043 ジュピター皇国⑪

※過激な表現、残酷な描写が含まれていますので閲覧する際は、注意をお願い致します。




 「何がどうなっているんだ!?」と慌てふためくポセイダル兵。

 だが、その場から離れる事が出来ず、ただただ身構えるだけだった。

 改めて動き始めた巨人達。

 その行動は進化前よりも格段に動きが向上し、そして、より残虐に変貌を遂げていた。


「グガァアアア!!」

「!?」


 耳をつんざくような叫び声。

 その音は鼓膜を突き破り、脳に直接影響を与えた。

 自動的に聞いた者の精神を不安や恐怖に陥れる。

 その場でしゃがみこむ者。

 その場で震えだす者。

 その場で気を失う者。

 そして、進化を遂げた巨人の近くにいたポセイダル兵達は、蟻のように潰され、何も出来ずに殺され、無残にも犠牲になっていった。


「なっ!?みんなー!!!」


 それは一瞬の出来事だった。

 ポセイドン皇が矢面に立ち動けずにいた間、危険を顧みず仲間を助けに出たと言うのに、その使命を果たす事が出来なかったのだ。

 目の前で仲間が殺されて行く光景。

 仲間だった者が、バラバラな物に成り果てる瞬間。

 自身の力の無さ、そして、助ける事が出来なかった不甲斐無さに憤慨する。


「メティス殿!これはどういう事ですか!?」

「...」


 ポセイドン皇が、事前に聞いていた話と結果が違う事をメティスに言い寄る。

 だが、メティスの表情を見て咄嗟に理解してしまう。

 これは想定外の事態が起きているのだと。


「くっ!!みんな巨人達を止める為に力を貸してくれ!!」


 ポセイドン皇は感情を押し殺し、瞬時に思考を切り替えた。

 時間は待ってくれないのだと。

 一秒でも時間を無駄にしない為にも、自分がやるべき事は巨人を倒す事。

 止めるべき事は目の前の巨人だと言う事を。


「我らがポセイドン皇に続けー!!!」


 すると、まだ戦う事の出来るポセイダル兵全員が即座に動き出し、巨人達の下へと向かった。

 この兵士達全員が、目の前の巨人との圧倒的力量差を感じている筈なのにだ。

 きっと、無事では済まない。

 五体満足で生き残る事も難しい。

 最悪は...

 死。

 そうなる事を解っているのにだ。

 何もしないまま、目の前の巨人を放置する事は出来無いのだと。

 何故なら、亜人達は相手と戦う事で、相手を倒す事で、自分達の生存権を勝ち取って来たのだから。


「ウオオオ!!!」


 奮い立つ闘志。

 その溢れ出る熱気は凄まじいものだった。

 こうなってしまえば巨人達を人として助ける事は不可能なのだと。

 巨人のまま殺すしか無いのだと、皆が覚悟を決めた。

 そうして、各人が散らばり巨人達に対応して行く。

 全員が全員、自分が出せる全力で巨人へと立ち向かって行った。


「三叉槍よ!その力を顕現せよ!!」


 ポセイドン皇は魔纏武闘気を纏い、三叉槍に秘められた魔法を駆使し、全力で攻撃をして行く。

 辛そうな表情が目立つ。

 それは、怒りと悲しみが入り混じった複雑な心境を表していた。

 この感情は、何も犠牲になった仲間だけに向けられたものでは無かった。

 巨人を人に戻す事が出来ず、止むを得ず殺す事も含めての感情。

 だが、自身が皇に就いた時に、既に覚悟をした事だ。

 犠牲無くして、勝利は無いのだと。

 そして、その犠牲は相手も含まれていた。


「ルカ!俺達は向こうから挟み込むぞ!」

「おう!マーク!久しぶりの連携だ!!ついて来いよ!」

「はっ!何を言う!!お前がだろ!」


 幼馴染の気が知れた仲だからこそ取れる連携だ。

 軽口を言いながら鼓舞して行く。

 そうして、マークとルカは二人で協力をし、途切れない連携攻撃を繰り出して行った。

 一人では立ち向かえない相手だとしても、助け合えば倒せるのだと、革命戦で経た経験を存分に活かしていた。


「私達も負けていられません!五線譜が奏でるプロローグ!」


 ポセイドン皇達に続くように、五冥将も独自に動き出した。

 ヴァイアードは、持てる基本属性魔法を最大限に使用し、攻撃をして行く。

 音に乗せた属性魔法。

 聴覚も、視覚も、そのどちらの感覚も堪能する事が出来る芸術のような美しい攻撃。

 戦場を音で支配した。


「ガアッ!!俺ノ力(チカラ)!!見セツケル!!」


 オルグは、力任せの全力攻撃。

 ただ、それだけの攻撃だと言うのに、相手との身長差をものともしない膂力。

 巨人だろうが、何だろうが、力では負けないと意気込んだ。

 戦場を力で支配した。


「影に紛れた我が軍団!!光すら届かない暗黒へと導こうぞ!!」


 オクタウィアヌスは、自身の影から闇の軍団を召喚する。

 その現れた骨人族の軍勢の指揮を執り、自らが先頭に立ち攻撃をして行く。

 壊されても、壊されても、立ち上がる影の軍団。

 そして、相手を影の世界へと飲み込んで行った。

 戦場を影で支配した。


「ルシフェル様への愛。届いていますか?」


 エキドナは、自身の周囲に出来る限りの魔念体を作り出した。

 その数、実に100。

 戦場に居る巨人の数と同等の魔念体をたった一体の巨人にぶつけ、遠隔操作による攻撃、そして、自身が繰り出す魔法を合わせて止まらない攻撃をして行く。

 それは相手を弄るように、相手を愛するように、全てを包み込んで行った。

 戦場を愛で支配した。


「まさかこのように戦う事になるとは...プルート様。還らぬ魂にどうか安らぎを」


 デュナメスは、巨人の魂を覗いては、もう既に壊れている事を悟った。

 魂の選定者であるプルートでも修復の出来無い魂だ。

 あの状態では、二度と回帰する事の出来無い魂なのだと。

 それならば、魂をもうこれ以上磨耗させる訳には行かない。

 デュナメスの手によって安らかに消滅させるしか無いのだと。

 そして、瞬間移動を駆使しながら巨人ごと斬り裂いて行った。

 戦場を時で支配した。


「ムオオオーーー!!!!」


 ヘカトンケイルも自身の身体の特徴(怪力+100腕)を活かして、オリュンポス平原特有の巨大な岩を持ち上げ投岩をして行く。

 圧倒的物量による攻撃。

 戦場を数で支配した。


 それぞれが行動を開始した中で“僕とニンフは?”どうしたのかと言うと。

 メティスに個別で頼み事をされたので、皆とは別行動をしていた。

 その頼み事と言うのが、ゼウスとヘカトンケイルの二人を、この戦場に連れて来て欲しいとの事だった。

 一分一秒も時間が惜しい為、飛行でゼウスの場所まで向かっているところだ。


「...あの場にゼウスを呼んで、一体どうするのかしら?」


 ニンフが僕の懐に潜り込んだ状態で、胸の部分から顔を出して疑問を浮かべていた。

 だが、僕にもその理由は解らないものだ。


「う~ん、ゼウスはヘッポコなのに何でだろう??」


 ニンフは指でこめかみを押さえながら、口をつむぎ解り易く悩んでいた。

 確かにゼウスは魂位が低く、戦闘能力も低い。

 正直、今の能力では足手纏いでしか無い。

 この状況で役に立つとは思えないのだ。

 だが、これが史実に沿う話ならば、ギリシャ神話をベースにした話ならば、ゼウスが必要な事も解る。


「ニンフ!急ぐから口を閉じてね!」


 僕がそう言うと、ニンフは慌てて口をバッテンに押さえた。

 ビックリした様子で胸元でゴソゴソ動くのがくすぐったい。

 飛行で出せる全速力でゼウスの下へと向かった。




 一方、巨人達と対峙している皆。

 あまりの巨人の多さに、正直、為す術が無い状態だった。

 戦う事は出来る。

 だが、倒す事が出来無い。

 各々の攻撃がどうしても効かない巨人が居るのだ。

 全力の攻撃も、全力の魔法も、その身体に弾かれてしまう。

 皆が「何故、攻撃が効かない?」と疑問を浮かべる。

 そこでようやく、一人の人物が、ある事に気が付いた。


「これは...もしかしたら“悪魔”なのかしら?」


 エキドナが、皆に聞こえるようにそう答えた。

 ミズガルズと違う世界には悪魔と呼ばれる種族がおり、その悪魔だけの世界があるのだと。

 これはラグナロクRagnarφkの設定の根幹にあるもので、ユグドラシル最大の敵勢力だ。

 どうやら、目の前にいる巨人達は、その悪魔の特徴に酷似しているみたいだと。

 エキドナは魔法研究の一環として、魔法のルーツを探る為に、世界誕生、創生についての研究を行っていた。

 その時の研究で、古代文明の遺産から悪魔についての文献(石碑)を目撃していた。

 文献(石碑)には文字と呼ばれる物が書かれていなかったが、代わりに何かを表した絵が描かれていた。

 その絵と言うのが、“悪魔は攻撃が一切効かず、魔法も効かない”と言うような雰囲気で描かれていたのだ。

 情報を検証する為にも、他の文献(石碑)を探してみたのだが、それ以外の文献(石碑)は形すら残っていなかった。

 エキドナは検証する術も無く、その情報しか得る事が出来なかったのだが。


「もしも、文献(石碑)の通りなら、私達には為す術がありませんわ...」


 エキドナがその事を思い出したように巨人と悪魔を重ねる。

 このままでは、ミズガルズ世界そのものが壊れてしまうのだと。

 そうしてエキドナが悲観に浸っている時。

 皆と離れた場所で、独り孤軍奮闘する人物が居た。


「陸の上ならば、大地ごと砕いてやる!!全てを飲み込め!母なる大地よ!!」


 その人物とは、ただ一人戦意を漲らせているポセイドン皇。

 この状況でも諦める事は無いのだと。

 死んでいった仲間の為にも、傷付いた仲間の為にも、戦う事を決して諦めない。

 それが、自らの手で父親を倒し、皇としての意思を継いだ者の役目なのだと。

 三叉槍を天高く掲げ、勢い良く大地に突き刺した。

 すると、突き刺した先から、ポセイドン皇が身体を向けている方向へと大規模な地割れを引き起こした。

 複数の巨人達を地割れに巻き込み、その割れた大地に巨人の身体を挟んで行く。

 今までの攻撃(魔法)では、巨人にダメージを与える事が出来なかった。

 だが、ポセイドン皇の三叉槍を使用した魔法攻撃は、巨人達に十分なダメージを与えたのだ。

 それを見たエキドナが何かに気付く。


「どういう事でしょうか...攻撃も魔法も効かない筈?...いや、どうやら違うみたいですね。これは...基本属性魔法が効かないと言う事でしょうか?」


 エキドナが何かを察し、その答えに辿り着いた。

 今まで皆が繰り出した魔法は、全て基本属性の火、水、土、風、白、黒の6種のみ。

 そして、先程ポセイドン皇が繰り出した魔法は、上級属性の大地魔法。


「成る程。ですが、上級属性となるとハデス帝国で使用出来るのはプルート様のみ。ここはポセイドン皇を援護するしかありませんわね」


 エキドナが知り得た情報を魔念体を利用し、他のメンバーへと伝達して行く。


「さあ!お行きなさい!」




 ようやくゼウスの下に辿り着いた僕とニンフ。

 目の前の光景にとても驚いた。


「町の中は...悲惨ね...」


 ニンフが町中至るところまで破壊された、悲惨な光景を見て嘆く。

 その中でゼウス達は、必死に生存者を町の広場へと集めて救護活動を行なっていた。


「怪我の酷い者から回復させて!怪我の程度が軽い者はポーションを渡すように!」


 どうやら、ジェレミーは今まで一度も休まずに救護活動をしていたみたいだ。

 しかも、的確な指示を周りに出しながら。


「はあっ...はあっ」


 ゼウスは町の至るところから怪我人をその身一つで運んでいた。

 汗を掻きながらも、泥だらけになりながらも、周りにそんな事をやっても無駄だと思われてもだ。

 そうして広場へと運んだ矢先、死に至る住民が何人も居た。

 だが、それでも一人残らず、必死に救い出さそうと力の限り運んでいた。


「くそっ!...まだだ。まだ傷付いて動けない皇国民がいるんだ!」


 何の能力も持たざるゼウス。

 自分に出来る事は、我武者羅に身体を張る事だけなのだと。

 本当に、誰かを助ける為なら他人の目などを気にしてはならないのだと。

 そんな一生懸命なゼウスが、現実の自分と重なった。

 他人が見たら嘲笑うかも知れない。

 「そんな偽善をして何になる?」と。

 他人が見たら当然の事なのかも知れない。

 「困っているんだから助けるのは当たり前だろ!」と。

 各々が自分の感覚で発言し、各々が自分の常識で語るのだ。

 この常識感覚というものが、他人を助ける事があれば、他人を傷付ける事もあるのだと、僕は身を持って知っている。

 何故なら、その常識感覚と言うものは、己の主観によるものなのだから。

 押し付けてはならない。

 強要してはならない。

 そして、侵略をしてはならない。

 出来るなら...

 出来るならばだ。

 ただただ、相手の事を理解して欲しい。

 僕が胸の中に秘めていた思いが溢れていた。


「まだ、救護出来ていない者はいるか!私がその場に行く!」


 ゼウスは目的を知らず、この世に生を受け、ただただ毎日を過ごして来た今。

 皇族としての芽生え、そして、アマルティアから教育を受けての己の矜持。

 初めて自分自身に、使命感や責任感と言ったものを感じ取った瞬間だった。


「...」


 二人とも額から大粒の汗が流れており、その疲労が表情に表れていた。

 その様子からも、此処までの間ずっと過酷な状況だった事が伺える。

 必死に作業をしている二人を見ると、どうしても声が掛け辛い。

 だが、こちらも世界の命運が決まる大事な局面。

 一度、深呼吸をし、覚悟を決めたところでゼウスへと話し掛けた。


「ゼウス!必死なところ申し訳ない!だげど、何も言わずに一緒に来て欲しい!勿論、キュクロプスも一緒に!」


 町の救護活動をしているジェレミー(主要メンバー)を一人にしてしまう事は本当に申し訳無い事だ。

 だが、ジェレミーにはそのまま救護活動を優先して貰う為にも、その場に残って貰うしか無かった。

 此処からは時間が一分一秒でも惜しい。

 ゼウスが「...私が、ですか?」と疑問を浮かべていたが、この場で説明をしている時間が無かった。

 時間短縮の為にも、ゼウスを担いで飛行移動しながら説明をして行く。

 キュクロプスは僕達を追って後ろから走って付いて来ていた。

 そして、ゼウスにはオリュンポス平原の現状と、メティスに連れて来るように頼まれた事を伝えた。


「...まさか、そんな状況になっているとは思いませんでした。だけど、私とキュクロプスを呼んだと言う事は、雷霆による魔法攻撃かも知れません」


 ゼウスは、雷霆について話始めた。

 メティスから頂いた魔法具であり、魔科学を応用した試作武器なのだと。

 どうやら、魔力を溜めれば溜める程、その範囲や効果が上昇する魔法具らしい。

 亜陣共和国ポセイドンを防衛する際に使用したが、その威力は天変地異を起こしたと言う。


「もしも...雷霆に、私、ポセイドンの方々、五冥将の方々、そしてルシフェル様、メティス様と魔力を溜めたならば、その魔法攻撃がどれ位の威力になるか想像が出来ません」


 ゼウスは、「きっと、平原にいる全ての生物は跡形も無く消し飛ぶでしょう...」と。

 その予想からも、相手の生命を奪う事の苦しさを感じ取った。

 もともと“人”だった巨人を、“皇国民”だった人を、跡形も無く殺す事を悟って、そんな悲しそうな表情を見せた。

 そして、僕達がメティスの下に辿り着くと、エキドナの情報を共有していた皆が、ポセイドン皇をサポートする為に一箇所に集まっていた。


「お待ちしておりました。ここからは全員で協力をして最後の攻撃へと移りたいと思います」


 どうやら、巨人達の猛攻は、まだ誰一人として止まっていない様子。

 ポセイドン皇のおかげで、数体の巨人に致命傷を与える事は出来た。

 皆の頑張りで、何体かの巨人を倒す事は出来た。

 だが、その圧倒的な人数の為、僕達の戦況は悪くなる一方。

 しかも、巨人を地割れに飲み込んだとしても、地中から地上へと無理矢理這い登って戻って来たそうだ。

 体力的にも、精神的にも、限界を迎える寸前だった。


「では、ポセイドン皇は三叉槍の力を借りて、この平原全体を飲み込む渦を巻き起こして下さい。そして、残りの私達はゼウスの持つ雷霆に魔力を込めます」


 雷撃は水に伝達するものだ。

 その為、渦を起こして巨人達の身動きを止めてから雷霆で一気に仕留める算段。


「三叉槍よ!!大いなる海の力!!解放せよ!!怒りの奔流!!」


 ポセイドン皇が三叉槍を振るうと、何も無い平原にたちまち巨大な津波が多方向から襲い掛かる。

 水の無い平原を水で埋めて行く。

 そして、巨人達全員を飲み込みながら平原の中心に巨大な渦を造り出した。

 僕達はその間に、巨人達が身動き取れない間に、ゼウスの持つ雷霆へと魔力を集める。

 マーク、ルカ、ヴァイアード、オルグ、オクタウィアヌス、エキドナ、デュナメス、ゼウス、ニンフ、メティス、キュクロプス、ヘカトンケイル、そして僕。

 ミズガルズ世界で考えられる最大の戦力(魔力)が此処に集結をしているのだ。

 全員の魔力が枯渇するギリギリまで雷霆へと注ぎ込む。

 すると、雷霆が悲鳴を上げるように亀裂が入って行く。

 雷霆が壊れるのが先か?

 巨人を倒すのが先か?

 亀裂の大きさからも、どうなるのか誰も解らない。

 それでも、空には積乱雲がオリュンポス平原全域を覆って行き、太陽の光が徐々に遮られて暗くなって行った。

 音を立てるように壊れて行く雷霆。

 だが、その機能はまだ維持されている。

 そして、雷霆に最大の魔力が溜まった事を確認すると。


「皆を助ける事が出来なくてごめん...これで、どうか安らかに眠ってくれ!」


 ゼウスが目の前に広がる巨人達を助ける事が出来ずに涙を流す。

 助ける為には殺すしかないのだと。

 そう覚悟を決めて、魔法具を解き放つ。


「雷霆ケラウノス!!」


 眩い光と共に、雷霆から魔法が放たれた。

 上空に広がった積乱雲が反応し、連鎖するように帯電と放電を繰り返す。

 バチバチと弾ける魔力と電気。

 そして、その二つが合わさった時。

 雷の威力を格段に跳ね上げた。

 平原一帯に何度も、何度も、何度も豪雷が落ちて行く。

 それはオリュンポス平原の地形そのものを、何者もが生き残る事が出来無い荒野へと変える威力を持って、巨人を一体残らず全てを消し飛ばした。


「...魂も...塵も残さない...雷霆...ありがとう」


 雷霆は試作品であった為に、膨大な魔力量に耐えられず極大の魔法を放つと壊れてしまった。

 そして、皆がその場で魔力枯渇寸前で倒れて行く。

 精神的にも、身体的にも、限界だった。

 僕も同じように魔力枯渇状態で身体が重く、とてもだるい。

 思考が重く、脳が正常に働いていない状態だ。


「皆様ありがとうございました。まだ、終わりではありませんのでこれで回復しましょう」


 すると、メティスが異空間からマナポーションを複数取り出し、皆に分け与えた。

 自身が使用出来る回復魔法も駆使して、皆を完全に回復させて行った。

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