう、気になる!
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