第26話 百合大好きの変態


 俺たちはみんなに睨まれながら昼飯を食べている。


「はい、あーん♡」

「あーん♡」


 パクっ。


 そして目の前の光景を見て俺は尊いと思っています。

 さて、目の前でどんなこと起きているでしょうか。


 答えは百合です。

 

 この世で数少ない尊い百合だ。

 

 実際百合は俺も尊いと思う。

 てか好き。

 大好き。

 見てて目の保養にしかならない。

 

「かっわい〜♡」

「えへへ」


 目の前で悠亜と未羽があーんをしあっている。

 その光景はとても尊く見てるだけで生きててよかったと思えるレベルだ。


「空にもあーんしてあげようか?」


 悠亜がそう聞いてきた。

 え、まじで?

 俺も入れてくれるの?

 その天国のような空間に俺も入れてくれるの?

 そう考える俺に横から蓮に小突かれた。


「おい、お前あの天国な空間を壊す気か?」


 あ、そうか。

 あれは美少女同士がやってるから尊いのであって、そこにやろうが入ってしまっては尊い天国が壊れてしまう……。

 俺はそんなことも気づいてないほど見惚れてたのか。


「俺はいいよ」


 しっかりと考えた結果、尊いを壊してしまうのは良くないと判断して俺は断った。


 俺偉い。

 ちゃんと考えた俺偉い。

 そしてさんきゅ。


 蓮のおかげで俺は踏みとどまれたよ。

 俺と蓮は親指を上げて、俺には踏み止まったこと、蓮には冷静に判断したことでお互い賞賛し合った。

 

 いい友を持ったぜ。


 「そこの二人何馬鹿なこと言ってんの」


 俺たちが互いを賞賛し合っているとき横から海斗に言われた。


「知ってるか? 百合は尊いのだよ」

「そうだ! そうだ!」


 そう言うとなんか哀れみの眼差しを向けられた。


「馬鹿なの? 馬鹿だよね? 二人とも」

「いいえ、馬鹿なのは蓮だけです」

「おいてめ、自分だけ逃げるな!」


 海斗の哀れみの目はさらに深みを増した。


「勉強と実際のバカはまた別種さ」

「要するに俺もバカだと?」

「その通り」


 確かにその通りかもしれない。

 

「俺は、俺たちはバカなのかもしれない」


 俺の言葉に蓮はぽかんとしている。

 それ認めちゃうのかよとでも言いたげな顔だ。

 しかし俺は話を続ける。


「でもな! 俺たちはそのバカに誇りを持ってるんだ!」


 俺の言葉に熱がこもる。


「百合が尊いと思うことは恥ずべきことじゃない。むしろ誇るべきことだ! だって何かを尊いと思うことは悪いことではないのだから!」


 終えは言い切った。

 とことん言い切った。

 

 周りは静かになっており、みんな俺のことを見ている。


 そして俺は気づいたのだ。

 ここは食堂だったことに……。


「あーあ。空やっちゃったね」


 海斗は呆れ顔で言ってきた。


「今気づいた……」

「だから後先考えないバカは」


 ほんとその通りです。

 弁解する余地すらありません。

 

「空、何言ってんの? 少し引くんだけど……」

「ほんとね」


 その後、俺は二人の嫁候補からも引かれてさらには蓮にも……。


「ごめん、俺にはみんなの前でそこまで言うほどじゃないわ」


 とお前にはついてけない的に言われた。

 裏切りだろ……。

 

 え、俺もここまで言うつもりはなかったんですけど。

 どうしよこれ……。


 次の日から学校中で『百合大好きの変態』と呼ばれるようになりました。

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